「マクベス」を見る
「マクベス」子どものためのシェイクスピア15th
作 ウィリアム・シェイクスピア
翻訳 小田島雄志
脚本・演出・出演 山崎清介
出演 石田圭祐/伊沢磨紀/彩乃木崇之/戸谷昌弘
キム・テイ/若松力/窪田壮史
観劇日 2009年7月18日(土曜日)午後2時開演(初日)
劇場 紀伊國屋サザンシアター 3列10番
料金 4800円
初日だったせいか、これまで子どものためのシェイクスピア・カンパニーに出演されたことのある、土屋良太や佐藤誓の姿をロビーで見かけた。
佐藤誓なんて、てっきり出演しているものと勘違いし、幕間の休憩にロビーにこんな普通の格好で出てきていいのか? などという間抜けな疑問が頭の中を飛び交ってしまった。
ロビーでは、パンフレット(900円)や、シェイクスピア人形のストラップ(700円)、Tシャツ(2500円)などが販売されていた。
ネタバレありの感想は以下に。
席番号は「3列10番」だったけれど、行ってみたら最前列で、本当に舞台の前方ぎりぎりまで出てきて演技したり、目の前の通路を役者さんが歩いたりしていた。
最前列でも見上げるような感じにならないのがサザンシアターのいいところである。
足下に荷物を置いたりしていなくてよかったと安堵したのだった。
ところで、ネタバレといっても、シェイクスピアの「マクベス」にネタバレなどと言う言葉が適用されるとも思えない。
3人の魔女が「きれいはきたない、きたないはきれい」と呪文を唱える(?)のが多いと思うけれど、今回の舞台では「いいは悪い、悪いはいい」と言っていたような気がする、というくらいである。
そういえば、この3人の魔女が必見かも。
魔女というよりはキョンシーという感じだし、このお芝居に女優は2人しか出演していない。
このカンパニーでは、開演の15分くらい前(20分くらい前かも)に、出演者一同が舞台上に黄色のヘルメット姿で登場し、「イエローヘルメッツ」のグループ名で1曲披露してくれる。
今回は「夏のクラクション」だった。
ずっと前に、俳優さんの誰かが歌っていたのを聴いたような気がするのだけれど、ここ数年は、全員口パクのような気がする。それがちょっと残念。
口パクで思わせぶりに歌い、コーラスされ、踊っているのも、それはそれで楽しいのだけれど。
マクベスが石田圭祐でマクベス夫人が伊沢磨紀というのは、なかなか順当な組み合わせという感じだ。
キム・テイが演じていたのがほとんど「少年」だったので、久しぶりに伊沢磨紀の女優が全開である。もっとも、彼女は、マクベス夫人と同時にマグダフまで演じていて、どうしてこの2人を同一人物が演じることができるのか、よっぽど脚本段階から緻密に練り上げたんだなという感じがする。
マクベスを見ていて、ほぼ毎回思うのは、どうしてマクベス夫人の方がマクベスよりも先に死んでしまうのだろうということである。
今回、物語を端折った(と思う)から余計にそう感じたのだろうけれど、そもそも、ダンカン王を殺そうとやたらと積極的に夫をけしかけたのはマクベス夫人である。
王を殺したときに積極的にその偽装工作を行ったのもマクベス夫人である。
眠れなくなってバンクォーの亡霊まで見るようになったマクベス「王」を叱咤激励し、その狂乱ぶりを家臣たちに不審がられないよう押さえつけたのもマクベス夫人である。
そのマクベス夫人が、いきなり心を失くすようになるのは何故なのか、よく判らない。
あれだけ気丈な女が幻想の世界をさまよい始めるには、それなりのきっかけがあっただろうと思うのに、そこを描いたマクベスをまだ見たことがないように思う。
おそらくは台本にそんなことは書かれていないのだろう。
これは今回の「マクベス」を見て思ったのだけれど、バンクォーは、確か3人の魔女に「王を生み出す」と言われていたと思ったし、確かバンクォーの息子がスコットランドを開放して王位に就くという話だったように思ったのだけれど、違っただろうか。
今回、ダンカン王の息子であるマルカムが王位に就いたところで物語が終わっていた。
おーい、バンクォーの息子はどこへ行ったんだー、と思ってしまった。
マクベスを演じた石田圭祐以外は、全員、黒衣だけでなく何役もをかわるがわる演じている。
そのせいもあるのか、非常に「緻密」な舞台であるという印象だった。
中高生(だと思われる)がたくさん客席に来ていたのは珍しい感じ。
私の印象だと「子どものための」と銘打ちつつも、大人の観客が多いし、大人の鑑賞にこそ耐えられるという感じなので、ちょっと意外だった。
やはり、子どものためのシェイクスピアシリーズは面白い。
どちらかというと、今まで全く知らなかったシェイクスピア作品を見たときの方が面白さが大きかったような気がする。
興行的な理由もあって、シェイクスピアの超有名作品と比較的マイナーな作品を交互に上演しているということだったけれど、だとすると来年はマイナーな作品を見ることができるだろうか。
それが楽しみである。
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コメント
逆巻く風さま、コメントありがとうございます。
確かに私も「古典」といわれるものが苦手で、シェイクスピア劇もほとんど見たことはありませんが、でも「子どものためのシェイクスピア」シリーズは大好きで、ここ数年は毎年必ず見ています。
おすすめです。
ところで、「メタル・マクベス」は見ていますよ。
いのうえひでのり演出作品も好きなので(笑)。
逆巻く風さんは、松たか子さんのファンだったりしますか?
カリギュラは、多分、シェイクスピアではなかったと思います。
ローマ帝国の皇帝のお話ですし。
こちらは、小栗旬主演ということもあって、チケット争奪戦が激しく、見ることはできませんでした。ちょっと残念に思っています。
投稿: 姫林檎 | 2009.07.20 20:32
こんばんは。
以前は舞台といえばシェークスピア、シェークスピアといえば舞台という印象があったんですが、シェークスピアものってほとんど観たことがありません。 < って自慢できることではないですね。
そういえばテレビで「子供のためのシェークスピア」は見たことがあります。ちょっと面白かったです。やっぱりこれは”子供のため”というより”大人のため”の劇という感想でした。
本・・・というか戯曲を興味を持って読んだりしたんですが、結局政権闘争じゃん!という感じで、あまりシェークスピアものは積極的に観たいとも思いませんね~。
ところで「カリギュラ」はシェークスピアでしたっけ?いつだったかBSで放送していて(蜷川さんのでした)、その迫力に圧倒された覚えがあります。
ある役者さんのFC(ファンクラブ)に入っていて、「メタル・マクベス」は観たことがあります。それも東京ではなくこちらの劇場でした。姫林檎さんはそんなのは観ないでしょうね?
投稿: 逆巻く風 | 2009.07.19 21:48