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2008.05.03

「49日後…」を見る

「49日後…」 PARCO presents
脚本 竹内佑 
演出・出演 池田成志
出演 古田新太/ 八嶋智人/松重豊/小田茜
観劇日 2008年5月2日(金曜日)午後7時開演
劇場 パルコ劇場 H列21番
料金 7500円
上演時間 2時間5分

 ロビーではパンフレット(1500円)やポスター(多分、大1000円、小500円だったと思う)や、出演者が過去に出演した舞台のDVDなどを販売していた。

 ネタバレありの感想は以下に。

 「49日後」を「よんじゅうくにちご」と読んでいたのだけれど、開演前のアナウンスで「しじゅうくにちご」と言われ、やっと、四十九日の法要とかそういうお話なのかなと思った。
 廃屋のような家に最初は雨戸だとは思わなかった雨戸が立て回してあり、いかにも「デキル女」という風情の小田茜演じるノセさんがいる。何やら強力な薬を散布し、携帯電話で連絡を取り、そこへやってきたのが、池田成志 ・古田新太・ 八嶋智人・松重豊演じるスーツの4人組である。
 雨戸を外すと、そこは、もの凄いゴミの山で、壁には血しぶきも飛んでいる。
 私の大の苦手のスプラッタか、と一瞬引く。
 そこは、一人暮らしの年配の女性が自殺した家である。

 ゆるめの会話を聞いているうちに、ノセさんは葬儀社の人間であり、4人は身寄りなく亡くなった人の家を片付ける仕事をしているのだと判る。

 ぴりぴりキリキリしているノセさんを除き、4人はあくまでも緩い。
 この4人の役名がどうしても思い出せないので役者さんの名前で書くことにするけれど、とにかくこの4人の行動には「いい加減」というオーラがつきまとう。
 非常に適当に片付け、休憩を取りまくり、関係ないことをしゃべり倒し、新人の松重豊がいつ辞めるかという話を始め、バイトの八島は「ブログに書く」と実況中継する。最初は社長かと思われた古田新太は実は社長である池田成志の恋人らしい。

 設定は全く違うのだけれど、きりきりする生真面目そうな女と、そんなことは関係なくあくまでも緩い男たちというのは、何となく「鈍獣」を思い出させる。
 そういえば、「鈍獣」も苦手だったなということもついでに思い出す。
 男優陣がそれぞれに「芸達者」以上の役者さんだから、余計に「役の上の男たちだけでなく、芝居そのものも緩い」という風に見えてしまう。個々のシーンは面白いし、つい吹き出したり大笑いしたりしてしまうのだけれど、何となく内輪の何かを見ている気になってくる。
 逆にいうと、それでも世界が成立しているのは、役者さんたちの力量とコンビネーションの賜物という気がする。

 その緩さが、途中から少しずつ雰囲気が変わってくる。
 ノセさんが「家の権利書と実印を探せと依頼者であるこの家の娘が言っている」と言い出した頃からである。
 古田新太が「これから暴力について語るのか」と思わせるような凄みを見せたり、殴り合ったり、家の横の崖から意味もなく明らかに濁りきった水が流れてきたり、この家にはもう1人の住人がいたのではないかという話になったり、松重豊が離れて行ってしまった自分の家族を語り出したり、雰囲気が一歩ずつシリアスに近づいて行く。
 俄然、謎が謎を呼ぶミステリのようになってくる。

 探偵役を、気の弱そうな、新入りの松重豊にやらせるところが上手いと思う。
 そして、彼が恐らくはこの家に住んでいた女性は一緒に暮らしていた息子に虐待を受けており、その息子を殺して自分も死んだこと、この家の娘というのはやっぱりこのノセさんで、彼女が兄の遺体の始末をつけたことを語ろうとしたとき、飲みに行ってしまっていたと思っていた3人が戻ってきて、彼の言葉を止める。
 これまでおちゃらけていたのは反則だよ、と声を大にして言いたいくらいに格好良い。

 普段はちゃらんぽらんでいざというときにシリアスに有能になる人というのが私の理想なので、この社長とその恋人はまさに理想のタイプである。
 こういうラストを見せてくれるのなら、これまでの緩さは全部許す、と思った。

 この4人に囲まれて、小田茜が奮闘している。
 彼女が微動だにせずに立ちつくすシーンが2回あったのだけれど、どちらもとても美しかった。

 このお芝居、シリーズになるといいのにと思った。

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