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「ちっちゃなエイヨルフ」
作 イプセン
演出 タニノクロウ(庭劇団ペニノ)
出演 勝村政信/とよた真帆/野間口徹/馬渕英俚可
マメ山田/星野亜門・田中冴樹(Wキャスト)
観劇日 2009年2月14日(土曜日)午後1時開演
劇場 あうるすぽっと B列15番
料金 6000円
上演時間 2時間10分
ロビーではパンフレットが販売されていたけれど、開演ギリギリに劇場に着いたのでチェックしそびれてしまった。
そういうわけで、Wキャストの男の子たちのうち、今日出演していたのがどちらだったのかもチェックできないままだったのが心残りである。
ネタバレありの感想は以下に。
国籍不明の空間に、国籍不明の登場人物たちが現れる。
勝村政信演じるアルフレッドとかとよた真帆演じるリタとか、タイトルになっている「エイヨルフ」は彼ら2人の息子だということがじきに判る。
海の見える保養地に3人で暮らしているらしい。
正確にはアルフレッドが病気療養のためなのか旅に出て帰ってきた次の日の朝からこのお話が始まる。
馬渕英俚可演じるアルフレッドの妹のアスタ(と聞こえた。最初はアスカと聞こえていたのだけれど、多分これは聞き間違いだろう)の登場はいかにも不穏な感じである。
最初からリタを睨みつけるように歩いてくる。
見ている間、そういえばバレンタインデーに見ているのだけれど、それにしてはシビアというか皮肉というか、痛い「愛」の物語を選んでしまったなという風に思っていた。
アルフレッドとリタの2人は、最初はいかにも上手く行っている上流階級風の夫婦のように見えたのだけれど、2人の息子のエイヨルフは松葉杖をついており、そして、旅から帰ってきたアルフレッドが「これからはエイヨルフのために生きる」と宣言した直後に海で溺れて死んでしまう。
マメ山田演じる老婆の存在は不気味だし、エイヨルフの死を予言するかのように現れて去っていくのだけれど、さて、この老婆は一体何を「象徴」していたのだろうと考えるとよく判らない。
何を暗示していたのか、どういう存在なのかさっぱりだ。
アスタの母の手紙は何やら意味ありげだったのだけれど、そこにエイヨルフの死が加わり、アルフレッドとアスタの兄妹の様子が何やら怪しくなってくる。
仲が良すぎやしないか?
そういえば、6週間振りに帰ってきたアルフレッドとアスタの抱擁シーンも「兄妹には見えないよなー」と思って見ていたのだった。
アルフレッドは、妹の昔の呼び名である「エイヨルフ」を息子の名前にしているし、異様にアスタを可愛がっているし、頼り切っているし、アスタと結婚した方がよかったんじゃないですかという風に見える。
というか、どんどんそういう雰囲気が強くなる。
アスタが技師との結婚を渋っているのも兄が原因なんじゃないかと思わせる。
要するに、えらく痛い関係の2人なのである。
何でも暴力的に強欲に欲しがるリタと人は変化するものだというアルフレッドの2人よりも、兄妹であるアルフレッドとアスタの方が「痛い」と感じさせるのが不思議でしょうがなかった。
そして、気がつくと、アルフレッドとアスタの2人の方を応援したくなるのである。
でも、アスタは「賢い女」として描かれていて、アルフレッドに自分たちは血が繋がっていないことを告げ、さてこの先結婚する可能性はかなり低そうだと思ったけれど、とりあえず技師と一緒に船に乗ってアルフレッドの元を去る。
やっぱり独りよがりに嘆き悲しんでいたリタは、突然、海辺で暮らす貧しい子ども達を引き取って我が子のように育てると言い始める。
アルフレッドはその彼女に協力を申し出る。
この二人のハッピーエンドなのか、と何だか力が抜けてしまった。
このお芝居全体を通じて、私が感情移入したのはアスタで、それはある意味判りやすく類型的な「変化」を彼女が辿っていたからのような気がする。
最後の変化は唐突だったような気がするけれど、リタのことも何となく判る気もする。
でも、アルフレッドの旅行前後の変化も、エイヨルフの死の前後の変化も、そもそもアルフレッドという男が一体どういう人物だったのか、よく判らなかった。アルフレッドよりも、役者・勝村政信を見てしまっていたように思う。
あとこのお芝居を見ながら「どこかで見たような気がする」とずっと思っていたのだけれど、それはこまつ座&シス・カンパニーが上演した「ロマンス」だった。
兄と妹と兄の奥さんという3人の関係が似ていたように思う。
ちょっと質は違ったけれど、妹の「賢さ」が非常に痛く哀しく見えるところもとてもよく似ていた。
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