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「MIDSUMMER CAROL ガマ王子 vs ザリガニ魔人」
作 後藤ひろひと
演出 G2
出演 吉田鋼太郎/志村玲那/笠原浩夫/新妻聖子
山内圭哉/中山祐一朗/戸次重幸/月船さらら
楠見薫/春風亭昇太/岡田浩暉
観劇日 2008年3月22日(土曜日) 午後6時開演
劇場 パルコ劇場 J列21番
料金 8500円
上演時間 2時間40分(10分間の休憩あり)
当初出演が予定されていた内田朝陽が腰痛で降板し、笠原浩夫が代演していた。
この出演者陣だと、ロビーはお花でいっぱいである。チケットを切る際に「ロビーでの写真撮影はご遠慮ください」と注意を受けた。
物販のコーナーは混雑していたので素通りしてしまい、何がいくらで売られていたのかチェックしそびれてしまった。
ネタバレありの感想は以下に。
(未見の方は絶対に読まない方がいいと思います。)
初演と同じ役で出演するのは山内圭哉のみということはどこかで読んでいて、さて、どういう配役になっているのだろうと楽しみにしていたのだけれど、春風亭昇太がお医者さんの役だろうというところ以外は予想通りだった。
その春風亭昇太演じる年配の男性が、戸次重幸演じる青年が「両親がデカイ家を建てて隠居してしまい、自分一人で残っている」という家に訪ねて来て、そこにあった仏壇に手を合わせ、供えられていた絵本を手にとって物語始めるシーンで幕が開く。
その仏壇は、青年が目を離したスキに母がこっそりと置いていったものらしい。
私にしては、初演の記憶がかなり鮮明に残っていた方だと思う。
それでも、お芝居が始まって最初の頃、「おまえが私の名前を知っているというだけで腹が立つ」が口癖の大貫さんというイヤ〜な感じの「じいさん」が好き放題に振る舞うのだということは覚えていたものの、こんなにもそれがイヤ〜な感じだったとまでは覚えておらず、「こんなにイヤ〜な感じなのだったら、チケットを取るんじゃなかった」と思ってしまったくらいだった。
入院患者たちは、この「大貫さん」を遠巻きにしているのだけれど、中で春風亭昇太演じる「ホリゴメさん」だけは、数々のアホらしいいたずらを仕掛けるのも初演通り(当たり前)である。
そんなイタズラのひとつで「じじい」と大書きされた紙を大貫さんの背中に貼り、それを読んだ志村玲那演じるパコちゃんが、大胆果敢にも「じじい」と呼ぶ。これが二人の出会いである。
月船さらら演じる「まさみちゃん」という看護婦は、実はこの大貫氏の甥(戸次重幸が演じている)の妻で、莫大な財産と社長の椅子をダンナに継がせるべく面倒を見つつも嫌っているし敬遠しているのだけれど、新妻聖子演じるやけに少年ジャンプな乱暴な口調の看護婦と、岡田浩暉演じる藪なんだか名医なんだか判らない、でも多分、ちゃらんぽらんに見せていて実は名医な医者と、2人は大貫さんにも普通に接している。
このお医者さんもある意味で理想のタイプだよなと思う。
大貫さんが落としたライターを拾ったパコちゃんが、次の日、ライターを探す大貫さんに「パコ、ライター持っているよ」と差し出し、盗まれたのだと思った大貫さんがパコちゃんのほっぺたを殴りつける。
パコちゃんが、車の事故で両親を亡くし、自身も丸一日しか記憶が保てないという障害を負っていることを聞かされ、そのパコちゃんのほっぺたに触ったときに「おじさん、昨日もパコのほっぺたに触ったね」と言われた大貫さんの中で何かが変わる。
こうやって私があらすじを追ってしまうと何だかなという感じなのだけれど、これが舞台で演じられると至極自然に流れに乗れてしまうところが不思議なのだ。
休憩前に唯一感じた違和感は、「こんなに室町の出番が少なかったかな」ということだけだった。私の中では、この舞台は大貫さんとパコちゃんの物語であるのと同じくらい、笠原浩夫演じる元子役の俳優室町と看護師との物語でもあったからである。どうも、この辺りは勝手に記憶の中で物語を変えてしまっていたらしい。
俳優を続けられない、俳優以外の仕事はできないと嘆く室町と、彼のファンだったと告白する看護師と(合わせて「外出許可をやるから北斗の拳全24巻を読んでかっこよさを勉強してこい」と言い放つところが彼女の格好良さである)、パコちゃんの記憶に残りたいと願う大貫さんと、自転車置き場の横の室外機が回るのは間もなく亡くなる人がいるからだという「病院の伝説」を語る女性患者と、台本を読もうとして読めずに病院の4階から飛び降りようとした室町とそれを止めようとして一緒に落ちて恐らくは二度と歩けなくなってしまった消防士と、大貫さんの会社を何としても夫に継がせたい看護師とあんまり欲も才覚もなさそうなその夫と、登場人物全員でパコちゃんが「今日がお誕生日でママから毎日読むようにともらった」と信じている絵本「ガマ王子 vs ザリガニ魔人」の上演が始まる。
一緒にやってくれと皆に頼む大貫さんの葛藤と変化と勇気とが、元々、パコちゃんを大切に思っていた入院患者たちを動かす。
でも、大貫さんに散々イタズラを仕掛けていたホリゴメさんだけは配役されていない。
ガマ王子を演じた大貫さんが、途中で倒れてしまう。
でも、「これはただの発作だから、最後まで演らせてくれ」と言い張る。
