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2008.05.31

「恐竜と隣人のポルカ」を見る

「恐竜と隣人のポルカ」パルコ・プロデュース
作・演出 後藤ひろひと
出演 寺脇康文/手塚とおる/水野真紀
    森本亮治/大和田美帆/後藤ひろひと
    兵動大樹/竹内都子/石野真子
観劇日 2008年5月31日(土曜日)午後3時開演
劇場 パルコ劇場 F列24番
料金 7500円
上演時間 2時間

 午後3時開演というのはかなり珍しいと思う。
 カーテンコールの挨拶で「あと2時間休んだだけで次の公演です」と後藤ひろひとが言っていたけれど、役者さんたちはかなり辛いのではなかろうか。

 ロビーではパンフレット(1500円)等が売られていたけれど、ぎりぎりに劇場に入ったのと、物販のスペースが混雑していたのであまりちゃんとチェックしなかった。

 ネタバレありの感想は以下に。

 劇場入り口から、黄色と黒の縞のゲートが建てられ、BGMはいかにもジュラシックパークな鳥の声などなどが鳴らされている。
 席に着くと、KT境界とは何ぞやという解説がナレーションで流されている。なぜそれが3カ国語(もっとあったのかも知れないけれど、私に判ったのは日本語と英語と、あと何かは判らなかったけれど多分ラテン系の言語だった)なのかは不明である。
 そして、川口浩探検隊のような格好をした2人が出てきて、笛と身振り手振りで注意事項を伝える。
 いかにも「大王」らしい凝ったオープニングである。
 もっとも、私はジュラシックパークも川口浩探検隊も見たことはない。

 トダ家とクマガイ家は隣同士、寺脇康文演じるトダ父と手塚とおる演じるクマガイ父の父親同士が幼なじみである。
 トダ家は、水野真紀演じるトダ母と森本亮治演じるトダ息子との3人家族であり、クマガイ家は、竹内郁子演じるクマガイ妹と大和田美帆演じるクマガイ娘との3人家族である。クマガイ母は姿を現さなかったから多分いないのだと思う。
 トダ父がクマガイ父を評して「あいつの考えていることは全部判るけど、あいつのやることは全く判らない」と言っていたけれど、実にその通りの人物だったから、きっとクマガイ母は出ていってしまったのだろう。

 この父同士は石野真子の大ファンである。
 石野真子は石野真子役で出演していて、彼女は恐竜をテーマにした番組の司会を担当している。けれど、その言動のあまりの変さに、兵動大樹演じる番組ディレクターは「石野真子のニセモノではないか」と疑っている。
 その石野真子の番組に恐竜の専門家として後藤ひろひと演じるシバイ館長が出演する。

 この辺りまでが「登場人物の紹介」である。
 相変わらず「群馬県」をいじる辺り、大王節はあちこちで炸裂しているのだけれど、何だか「絶好調」という印象は受けない。
 カーテンコールで「2時間で次の公演だから抑えめにと言ったのですが、そんな器用なことはできない座組でした」と後藤ひろひとが言っていたけれど、前半は実はやっぱり抑えていたのではないかという気がする。

 トダ家の庭で恐竜の化石らしきものを発見し、トダ夫妻がイベント会社の社員と元社員だったものだから、一気に話は「恐竜の化石で金儲け」へと突き進む。
 それまで仲がよかったクマガイ家とも、クマガイ父の突拍子もなさを警戒して内緒にしていたものだから話はこじれまくり、全面戦争状態である。
 美大を中退したらしいトダ息子と、医大生なのだけれど献体から声がするような気がするというクマガイ娘の落ち着きをよそに、オトナ4人はヒートアップする一方である。

 クマガイ家は石野真子と一緒に恐竜の化石を発掘しようとテレビ番組あてにファックスを送るし、トダ家は専門家のお墨付きを得ようとシバイ氏に連絡を取る。
 両家とも、実はやっていることがかなりズレている。
 こっそりクマガイ娘に話しかけようとするトダ息子だけれど、どうも気持ちは全く届かず、クマガイ娘が全て恐竜の化石が語ったものと解してしまったり、「ここで1分間、役者のみ休憩をいただきます」などというアナウンスが中井美穂の声で入ったり、川平慈英のナレーションが入ったり、話はしっちゃかめっちゃかの小技使いまくりである。

 でも、何故かずっとのめり込めない感じだった。
 石野真子争い、結局両家の庭に跨って埋まっていた恐竜の化石に対する所有権争いが突き進むのだけれど、何というか遠い感じがずっとつきまとっていた。

 結局、石野真子は実は7人いたということが明らかになる。
 ちなみに7人の内訳は、歌が3人(歌用、ダンスが上手い口パク用、九州・東北地方用)、バラエティが2人(ドリフ用ともうひとつ何用だったかな)、ドラマが1人、トーク担当1人という構成だそうだ。聖子ちゃんの14人が分業体制としては最高記録、分業を拒否した山口百恵はだから引退が早かったなんてことまで解説される。
 ここまでディテイルを覚えていて何だけれども、これって「恐竜と隣人のポルカ」とは、もしかして関係ないのでは、という気がする。
 その関係のなさがピタリはまるときと、「ん?」というときとがあると思うのだけれど、私にとっては今回は後者だったかも知れない。

 クマガイ娘は恐竜の化石で儲かるはずがないと主張し、確かに、シバイ氏はトダ家に870万円の「発掘費用請求書」を置いて行き、あまりの泥試合に嫌気が差したクマガイ娘は、自分に話しかけてくれたと信じている恐竜に「どんとやっちゃって!」と叫ぶ。
 それを自分に言われた台詞だと勘違いしたトダ息子は、勢い込んで両家の発掘中の穴に自作の爆弾を投げ込むのだけれど、プシュっ程度の爆発ともいえない爆発が起きただけである。

 ところが、化石の埋まったすぐ下には石油が埋まっており、その震動で吹き出し、両家の父は会社を辞めて石油業に手を出すつもりのようである。
 そこで、幕である。

 最後に、いかにもアイドルな衣装を着た石野真子が歌いつつ、役者挨拶があるのはご愛敬である。
 楽しかった。
 後藤ひろひとが「何も残らない芝居を作るのも難しい」とカーテンコールで言っていたけれど、確かに指向するのはかなり厳しいことなんだろうなという気がする。何かが残る芝居の方が、脚本も演出も役者さんたちの演技も技巧が(どちらかといえばということだけれど)要求されないように思う。
 そう思っていても、やっぱりもう一歩、何かが欲しかったという気がする。
 やっぱり、「セーブしていない回」を見た方がいいかも知れない。

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