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2008.03.09

「眠りのともだち」を見る

「眠りのともだち」イキウメ
作・演出 前川知大
出演 浜田信也/盛隆二/森下創/緒方健児
    宇井タカシ/岩本幸子/日下部そう/奥瀬繁
    小島聖 
観劇日 2008年3月7日 午後7時開演
劇場 赤坂RED THEATER L列13番
料金 3200円
上演時間 1時間45分

 赤坂RED THEATERには千代田線の赤坂から行くことが多いのだけれど、この日は銀座線の赤坂見附駅から歩いて、しばし迷ってしまった(普通なら迷うような複雑な場所ではない)。
 それで慌てて駆け込んだので、ロビーの様子や物販などはチェックしそびれてしまった。

 2月最終週の週末は旅行に出かけ、3月第1週の週末は珍しく芝居のチケットを取っていなかったので、3週間振りの観劇になった。
 ここまで間が開くことは滅多にないので、何だか我ながら不思議な感じがする。

 ネタバレありの感想は以下に。

 イキウメの公演は初めて見た。
 あと2日で千秋楽という日程のためもあってか、劇場内は満席だった。赤坂RED THEATERは舞台との距離が近いので、L列は最後列から2列目だったけれど、却って舞台全体が見られて見やすかった。

 小島聖演じる「水穂さん」が友人とシェアしているマンションの一室が舞台である。
 不思議な感じでそこに居候している浜田信也演じる男がいるのだけれど、そのうち彼は水穂さんと別居している夫でカメラマンの卵だということが判る。

 夢の話をしているうちに、彼と彼女が全く同じ夢を見ていたか、夢を共有していたか、2人で再現できてしまうくらいにくっきりリアルに同じ夢も記憶を持っていることが判る。
 「夢の中で自分は夢を見ていると気づいたらどうなるか」を2人で話したその後の眠りの中で、水穂山は本当に夢の中で「自分は夢を見ている」と気づいてしまう。

 水穂さんの意識はどんどん夢の深いところに降りてゆき(それを劇中では「落ちる」とか「レイヤー*に来た」と表現していた)、水穂さんの体はひたすら眠り続けることになる。

 この水穂さんの強気のキャラがいい。
 「欲望という名の電車」でひたすら柔らかいステラを演じていた小島聖が、カメラマンの卵である夫の郁夫を叱りつけつつ応援しているしっかり者で強気の女の子にもすぽっとはまっているのが気持ちよい。
 あら、私は小島聖って女優さんが好きなのかも、と思った。

 郁夫を演じた浜田信也もまたすぽっとそのキャラにはまっていたし、水穂が住んでいたマンションに以前に住んでいた一見強面風で実は小心者の男と先輩を立てつつ実は切れたらコイツの方が怖いその後輩を演じた盛隆二と緒方健児も、いかにも少しの悪気で凶悪犯罪を行ってしまった2人にありそうな風情だし、劇団の紅一点の岩本幸子演じる水穂のルームメイトで行方不明になっている寺越も、奥瀬繁演じるその事件を追っているちょっとイヤな感じが漂う刑事も、宇井タカシ演じる水穂が入院した病院の医師も、それぞれに違うキャラが立ち、役者さんたちが立っている感じが何よりいい。
 私にとってのツボだったのは、水穂が出向いた夢の世界でそこを仕切っている男たちを演じた日下部そうと森下創のコンビのデコボコぶりだ。日下部そうの声はいかにも「夢の世界」の住人らしく、こいつを怒らせたら絶対にやばいという感じが籠もっていたし、一人だけ現実っぽくない衣装だったのに何故かそれがはまっていた森下創の創られた緩さもいい感じである。

 初めて見た劇団なのだけれど、印象は「何てこんなにも違うキャラが立つ役者さんたちがバランスよく集まったのでしょう」ということに尽きる。
 見ていて楽しいし、飽きないし、まだまだ色々なタイプの芝居がここから生まれてくる可能性を大きく内包している感じがすごく強い。

 強気の水穂さんは夢の世界に介入しては落ち続け、現実がレイヤー0として、レイヤー3まで落ちてしまう。ここまで落ちると、なかなか浮上することは難しいらしいのだけれど、狼狽しない水穂さんのキャラが不自然でないところが不思議である。
 結局のところ、奥の手を使うことを提案された水穂さんが強気そのままにイチかバチかのその作戦に乗り、夢の世界に降りてきた郁夫もその作戦に乗り、夢の世界でケンカしつつ仲直りした2人は(しかしどうしてこの2人は、水穂「さん」と「郁夫」と呼び合っているのか。おかげで2人の関係を掴むまで時間がかかった)、寺越の救出と水穂の覚醒を目指して行動を開始する。

 水穂さんを車いすに乗せてマンションに帰ってきた郁夫は、ひたすら彼女に呼びかけるのだけれど、なかなか目を覚まさない。彼女の主治医が「病院に戻りましょう」と車まで呼んで来ていて「間に合わないんじゃないか」「連れ戻されちゃうんじゃないか」というスリルを作り出す。

 この水穂さんの覚醒の場面だけはちょっとだけ不満だった。
 多分、これが現実なのだけれど、でもこれだけ引っ張ったんだから、もうちょっと劇的なというか明らかに効果のある一言とか行動とかをきっかけに目覚めて欲しかったなという感じがした。

 読売新聞の劇評だったかで、「夢の多重構造が判りにくい」というような趣旨のことが書かれていて、少し身構えていたのだけれど、全くそんなことはなかった。シンプルで判りやすい舞台だし、レイヤーの示し方も区別も非常に明快だったと思う。
 感想としては、だから本当は、「独自の世界を非常に判りやすく見せてくれるシンプルな舞台だった」ということと「バランスのいい劇団だな」ということで全てだったりする。

 次の公演も見てみたいと思った。

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