そういえば、医者と看護師とが「いつまで生きられるんだ? 医学でそれくらいのことは判るんじゃないのか?」「医学の予想はもうとっくに超えているんだ。無力でしょう。」という会話をかわしていたことが思い出される。
ここで、シーンは仏壇の前に戻る(この前にも、何回か現代と回想を行き来している)。
「大貫さんは死んでいない」と言う年配の男性に、青年はずっこける。
ここを覚えていてしまうと、やっぱりこのお芝居の味わいはかなり減じられてしまうなと感じた。珍しくしっかり覚えていた自分が腹立たしい。
その後すぐ、亡くなったのはパコちゃんだった。
「本当のことを語りましょう」と、ホリゴメさんは青年に言う。
ホリゴメさんが、実は全く売れなかった絵本「ガマ王子 vs ザリガニ魔人」の作者であったことが明かされ、その絵本はもう手元にも残っておらず、当時の入院患者たちが供えられた絵本の残りのページを持っていることが語られる。
青年が両親に電話し、「お芝居やったでしょ?!」と当時の人々を訪ねて絵本をもう一度完全なものにしようと動き始めるところで幕である。
初演を見ていて再演を見てしまうと、ついそのつもりはなくても初演の記憶と今見ている再演とを比べてしまうところが、何だかいつも我ながら勿体ないと思う。
でも、これが止めようと思ってなかなか止められるものではないところが困る。
でも、今回の再演は、正直に言って、初演よりもずっとまとまっているように感じられた。新妻聖子の乱暴な言葉遣いも、笠原浩夫のおかまっぽいザリガニ魔人もハマっていたし、恐らく笠原浩夫が代演したことによって、いかにも恋愛モノっぽい感じが薄まっていたのも却って良かったように思う。
ただし、ザリガニ魔人の衣装は初演の方がそれらしくて好きだった。
やっぱり、再演だからどうしようと思ったのだけれど、見て良かった。
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コメント
ガマ王子様、コメント&引き続いての情報提供をありがとうございます。
山内圭哉が映画でのデビューだったということも初めて知りました。
舞台デビューか、音楽での活動が先かと思っていたので驚きました。
かわいい少年の姿が見られるのなら、「瀬戸内少年野球団」のDVDをどこかで借りて見てみようかしら。
投稿: 姫林檎 | 2008.07.08 22:30
放送は7月25日深夜です^^
映画もみにいきますよ
別物としてみたらおもしろいとおもう
僕は映画もかなりいきますからねw
「パコと魔法の絵本」の監督は
「嫌われ松子の一生」と「下妻物語」の監督のはずだからつまらないものにはならないとおもう
この2つ面白かったですから^^
配役でかぶってるのは山内圭哉だけですね
彼は映画でデビューしたひとで
「瀬戸内少年野球団」いまみると
このかわいい少年がああなるのかと
せつなくなりますよ(笑)
投稿: ガマ王子 | 2008.07.07 23:49
ガマ王子さま、テレビでの放映情報を教えていただいてありがとうございます。
実はノーチェックだったので、とても有り難かったです。
そういえば、この作品は映画にもなるんですよね。
私は映画は見ない公算が大きいのですが、ガマ王子さんはいかがですか?
投稿: 姫林檎 | 2008.07.07 22:51
衛星第2で今月末放送するらしいですよ再演バージョン
ご存じだとおもいますが報告しておきます^^
投稿: ガマ王子 | 2008.07.07 21:35
ガマ王子さま、コメントありがとうございます。
再演の舞台も、3回もご覧になったのですね。脱帽です。
山内さんの猿のところが毎回違ったとお聞きして、思い出そうとしてみたのですが、全く記憶が欠落しています。
私が見たときはどんなバージョンだったかなぁ・・・。
投稿: 姫林檎 | 2008.04.13 16:46
3回いってきましたよ^^
今回は大貫がすごかった
かっこよかったなあ
しびれた
一幕の嫌な爺さんな印象を
初演ご覧になった姫林檎さんに感じさせちゃうなんてすごいね吉田さん(笑)
配役は正直 光岡役以外は初演が僕はタイプでしたが
作品自体は今回のほうが力がありましたね
あんな笑いとジーンとするところが交互にやってくるのに
話がこわれないのがすごい
山内さんの「猿」のところは
毎回バリエーションがちがっていました
西遊記バージョン バナナの絵バージョン・・・
千秋楽はやりすぎ感があり大貫さんが苦しそうでしたw
いい舞台でした^^
今日は「顔よ」観てきました
衝撃的でした><
投稿: ガマ王子 | 2008.04.13 01:50
ガマ王子さま、コメントありがとうございます。
生で3回、DVDもすり切れるほどご覧になったというのは凄いですね。
ハンドルネームにされているくらいですから、作品への思い入れは強いのですね。
ご覧になっていかがでしたでしょうか。
確かに、後藤ひろひとが演じる役というのは、あて書きになっていることも多いように感じられますし、インパクトもそれだけ強いですから、再演で同じ役を演じるというのは役者さんにとってかなり大きな挑戦のようにも思いますね。
投稿: 姫林檎 | 2008.03.29 12:21
明日みてきます
初演は生で3回DVDも擦り切れるくらい見たから
再演はとっても不安です><
後藤さん以外の堀米みたくないwww
でも楽しみです^^
投稿: ガマ王子 | 2008.03.28 23:01