先週の土曜日(2008年6月7日)、2008年4月17日から6月15日まで、東京都庭園美術館で開催されている「世界に誇る和製テーブルウェア オールドノリタケと懐かしの洋食器」展に行って来た。
会期もあと残すところ1週間という2008年6月7日だったためか、梅雨の晴れ間の週末だったためか、適度に混雑していて却ってゆっくり見ることができた。
「オールドノリタケ」という言葉は割とよく聞く言葉だと思うのだけれど、こういう呼び方をされるようになったのは割と最近(ここ十数年だったか数十年だったか、この違いは大きいのだけれどどちらだったか覚えていない)のことなのだそうだ。
しかも、「オールドノリタケ」と呼ばれる食器群の定義も実は曖昧らしい。
この辺りは、図説で拾い読みしただけなので(重さに負けて購入しなかった)かなりうろ覚えの怪しい記憶なので、雰囲気だけで書いてしまうけれど。
ノリタケというのはそもそも地名からとったブランド名で、だとすると、日本陶器という会社が食器の製作から装飾までを一手に行うようになり、今の名古屋市中村区則武に工場が作られた後の時代のものが「オールドノリタケ」と称されるべきなのだろう。
しかし、今、コレクターなどに珍重されている華やかな装飾の食器群は、日本陶器が食器製作のみを行い、装飾を森村組という別会社が行っていた時代のものがほとんどらしい。
なかなか複雑な世界のようである。
そういった学問的な背景はともかくとして、金を多用し、金の代わりにラスターという真珠貝の内側のような光沢を出した食器群を見ていると、かなり心豊かになれる。
緊張してしまってとてもじゃないけれど、ここに出品されていたティーセットでお茶を飲んだり、花瓶に花を生けたりはできなさそうだけれど、眺めるだけで眼福というものである。
「黄色と黒」というカラーを使った絵柄が意外と目に付く。
やはり阪神タイガースを例に出すまでもなく、インパクトのある組み合わせであることは間違いないだろう。
いわゆる「蒔絵」のような絢爛豪華なものから、意外なくらいシンプルなものまで、昭和初期にはティーセットとお茶のセットに同じ絵柄が使われるものがあったり、とにかく楽しい。
「セロリ・ディッシュ」なるものがいくつか展示されていたのも可笑しい。展示されていたということは、そういうものが作られて売られて使われていたということなのだろう。細長い形のお皿と、しょうゆ皿のような小皿5枚(6枚だったかも)のセットである。
実は、最初に見たセロリ・ディッシュには本当にセロリの絵が描かれていたので、セロリの絵が描かれているからセロリ・ディッシュという名前が付けられたのだろうと考えていた。
それが、全くデザインも絵柄も違う、細長い形のお皿としょうゆ皿のような小皿のセットにも「セロリ・ディッシュ」と書かれていて、セロリと(推定)マヨネーズを供するためのお皿なのだと納得したりした。
カップの底などに書かれているマークの変遷の一覧が廊下に張り出してあったりして、その後で気がついたのだけれど、作品の名前や製造者、所有者などが書かれたカードにもそのマークが印刷されている。
何だか気になって、もう1回順路を戻って、そのカードや、たまにひっくり返して置かれていて見えるようになっている、カップの底のマークを見直してしまった。
たくさんの食器の中で気に入ったベスト3がある。
一番は、やはり、大倉陶園の「白地ティーセット」である。白地に臙脂で太めにラインが入っているだけのデザインなのだけれど、姿とのバランスといい、白地の白さといい、シンプルでかつ「いいもの」という雰囲気が伝わってくる。もし全出展作品の中でひとつくれるというのなら、絶対にこのセットを希望すると思う。
あとの2つは私の中でどちらを2番目にするかはかなり微妙である。
ひとつは、深川製磁という会社の花鳥文のティーセットである。「オールドノリタケ」と呼ばれるものよりももう少しだけ古い時代のものらしい。ブルーを基調にして、ティーポットもティーカップも全面を埋めるように絵柄が描き込まれている。その濃淡のついたハンドメイド感もいい。
もう一つは日本陶器のレース文のティーセットである。濃紺の地にエンボスのようにレースの文様が浮き上がり、そこに花などが飾られ、模様の方は金で描かれている。繊細さの極みといったところだ。このティーセットは、「オールドノリタケと懐かしの洋食器」展のチラシにも写真が載っている。実物の方がずっと繊細で美しい。
私が気に入った品々が絵はがきになっていなかったのがとても残念である。
結局、館内だけで1時間半を費やしてしまった。
もしかしたら、万が一に、一生に1セットくらいは手が届くかもと思える分、真剣に見てしまったし、楽しかった。
東京都庭園美術館の公式Webサイト内、「世界に誇る和製テーブルウェア オールドノリタケと懐かしの洋食器」のページはこちら。
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