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2008.06.22

「王様とおばさん」を見る

「王様とおばさん」
脚本・演出 福島三郎
出演 宮本信子/布施明/羽野晶紀/宮地雅子/東山義久
    本間剛/大内めぐみ/土居裕子/山路和弘 
観劇日 2008年6月21日(土曜日)午後5時30分開演
劇場 ル・テアトル銀座 8列24番
料金 8400円
上演時間 3時間(15分間の休憩あり)

 フラについて語られているだろうパンフレットはかなり気になったのだけれど、1600円だったので断念した。ロビーでは他に、この公演のDVD予約も始まっていたようだった。

 ネタバレありの感想は以下に。

 何だか久しぶりに「次はどうなるんだ?」と気になって集中して舞台を見ることができた。
 最終的に、宮本信子演じる真菜が、亡くなった自分の夫そっくりの布施明演じるハワイ王朝の祖である王様(名前は何度も出てきたのだけれど、覚えられなかった・・・)と一緒に霊界に生きる道を選ぶのではなく、現世で生きることを選んで終わるということは、もちろん予定されている。
 それでも、この後どうなるんだろう、どう展開するんだろうと気になってつい前のめりになりそうになる。
 作・演出の福田三郎の手腕でもあるだろうし、実はやけに豪華な出演者陣の確かな力によるところも大なんだろうと思う。

 幕開けが羽野晶紀の歌で、アカペラできれいな声を響かせているのだけれど、何故だか歌詞が届いてこない。
 そういえば、羽野晶紀を舞台で見るのは久しぶりで、大丈夫かしらとちょっと思ったのだけれど、布施明の圧倒的な歌声とハモり、舞台が一転してモロカイ島の「現世」に移った辺りから、何だか楽しくなってきた。

 真菜と土居裕子演じる義妹(亡くなった夫の妹)の雅代、宮地雅子演じる、雅代が勤める小料理屋の女将である花子の3人が、東山義久演じる顔はいいのにヌケまくっている添乗員の福山に連れられて、モロカイ島にやってくる。
 彼女たちが滞在する別荘(ちらしでは「お屋敷」となっていたけれど、そんなに豪華な家には見えなかった・・・)の管理人である、山路和弘演じるポポカイナ二瓶がやってくる。
 彼は「知らない呼び声に答えるな」と福山にそこだけ真顔で注意を与えるのだけれど、真菜はそのとき既に呼び声に答えてしまっている。

 最初に出てきた2人はハワイの最初と最後の王で(そうと気づくまでは夫婦かな、しかし王と女王が夫婦というのも滅多にないよな、などと思っていた)、本間剛演じるプイプイと大内めぐみ演じるヌイヌイはそれぞれ王と女王に仕えている。
 そういえば、この2人は、3人の「おばさん」が借りたお屋敷で捜し物をしていると言っていた筈なのだけれど、最後まで捜し物をしている風情はなかった。彼ら2人がお屋敷をうろついていた理由は何だったんだろう。

 3人の「おばさん」を「おばさん」たらしめているのは、やはり花子を演じた宮地雅子の迫力によるところだと思う。53歳には見えなかったけど、おばさんというよりも、いわゆる「おばちゃん」という威力と迫力に満ちている。
 彼女にかかったら怖いものは何もないという感じだし、やはり何だかんだいっても一番現実処理能力が高い。

 ハワイにレースのワンピースで来てしまう真菜は夢見る少女おばさんだし、土居裕子は「おどおどしているようで芯の強い女」を演じさせたら天下一品である。
 ヌイヌイの走り回る姿を見ながら「この女優さん、絶対にどこかで見たことがある」と思っていたら、子どものためのシェイクスピアの「夏の夜の夢」でパックを演じていた女優さんだった。キレのいい動きを見せる筈である。
 本間剛演じるプイプイも、堅物で、義理人情を重んじて(そういうシーンはなかったのだけれど)、意外なくらい軽快に走り回る。

 布施明の歌の力はもう語るまでもないとして、キャラとして一番好きだったのは「ハワイ時間に完璧に染まりきって、怪しげな日米混成語をしゃべりつつ、やけにちゃらんぽらんなくせに、実は真面目で裏事情にも詳しい」というポポカイナである。
 こういう人、理想のタイプかも知れない。近くにいられても困るけれども。
 その怪しげな感じと山路和弘の声と佇まいがやけにしっくりと来ていて、格好良すぎる。
 このお芝居を引っ張っているのは、おばさん達のそれぞれキャラの立ったリアリティと、「謎が謎を呼ぶ」展開を1人で背負った感のあるこのポポカイナであるように思う。

 実は、配役を知るまでは、羽野晶紀が「おばさん」の一角を担うのではないかと思っていた。
 そういう演技も絶対に似合うし上手いと思うのだけれど、威厳云々を時々捨て去ろうとしているのにでもやっぱり「女王」というキャラも、やはり彼女ならではの見せ方だと思う。
 そういえば白雪姫も演じていたな、と場違いなことを思い出してしまう。

 王様と出会うために「あちらの世界」に行っては、魂を少しずつ抜かれて少しずつ弱っていた真菜も、「こちらの世界」に自分の居場所があると思い直し、自分の夫にそっくりな王様に会えたことも、王様の亡くなった奥さんに自分がそっくりなことも、「王様と自分の夫は同じ魂の持ち主だった。だから王様とその周辺の人しか知らない歌を自分の夫が知っていた」とあっさりと納得して、王と女王の成仏をフラで見送ろうという気持ちになる。

 こうして、王と女王、彼らに使えていた2人は昇天し(しかし、消え去るときの、羽野晶紀の思い切りの良さに比べて、布施明の「せーの」と言っているような動きはいただけなかった)、「おばさん」3人の骨休め旅行は終わる。

 カーテンコールで、全員によるフラがもう一度披露される。
 何故か髪をまとめて気合い十分の東山義久のフラは、流石に手足の動きがなめらかできれいで、思わず見とれてしまった。
 楽しいお芝居だった。

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