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「サンデー・イン・ザ・パーク・ウィズ・ジョージ」
作曲・作詞 スティーヴン・ソンドハイム
台本 ジェームス・ラパイン
演出 宮本亜門
出演 石丸幹二/戸田恵子/諏訪マリー/山路和弘
春風ひとみ/畠中洋/野仲イサオ/花山佳子
鈴木蘭々/冨平安希子/岸祐二/石井一彰
南智子/岡田誠/堂ノ脇恭子/ほか
観劇日 2009年7月11日(土曜日)午後7時開演
劇場 パルコ劇場 D列18番
料金 10000円
上演時間 2時間40分(15分の休憩あり)
ロビーでは、パンフレット(1500円)、ポスター(500円)などが販売されていた。
ネタバレありの感想は以下に。
つまらないことに拘るようなのだけれど、フランスが舞台でフランス人が登場しているのであれば、やっぱり、ここは「ジョージ」じゃなくて「ジョルジュ」ではなかろうか。
そうすると、タイトルは「サンデー・イン・ザ・パーク・ウィズ・ジョルジュ」になって何か変な感じもするけれど、そこは日本語タイトルをつければ解決する。
ジョルジュ・スーラを扱った(あるいは登場させた)お芝居というと、同じパルコ劇場で上演された三谷幸喜の「コンフィダント・絆」を思い浮かべてしまい、つい比べてしまう。
お芝居とミュージカルということで、形が違うし、「ジョルジュ・スーラ」という人の立ち位置ももちろん異なっているわけで、違う作品だし、スーラの印象がえらく違っていてもそれは当然なのだけれど、気になるものは気になるのである。
一番素直に見られなかったなと思ったのは、「ジョルジュ・スーラは若くして亡くなったときに結婚していた」ということを知っていたせいで(それは、別に「コンフィダント・絆」を見ていなくても普通に知りうる知識なのだけれど)、ジョルジュ(この際、こっちで書こうと思う)と、ドット(と聞こえたけれど違ったかも知れない)の2人の恋愛は上手く行って結婚するのだろうと最初から思い込んでしまったところである。
それを抜きにしても、このミュージカルは、石丸幹二演じるジョルジュと戸田恵子演じるドットとの恋愛もののミュージカルなんだなという印象は強かったので、やっぱり、ハッピーエンド好きの私としては「この2人は最後には上手く行く」と思い込んだかも知れない。
舞台は、白一色で、奥に向かって壁を低くして行くことで実際よりも奥行きを出している、と思う。
「彦馬が行く」のときだったか、最後の記念写真のシーンで、パルコ劇場は奥行きがないので舞台袖の方に役者さん達が並び、それを鏡に映して舞台奥にいるように見せかけたという話を聞いたことがあるので、あの舞台の奥行きがある感じは演出だったと思う。
両脇の白い壁はところどころ扉が切られていて、その蝶番が少し邪魔な感じである。なんと言うか、もっと平面というかなめらかというか、つなぎ目が見えない感じにできればよかったのにな、と余計なことを考えてしまう。
八百屋になっている(たと思う)舞台の床面も白で、そこにスクリーンでこの作品の舞台でもありモチーフでもある「グランド・ジャット島の日曜日の午後」の絵が映しだされる。
戸田恵子が超絶技巧を駆使して早口かつ息継ぎなしでジョルジュに対する心情を歌い上げていたけれど、そういえば、このミュージカル全体を通して、歌の印象が薄いのは何故なんだろう。
どちらかといえば、台詞劇の印象の方が強いくらいである。
毎週日曜日、その公園に通い、ジョルジュは絵を描き続ける。
ドットは、ジョルジュが絵だけに夢中で、ジョルジュから言い出したお出かけの約束すらあっさりと「今は帽子を描きたいんだ」と反故にするような「自分を見てくれなさ」に愛想を尽かして出て行ってしまう。
ドットは、新しい恋人のルイと公園を訪れるけれど、お互い意識しているのがバレバレなのに、2人とも素直になれない。
恋人同士の片割れがジョルジュ・スーラだということを除けば、こう言っては何だけれど、ありふれた恋愛の風景である。
でも、私の予想は大きく外れて、ドットはジョルジュの子供がお腹にいるのにルイとの結婚と、合衆国に渡ることを決める。
えー! と思う。
話の大部分が「ありふれた恋愛」だったせいなのか、帰り道に口ずさみたくなるようなナンバーがないせいなのか、何だか前半は冗長に感じられる。
恐らくは「それぞれが無関係の人々」が集っていたのだろう「グランド・ジャット島の日曜日の午後」の登場人物達(の一部)を、無理矢理に(と感じられる)一つの物語に押し込めようとし、関係性があるように作り込んだ結果、ジョルジュのいう「ハーモニー」というよりは、「詰め込み」と感じられてしまった。
一幕の最後、ドットが合衆国に去った後、ジョルジュの死が示されて(もちろん臨終のシーンなどはない)、背景の映像と役者産達によって「グランド・ジャット島の日曜日の午後」が舞台上に描かれ、休憩に入る。
そういえば、休憩に入ったときには「もうジョルジュはいないのに、あとの55分はどうするんだろう」とは思わなかったのだけれど、二幕の最初に、ジョルジュを演じていた石丸幹二がTシャツにGパンで登場したときには驚いた。
スタンドマイクを持って来て、何かの司会をしていることは判るのだけれど、何が始まるのかと客席がざわざわっとする。
幕間の余興でも始まるのかと思った人も多かった筈である(少なくとも、私はそう思った)。
それは、(もちろん)お芝居の続きで、舞台はジョルジュのひ孫の世代に移っていたのである。
こんなのありか?
