「怪談牡丹燈籠」を見る
「怪談牡丹燈籠」花組芝居
原作 三遊亭円朝
演出・出演 加納幸和
出演 桂憲一/二瓶拓也/北沢洋/水下きよし
大井靖彦/八代進一/磯村智彦/谷山知宏
美斉津恵友/丸川敬之/小林大介/各務立基
松原綾央/横道毅/原川浩明/堀越涼
山下禎啓/溝口健二/嶋倉雷象/高荷邦彦
観劇日 2008年9月6日(土曜日)午後1時開演
劇場 あうるすぽっと M列22番
料金 5800円
上演時間 2時間40分(15分間の休憩あり)
ロビーでは、パンフレットやTシャツ、過去に上演した作品のDVDに加えて恒例の舞台生写真などが販売されていたのだけれど、閑散としているか熱気に溢れているかの両極の状態しかなかったので、気後れして近づけなかった。
なので、値段等は不明である。
チラシやポスターの絵を描かれた方の作品がいくつか(15くらいだったろうか)飾られて、ちょっと個展風になっていた。
ネタバレありの感想は以下に。
古典芸能といえばいいのか、伝統芸能といえばいいのか、そういった古くからのものを見た感想を書くたびに「造詣がなくて」とか「全く触れたことがなくて」と書いているような気がするけれども、この「怪談牡丹燈籠」というお芝居も知っていればこその面白さが多分にあるのではないかという感じがした。
原作が三遊亭円朝となっていることからも判るように、元々が「牡丹燈籠」という三遊亭円朝が創作した落語を下敷きにしたというよりも、その立体化を試みたお芝居という感じがする。
舞台の幕開きは、広い舞台に座布団が一枚、三遊亭円朝役の役者が落語を語り始める。
語り始めると同時に、その語られている場面が動き始め、語りのとおりに場面が動き始め、そしていつしか語る落語家は舞台の暗がりに溶け込み、狂言回しよりもさらに3歩くらい控えめな立場で舞台を見守るようになる。
終演後のカーテンコールで加納幸和が「牡丹灯籠って実はほとんどが仇討ちのお話なんですよ」と言っていたけれど、本当に「牡丹灯籠」が出てくる場面は少ない。
旗本飯島平左衛門の娘であるお露が、浪人の萩原新三郎に恋をして、その恋ゆえに死んでしまう。そして、幽霊(というよりも亡霊)となったお露は、夜ごと牡丹灯籠を手に新三郎のもとに通う。
新三郎の様子がおかしいと、下働きの伴蔵が八卦見の老人や立派そうな僧に頼んで幽霊が近づかないようにしてもらう。
それなのに、伴蔵は幽霊と取引し、魔除けの札を剥がしてお露が新三郎の家に入れるようにしてやり、新三郎はお露に取り殺されてしまう。
恐らく「怪談」で「牡丹灯籠」の部分はこれだけである。
この「怪談」以外にも、伴蔵のその後の悪事の数々の話や、お露の父親である飯島平左衛門が殺した酔っぱらいの息子の孝助が20年後に彼の家に草履取りとして奉公し、主人に心酔して、主人の妾と隣家の次男との不義密通を見つけ、2人が主人を殺そうとしていることを知る。
平左衛門は、孝助の父親の仇が自分であることも、彼が妾ら2人を殺して自分を助けようとしていることも知っていて、わざと彼に殺される。
孝助は、平左衛門の仇を討とうとする旅の途中で生き別れになっていた母親と会い、しかしこの母の継子が平左衛門の妾で、母は継娘を逃がしたものの自害をし、死の間際に継娘の行方を孝助に告げて仇を討たせる。
何というか、怪談ではなくて人情噺である。
これがどうして「怪談」なのか、さっぱり判らない。
また、「怖い話」を期待してしまっていたもので、何だか肩すかしを喰ったような気持ちになってしまった。
無知というのは申し訳ないことである。
八代進一は、性悪だったり、一癖も二癖もありそうな年増の女を演じさせたら絶品である。
どこまでも性悪な平左衛門の妾がリアルに似合っていた。
孝助の新妻のお徳を演じた堀越涼は、実は最初は植本潤かな? と思ったくらいにはじけ方のテンションが高くて驚いた。でも、あまり似すぎないようにした方がいいんじゃないかという風にも思う。
確信は持てないのだけれど、美斉津恵友や各務立基の初舞台を見ているように思う。
その彼らが物語を動かす重要な二枚目を演じているのを見ると、月日がたつのは早いものだと老人のような感想が浮かんでくるのが哀しいような気もする。
このお芝居を目一杯楽しむには、「怪談ではない」と自分に言い聞かせてから見るのがコツのような気がする。
もちろん、落語好きだったり、三遊亭円朝に詳しかったりするなら、あちこちに仕掛けられたあれやこれやをストレートに楽しむことができると思う。
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