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2009.04.05

「蜉蝣峠」を見る

劇団☆新感線 いのうえ歌舞伎☆壊(Punk)「蜉蝣峠」
作 宮藤官九郎
演出 いのうえひでのり
出演 古田新太/堤真一/高岡早紀/勝地涼/木村了
    梶原善/粟根まこと/高田聖子/橋本じゅん/他
観劇日 2009年4月4日(土曜日)午後6時開演
劇場 赤坂ACTシアター D列13番
料金 11000円
上演時間 3時間15分(20分間の休憩あり)

 ロビーではパンフレット(2000円)などが販売されていたのだけれど、あまりの混雑振りに近づくのを躊躇してしまったので、その他、どんなものが販売されていておいくらだったのか、チェックしそびれてしまった。

 しかし、2000円のパンフレットを「お求めやすくなっております」と叫ぶのはどうなのだろう。確かにここ数年の新感線のパンフレットとしては低価格なのかも知れないとは思う。

 ネタバレありの感想は以下に。

 劇団新感線 OFFICIAL WEB SITEはこちら。

 席に着いて驚いたことには、最前列だった。
 赤坂ACTシアターくらいの規模の劇場で、これだけ前方の席でお芝居を見るのは本当に久しぶりだったので、やっぱり舞台に近い席で、オペラグラスなしで表情まで読み取れるくらいのところから観劇すると、迫力が違うと納得した。
 映像を使い、八百屋にし、回り舞台を使い、照明を最大限の効果をもって使う新感線の舞台なので、あぁ、この席で舞台全体を俯瞰してみたい、という贅沢な欲求も生まれた。困ったものである。

 いのうえ歌舞伎なので(なのかどうかは判らないけれど)、物語は江戸時代、歌がバンバン入って来て、踊りも入ってきて、殺陣は縦横無尽だし、とにかく派手な舞台である。
 まさに新感線の真骨頂だ。
 そして、そのせいなのか(どうかは判らないけれど)、何故だか内輪ネタが多い。「劇団員とか客演とかそういう微妙なヒエラルキーは・・・」で始まり、「この格好で2時間半は辛い」と主役が語り、「劇団員だけのダンス、楽しゅうございました」と言ってみたりする。

 物語としては、「謎が謎を呼ぶ」という新感線お得意のパターンである。
 そう書いてから、宮藤官九郎作だったと思い出したのだけれど、印象として「うんうん、新感線はやっぱりこうでなくっちゃ」と感じたのだから仕方がない。
 私の中では「阿修羅城の瞳」に近い位置にある。

 古田新太演じる闇太郎は、蜉蝣峠で待ってろと言われた誰かの声だけを頼りに、ずーっと蜉蝣峠にいる。
 闇太郎には、自分の名前とその「声」以外の記憶はない。
 その男が、峠を下り、「ろまん街」と呼ばれるヤクザの抗争激しい宿場町(なのか?)に降りてきたところから、この物語は動き始める。

 梶原善演じる飯屋をやっている目の見えない老人が、闇太郎の指南役(つまりは、事情を知らない私たち観客の指南役)を買って出る。どうも、闇太郎を知っているらしい。
 高田聖子演じる姉と抗争を繰り広げている堤真一演じる「天晴」という男も、やたらと闇太郎に執心しているようだ。
 高岡早紀演じる泪という女が、「闇ちゃん」と呼びかけたことから、話はまた変な方向に転がり出す。
 といっても、この時点で見ている私には「変な方向」だということは判ってはいない。

 八百屋になった回り舞台を回し、紗のスクリーンや強烈なライトで目くらましをして舞台転換を行う。
 闇太郎と泪の郷里である村の農民達や、宿場のヤクザや女郎達が歌って踊る。
 やっぱり、こうでなくっちゃ、という感じなのだ。
 そして、困ったことに、古田新太も、堤真一も、高田聖子も、やけに色っぽい。そして、特に堤真一は激しく生き生きしていて楽しそうにはっちゃけているように見える。
 高岡早紀は逆に色っぽさを押さえに押さえている感じがある。代わりに彼女を際立たせているのは「声」だ。

 堤真一といえば、最初の登場シーンは何故だか軍鶏の着ぐるみを着込んでサングラスをかけているのだけれど、珍しく関西弁をしゃべっていたこともあって(確か神戸出身だったと思う)、そのときに誰だか判らなかったのは不覚である。

 物語は、「闇太郎は何者なのか」ということと、「25年前にこの宿場街で人々を殺しまくった通り魔は誰か」ということと、いつの間にかその2つの謎に向かって収斂していく。

 古田新太演じる闇太郎は、結局、闇太郎ではなかった。
 泪の村で、一揆を企てていた泪の両親を殺したのは、「これに成功したら武士にしてやる」と言われた天晴と、古田新太演じるところのキュウタロウ(と聞こえた)という父親を亡くしたばかりでお家再興を約束された跡取り息子だった。
 そして、一揆を止めても武士には戻れないと天晴に言われたキュウタロウは宿場に戻り、そこで自分の母親が女郎として売られて自害した姿を見て我を忘れ、そして、その場にいた人々を殺し尽くした。
 本物の闇太郎を匿っていた飯屋の親父は、見えない目でキュウタロウを闇太郎だと勘違いし、「蜉蝣峠に行くんだろう、そこで待っている人がいるんだろう」と言い聞かせる。

 古田新太演じる闇太郎が村と宿場の仇であることを知った村人とヤクザ達は、彼を襲う。
 彼は、泪に「蜉蝣峠で待っていてくれ」と言い、戦い始める。

 そういえば、最初に古田新太演じる闇太郎を闇太郎だと言ったのは泪だったぞ、とか、そうするとこの物語で幼なじみだと勘違いした両親の敵と結婚した泪は悲劇のヒロインではあるけれどそれは自業自得か、とか、夫と弟の間を二股かけまくる姉は一体どうしてそんな風になってしまったのだろう、とか、地獄のような斬り合いが繰り広げられる宿場でそれまで一度も手放さなかった酒の瓶を放り投げて生き生きと戦っていた天晴の目的は何だったのか、とか、ふと我に返ると色々と疑問が浮かんではくる。
 けれど、これだけのスピード感と歌と踊りと勢いと「説得力」で押されてしまうと、もうそれ以上何も考えられず、ひたすら舞台の中に入り込んで次の展開を息を呑んで待つしかなくなってくる。

 今度は逆に蜉蝣峠で待つ立場になった泪は、瀕死でやってきた古田新太演じる闇太郎に気づくことなく、舞台から退場する。
 ここで幕である。

 何だか訳が判らない感想になってしまったけれど、とにかく久々にわーっとお祭り騒ぎを楽しんで、かつ、がーっと頭の中を空っぽにして舞台に入り込める、楽しい3時間強だった。

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