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2009.06.07

「LOVE30 VOL.3」を見る

PARCO PRESENTS「LOVE30 VOL.3」
演出 宮田慶子
音楽 稲本響
「エアコンな夜」
作 横田理恵
出演 鈴木浩介/西田尚美
「ピアノ・レッスン」
作 後藤法子
出演 勝村政信/高岡早紀
「しゃぼん」
作 藤本有紀
出演 松重豊/ともさかりえ
観劇日 2009年6月6日(土曜日)午後3時開演
劇場 パルコ劇場 L列10番
上演時間 1時間30分
料金 7350円

 30分3本勝負、演出家は共通、3人の作家が競作し、出演は男女一人ずつというお芝居である。
 本当に休憩なしでセットの入れ替え込みで90分に収まっていたのには驚いた。
 パンフレット(1200円だったと思うけど、ちゃんとチェックしていない)も少し気になったけれど購入しなかった。

 ネタバレありの感想は以下に。

 パルコ劇場の公式Webサイト内、「LOVE30 VOL.3」のページはこちら。

 30分のお芝居3本を休憩なしで見せるわけだから、当然、セットがそれほど凝ったものになりようはない。
 三角形の大きな高さの違う柱をくるくる回して背景を3種類作った、という感じである。
 場面転換の間は、タイトルの「LOVE30」と書かれた透明の板を下ろして、ある意味半端に目隠しをしていたのだけれど、それがなかなかいい感じだった。

 確か作の3人はそれぞれテレビの脚本家として活躍している女性だったと思う。
 そんなわけで、ワンシチュエーション30分で30代の女の話、というお題はある意味得意分野だったのではなかろうか。3本とも手堅くまとまっている感じである。
 逆に言うと、まとまり過ぎていて、なんだかやっぱりどこかテレビっぽいわ、という気もしたのだけれど、これは私のうがち過ぎかもしれない。

 3本の中では、「エアコンな夜」が一番好きだった。
 こういう書き方はどうかと思うけれど、主演のお二人が一番普通な感じで、そこに親近感が持てる。ある意味、このシチュエーションなら私にも同じようなことが起こっても不思議はない、という感じがする。
 大学のときの友達の彼氏がエアコンの修理担当者として一人暮らしのマンションに現れるというのは、私にとっては実際のところはかなり遠いシチュエーションではあるけれど、感想は感想である。

 でも、やっぱりこの2人が一番近しい感じがした。
 西田尚美演じる「一人でつっぱらがってがんばっているでも疲れている女」という感じもいいのだけれど、ツボだったのは、鈴木浩介演じる男が、大学時代のダブルデートでお互いの彼氏彼女が来られなくなり、2人で取り残されて、さらに男にも帰られてしまった女が今更文句をつけたのに対する、このやりとりである(ちなみに、台詞はかなり適当だけれど、趣旨は合っている筈だ)。
男「だって、彼女の友達とどうにかなったらまずいでしょ」
女「どうにかなんて絶対にならない自信がある」
男「俺にはなかった」
 一瞬、黙りこくった女に対して、
男「なんて言ったらどんな顔になるのか見たかっただけ」

 さて、第2話はいきなり雰囲気が一変する。
 高架下のピアノ教室にやってきた、同じく高架下のクラブに勤めるホステスが「明日のお得意様の結婚式で絶対にオーバー・ザ・レインボウを弾きたい」と言い出すところから始まる。
 コンクール万年3位のピアノ教師は、そんなことはできないという。

 勝村政信演じるピアノ教師がオーバー・ザ・レインボウを弾きたくないのは、自分が3位だったコンクールで1位を取った彼女を祝福できなかったから別れた、その彼女が好きだった曲だからだし、高岡早紀演じるホステスが弾けもしないピアノを弾いてあげると言ったのはその新郎は自分と花嫁と二股かけていたのだと知ったからだ。

 いちゃいちゃさせたら天下一品の勝村政信が、こういう偏屈な男もまたやけにはまって見せるのが格好いい。高岡早紀がはまり役なのは言うまでもない。
 自分のピアノを聴いて泣いたと彼女にいわれ、果たしてこのピアノ教師がこの後どうするのか、気になるところである。

 そして第3話は、地方の床屋さんが舞台である。
 結婚前に里帰りした近所の女の子と、その女の子を小さな頃から知っている床屋の2代目とのやりとりが、最初はよく判らない。
 30歳になったばかりの都会で編集者をやっている女があきらちゃんで、その子を小さい頃から知っている床屋の2代目がかおるさんなのも、何となく可笑しい。
 そして、この配役に、やっぱりともさかりえと松重豊は異様にはまっているのである。

 彼女が20歳の成人式のときにもやはり顔を当たってもらっていて、今回も嫁入り前で顔を当たってもらいに来ている。
 成人式のときには、男は手元を狂わせて彼女の耳に傷をつけてしまったらしい。
 でも、もう大丈夫、と。

 その20歳のときの失敗が、実は単純に「手元が狂った」のではなく、女が抱きついてキスしたために起こったことだと判るあたりから緊迫感が漂い始める。
 16歳の年の差というのは、こういうときには便利だし不便である。
 彼女が9歳のときに男は結婚し、彼女は男を結婚式に行かせたくなくて無理矢理しゃぼん玉の液を飲む。
 彼女が20歳のとき、男にキスしたのを鏡の向こうで彼の妻が見ていたことを彼女は知っている。
 そして、彼女が30歳の今、男の妻は数年前に出て行ってしまっている。彼女は恋も仕事も失敗して行き詰まっている。

 この最後のお芝居を見て思ったのは、「帰れる場所があるっていいね」ということだった。

 30代も幅広いし、いろいろな女がいるし、その女に絡む男もいろいろである。
 ある意味ドラマになりやすいし、でも、なかなかこんな「都合のいい」ドラマが起こらないから、テレビでも演劇でもこうした「ドラマ」が提供されるんだろうと思う。
 そして、でもこれはちょっとやっぱり安易なんじゃないかという気がするのだった。
 最後まで結構面白く、結構ハラハラしながら見ていておいて言うのも何なのだけれど、何だかちょっと違う気がやっぱりしたのだった。

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コメント

 逆巻く風さま、初めまして&コメントありがとうございます。

 「先日一人で」とわざわざ断られていらっしゃるのは、どなたかとご覧になることが多いのでしょうか。
 私はたいてい一人で見に行ってしまうので、そんなことが気になったり(笑)。

 あまりピンと来なかった、という感じだったのでしょうか。

 いくつかコメントをいただきありがとうございます。
 こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします。

投稿: 姫林檎 | 2009.06.23 20:19

先日一人で観てきたけど・・・う~ん、どうかな?
まあ、ちょっとした”暇つぶし”的にはいいかも。
可もなし不可もなしってとこでしょうか。

そんなわけで、初めまして。(順序が逆だって!)
しばらくお邪魔するかもしれません。

投稿: 逆巻く風 | 2009.06.23 14:59

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