「スペリング・ビー」を見る
ブロードウェイ・ミュージカル「スペリング・ビー」
出演 藤井隆/新妻聖子/梶原善
高田聖子/坂元健児/風花舞
安寿ミラ/今井清隆/村井国夫
観劇日 2009年7月25日(土曜日)午後1時開演
劇場 天王洲銀河劇場 J列14番
上演時間 2時間15分(15分の休憩あり)
料金 9500円
ロビーでは、パンフレット(2000円)や、出演者のCDなどの他、このリピータ用チケットが4000円で販売されていて、ちょっとそれは・・・、とこっそり思ったりしていた。
また、開場時間から15分間、スペリングコンテストへの出場者を募集しているようだ。私は開場時間をだいぶ過ぎてから到着したので、この出場者募集が盛況だったのか、なかなか人が集まらなくて困っているのかはよく判らなかった。
参加者の写真がロビーの柱に貼ってあった。
ネタバレありの感想は以下に。
舞台は、アメリカ合衆国のどこかの街の(何の根拠もないけれど、体育館が会場になっていることからして田舎町なのではないかと推測する)スペリングコンテストの会場である。
舞台の始まりは、そのままスペリングコンテストの始まりであるというところが、ちょっと戸惑いはするけれども楽しい。
藤井隆・新妻聖子・梶原善・高田聖子・坂元健児・風花舞の6人がスペリングコンテストに出場している14歳以下の子どもであるという設定も楽しい、と思う。ちょっと無理はあるけれども。
安寿ミラ演じる司会者(過去の優勝者らしい)、村井国夫演じる出題を担当する副校長、今井清隆演じる「失格者を慰める人」という大人3人が、さくさくと場を進めて行く。
それにしても、今井清隆は、最初の登場がサングラス付きだったせいもあって、休憩時間にロビーでポスターを見るまで誰が演じているのか全く判らなかった。こんながっしりした、外国人っぽい感じになる俳優さんだったろうか。
そもそも、特に子どもを演じた6人の役者さんは、意外と(というのも失礼だけれど)違和感なく「外国人」を演じていたように思う。金髪とか、それっぽい服装とか、あまり気にならなかった。
まあ、「子どもを演じている」というところで違和感を出し尽くしていたせいかもしれない。
スペリングコンテストというのは、私の中では合衆国では割と普通のというのか、リトルリーグの野球大会くらいにメジャーで出場希望者も多いイベントなのかと思っていたら、どうも違うらしい。
スペリングコンテスト出場者はみな、周りから「少し変わり者」と思われている、という設定が意外だった。
そして、開演前にエントリーした4人の観客もゼッケンをもらい、舞台に上がって「スペリングコンテスト」の出場者となる。
これって、ずっと続いているこのミュージカルの演出なのかしら、それとも、チケットの売れ行きがあまりよくなさそうだし、てこ入れで編み出された荒技なのかしら、と失礼なことを考えてしまった。
観客にも実際にスペルを答えさせていて、唯一の男性をのっけから「シュワルツネッガーと綴れ」と言って退場させたり、中学生くらいの女の子に「PK」なんていう問題を出すよう言ってみたり、ある程度の調整はできるのだろうけれど、それにしても、結構アドリブ満載な、出題者の村井国夫頼みの進行になるんじゃないかという意味で、ちょっとハラハラした。
もちろん、子ども達に順番にスペリングを言わせているだけで場が持つはずもなく、歌も踊りも挟まれる。そこは出演者達が一人一人について、振りをつけたり、そのままそこにいてと指示したり、その辺もアドリブ満載のように見受けられた。
かなり、チャレンジングである。
アドリブといえば、高田聖子が、自分の番になってスペルを言おうとすると、出場者の新妻聖子のところに携帯電話がかかってきて、というシーンがあった。
司会者の安寿ミラがその電話に出るのだけれど、その間、高田聖子はマイクジャックをして、「高田聖子」を宣伝しまくる。「42歳で、7歳の子どもをがんばって演じているなんてことは、wikiには書いていない」なんて言っている。
こういう感じのアドリブというのか、「出演者いじり」は随所にあって、スペリングの出題として「袴」なんて出したときに(ローマ字だろう、それは! という突っ込みはどこからも入らなかった)、村井国夫が例文として「宝塚の卒業式では袴が着用される」なんて読み上げ、「知ってる?」と尋ねられた安寿ミラが「当然」と答えたりしていた。
スペリングコンテストを続けて行くうちに、観客出場者は軒並み敗退し、ここに出場している子ども達の「事情」が明らかになっていき、「問題」も浮き彫りにされていくというストーリーである。
「コーラスライン」っぽいのかも知れない。
しかし、ミュージカル俳優を目指すというのは、恐らく、スペリングコンテストの全国大会を目指すことよりもメジャーな夢で、そういう意味では、こちらの子ども達の方が性格に一ひねりも二ひねりもあるということになるんだろう。
「サンデー・イン・ザ・パーク・ウィズ・ジョージ」のときも思ったのだけれど、このミュージカルも、私的には「帰り道で思わず口ずさんでしまう」というナンバーがなかったのが残念だった。
歌唱力ということになると、やはり、新妻聖子と坂元健児の2人が印象に残る。子どもを演じつつ、いかにもミュージカルの感じで歌い上げるのを聴いていると、やはり頭一つ抜けている、という感じがする。
そうなると、意外に身軽く動いていたけれど、藤井隆の主演というのは、少し辛かったかも知れない。「ちょっと嫌味な小学生」という役を見事に演じていたけれど、歌唱の迫力で押すという感じではないし、高田聖子や梶原善のように「性格」で押すというところまでは振れていない。
さて、誰が勝のだろうと思っていたら、真っ先に失格したのは昨年優勝したという坂本健児で、優勝したのは藤井隆だった。
新妻聖子演じるオリーブを応援していたのだけれど。
何だかんだ言いつつ、ハーモニーが綺麗だったし、オーケストラボックスを作れず(作らず?)に舞台上で演奏されていた音楽もいい感じで、そういえば、意外とダンスのシーンが少なかったような印象だけれど(何というか、みんなで一緒に同じ振り付けを踊るようなダンスシーンは少なかったと思う)、なかなか楽しいミュージカルだった。
もうちょっと「ひねり」をオーバーにするか、「ひねり」を無視して娯楽路線一直線にしても、楽しかったかも知れないとも思う。
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