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「まどろみ」M&O playsプロデュース
作・演出 倉持裕
出演 ともさかりえ/近藤公園/村岡希美
玉置孝匡/六角精児
観劇日 2008年5月24日(土曜日)午後7時開演
劇場 あうるすぽっと F列7番
料金 5500円
上演時間 2時間
前回あうるすぽっとでお芝居を見たときには営業していなかった劇場ロビーのカフェが、今回は営業していた。
その他、いわゆる「物販」があったかどうか記憶にない。
公演は今日(5月25日)で終了である。
ネタバレありの感想は以下に。
タイトルが「まどろみ」だし、お芝居の始まりが家の横を通る電車の音にかき消されて会話が聞こえなくなるというところからだし、しかもその会話が噛み合っているようで全く噛み合っていないし、それが正解なのだと思うのだけれど、見ている間中、落ち着かないというか、不安で不穏な感じがずっと漂っていたと思う。
元気なときはいいのだけれど、少しばかり参っているときには、この不条理な感じはかなりキツイ。
最初は、村岡希美演じるメリコという女が、トラブルメーカーなのかと思っていた。
ともさかりえ演じるトツミと暮らしている、近藤公園演じるレイジという男に「やっと探し当てた。私はあなたと深く知り合った」と言って、あとは「私とあなたは愛し合っている」とは言わないものの、それを前提にした台詞のオンパレードである。
恐らく、相手の言うことは聞いていない。
というよりも、自分に都合のいいところしか聞いていない。
これだけでも、かなり不穏である。
看護師らしいトツミが夜勤明けの手術終了後に疲れ果てて帰ってきているというだけでも、不穏だ。
そこに、六角精児演じるレイジの叔父が突然乱入してくる。
そもそも、この叔父はレイジとトツミの二人暮らしの家に突然やってきた闖入者らしいのだけれど、おまけにトツミに横恋慕しているのか、レイジが相続した財産目当てなのか、あるいはその両方で、元々が事業を興しては失敗して懲りないという究極のトラブルメーカー体質らしいのに、本人が意図的にトラブルを起こしてやろうと思っているから性質が悪い。
そして、こういう役がどこまでも似合うのが六角精児という役者さんである。
どうもレイジは一睡もしないまま生きている不眠症で、自分の行動は逐一ノートにメモしているらしい。
レイジは、叔父の事業に出資するという判子を押してしまっているらしい。
レイジとトツミは新宿西口の雑踏でレイジそっくりの男とすれ違ったことがあるらしい。
これだけでも虚実入り混ざって複雑なのに、だめ押しで玉置孝匡演じるヒタチという男がやってきて、レイジに向かって「カズキ!」と呼びかける。
カズキとヒタチは3年前まで恋人同士だったのだという。
おまえは誰に頼まれてやってきたんだとか、新宿駅西口にいた男はカズキなのか、メリコが探している男なのかとか、自体は際限なく錯綜していく。
どうも、叔父が言っていたことは全部邪推で、トツミがヒタチに頼んだというのが真実らしいのだけれど、でも動機が判らない。
そして、何故かトツミが1日24時間体制でレイジを見張るようになる。
恐らく、私はこの辺りの展開で非常に重要な何かを掴み損ねてしまったのだと思う。
レイジは、実は2人いて、ソファの後ろに隠れ家があり、適時入れ替わって「レイジ」という1人の人間として暮らしているのか。
その2人目のレイジを見てしまったからトツミは気を失ったのか。
火事に巻き込まれたのはメリコの息子とレイジなのか。
明らかに性格が変わって(ついでに衣装も替わって)現れた男は、レイジの何なのか。
メリコが探していたのはこの偽レイジなのか。この偽レイジは、メリコが探していた男だけれど、探していた男はこんな奴じゃなかったからメリコは電車に飛び込んでしまったのか。
その偽レイジをどうしてヒタチが殺してしまうのか。
トツミが、カズキを探しに病院に来たヒタチがトレンチコートのベルトを引きずっていたことを教えなかったのは、そんなにも決定的な何かだったのか。
やっぱり最後まで「謎が謎を呼ぶ」不条理な展開で、解決編がないところが恐らくは正解なのだけれど、カタルシスを味わいたかった私としてはやわやわというのか、ざわざわという感じだけが大きく残ってしまって、落ち着かない感じを引きずってしまった。
ところで、カーテンコールでお辞儀をしていたともさかりえが、軽く足首を掴んでいたのが印象的だった。
何て身体が柔らかいのだろう。
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