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「道元の冒険」
作 井上ひさし
演出 蜷川幸雄
出演 阿部寛/木場勝己/北村有起哉/大石継太
高橋洋/神保共子/栗山千明/横山めぐみ
池谷のぶえ/片岡サチ
観劇日 2008年7月19日(土曜日)午後1時開演
劇場 シアターコクーン P列23番
料金 9500円
上演時間 3時間15分(15分間の休憩あり)
ロビーではパンフレット(1800円)や、出演者の関連書籍・雑誌・DVDなどが販売されていた。
WOWOWのビデオカメラが入っていたせいもあると思うのだけれど、カーテンコールが3〜4回行われ、最後には出演者が「着替え中」のような格好で舞台に現れて笑いを誘っていた。
ネタバレありの感想は以下に。
舞台を囲うように壁が巡らしてあり、その壁にドアが切られていて人が出入りする。
蜷川演出の舞台装置は、ここのところ、そういう感じであることが多いように思う。たまたま、私が見た作品がそうだったというだけかも知れないのだけれど。
その舞台の真ん中に黒い僧服を着た登場人物達が集まり、鐘を形作っている。
その鐘にヒビが入ったと騒ぎが起こり、寺の創始者である道元やその弟子達が紹介される。
どうも、「座禅こそが仏教」「座禅が悟りである」と説く道元の仏教が広まりつつあることに警戒心を持った天台宗延暦寺の僧兵が攻めてくるらしいのである。
阿部寛はその道元を演じるとともに、現代の新興宗教の教祖も演じている。
この2人をリンクするものが何なのか最後まで判らなかったのだけれど、お互いがお互いを夢に見続けているらしい。
舞台が始まってしばらくは、道元の時代と現代との行ったり来たりが頻繁に行われる。
それは、道元の顔だけをスポットで照らし、そのスポットが舞台を鬼火の様に飛び回っている間に衣装替えを行うという方法で行われる。
最初のうちは、この転換がやたらと多く感じられて、ちょっと鬱陶しかった。
各シーンのタイトルと歌われる歌のタイトルが舞台両脇にある電光掲示板に示されていた。
歌のタイトルに、音を聞いただけではぱっと漢字すら浮かばない仏教用語が使われていたので、そのためのサービスかとも思うのだけれど、なくても大丈夫だったのではないかという気もする。
登場人物のほとんどは道元の弟子であり、そして一人何役もをこなす。
延暦寺の僧兵だったり、公家の使いだったり、六波羅探題の武士だったり、鎌倉幕府三代将軍実朝の未亡人になって道元に「天台宗の教えも大切だ」と言わせようとする。
道元の半生を寸劇で弟子達が演じるようになると、少年の道元になって延暦寺に入り、青年の道元になって中国に勉強に行き、壮年の道元になって寺を開く。
その間、阿部寛の道元はずっと舞台の隅でその「寸劇」を見守っている。
親鸞と日蓮とともに「自分たちは天台宗の同窓生だ、校歌を歌おう」と東京六大学の校歌を歌ったり(あと東大と立教と法政が歌えなかったと言っていたように思う)、道元を説得に来た者どもと弟子達を1人2役で演じているものだから「**はどこだ」と次々と呼ばれてうろたえて見せたり、笑いどころはたくさんある。
笑いどころはたくさんあるし、歌もかなり入って(やはり池谷のぶえの声量と表情は素晴らしい)生演奏じゃないのが勿体ないくらいだし、そこに振りもつく。
でも、「楽しいお芝居」ではなかったような気がする。
井上ひさしの初期の作品だということで、恐らく現代の方の宗教指導者にははっきりとしたモデルがいるのだと思う。
そちらから刺激を受けて書いたお芝居なのかなと思うのだけれど、道元とのつながりがピンと来なかったので、何だか道元の絶望を増幅させているように見えてくる。未来で失敗した宗教指導者の姿を夢で見続けることで道元の絶望は深まっているように見えるし、お芝居自体の枠組みも暗くしているように見える。
でも、このお芝居はそういうお芝居ではないのではないか。
それならどういうお芝居なのかというと、「仏教は、自分が自分で自分を自分にする教えだ」という台詞があったと思うのだけれど、このお芝居が言いたかったことは、もの凄く変化球なのだけれど、この部分なのじゃないかという気がした。
ラストシーンがどうしても思い出せない。
一幕の最後に全員が揃って礼をして拍手が起きていたのも意外だったのだけれど、ラストシーンはぱっと明かりが落とされて戸惑ったような拍手がぱらぱらと入り、幕が上がって役者さんたちが全員揃って並んでいるのを見て、「これで終わりだったんだ」と思った。
で、その明かりが消える直前のラストシーンをどうしても思い出せなくて困っている。
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