石丸幹二はジョルジュのひ孫のジョージであり、戸田恵子はジョルジュの娘(ドットの娘でもある)のマリーである。
ジョージはジョルジュの「グランド・ジャット島の日曜日の午後」をモチーフにした、映像と音楽を融合した作品(なんだと思う)を発表している。
その披露パーティーで、ジョージは「芸術には発表の場が必要なんだ、人脈を作れ、我慢しろ」と歌いまくる。
ものすごく大胆かつ失礼なことを書いてしまうのだけれど、この二幕は必要だったんだろうか。
どちらかというと、ジョルジュが生きていた時代をもう少し書き込んで、「ジョルジュとドットの物語」にした方が、この中途半端感のない、それこそジョルジュ・スーラの点描のように「とことん書き込まれた」物語になったんじゃないかという風に思ってしまった。
それでは、全然新しくないし、予定調和的で面白くない、のかも知れないとも思うけれど、好みとしてはずっとジョルジュ・スーラの時代を描いてあった方が好きだったなと思うのであった。
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コメント
逆巻く風さま、コメントありがとうございました。
「テイクフライト」は見ています。
宮本亜門演出作品だったことはすっかり忘れていました(笑)。
私は、どうも、どちらかというとアンサンブルが力を発揮してこそ、というミュージカルが好きみたいだと改めて感じました。
宮本亜門演出は頭で感じる、というのは、何となく納得です。
そういうことだったんですね。
私はその昔、高校のときの倫理の先生に「おまえは心じゃなく頭で理解する人間だから、今日の授業は全く判らなかったと思う」とお墨付き(?)をいただいたことがあるのですが、寄る年波には勝てず、頭で理解できなくなったらしいです・・・。
残念ながら、私は「異人たちとの夏」「ダンス・オブ・ヴァンパイア」は見ていません。
投稿: 姫林檎 | 2009.07.27 23:12
昨日観てきました。感想は、生意気な言い方をすれば、良くも悪くも宮本亜門さんの作品だなー、です。宮本さんのって、心で感じる・・・というよりは頭で感じる方ですね。そちらで感じられる人には面白かったんでしょうが・・・。
宮本亜門さんのは自分的には結構多く観ています。中ではラサール石井、天海裕希さんの「テイク・フライト」が良かったかな?観られましたか?
さてさて本作品は・・・。昼食時にアルコールを摂ったせいか何しろ眠かった~。隣の席の人に(連れですが)10回くらい小突かれました。そういう本人も何回かこっくりをしていたとか(苦笑)
第1幕のラストはなんか良かったですよねー。そしてそれで終わりかと思ったら第2幕があって。さすがに第2幕は大丈夫だと思ったんですが、目は開けているいるものの頭は眠っていたようで、ほとんど内容はわかりませんでした。姫林檎さんのを読んで、あー、こういう内容だったんだー、と理解した次第です。
今回はこれを含めて、「異人たちとの夏」「ダンス・オブ・ヴァンパイア」と3本も観てしまいました。やっぱり「ダンス・オブ~」が一番良かったかなあ?内容は置いておきまして、迫力がすごかったです。しかも2列目の中央でしたから。
姫林檎さんは観られましたか?
投稿: 逆巻く風 | 2009.07.27 10:10