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2009.08.09

「リボルバー」を見る

劇団M.O.P. 第44回公演「リボルバー」
作・演出 マキノノゾミ
出演 キムラ緑子/三上市朗/小市慢太郎/林英世
    酒井高陽/木下政治/奥田達士/勝平ともこ
    白木三保/岡村宏懇/友久航/永滝元太郎
    美輝明希(竹山あけ美改め)/神農直隆
    北村有起哉/岡田達也(演劇集団キャラメルボックス)
    片岡正二郎
観劇日 2009年8月8日(土曜日)午後7時開演
劇場 紀伊國屋ホール G列8番
上演時間 2時間30分(10分間の休憩あり)
料金 5500円

 劇団M.O.P.の公演もあと2公演となった。
 ロビーでは、パンフレット(500円)、上演台本(1200円)、Tシャツなどの他、過去公演のDVD、過去公演のポスターや上演台本などが販売されていた。
 ラスト2公演になったので、大盤振る舞い(だったか、閉店セールだったか)なのだそうだ。

 「リボルバー」のDVD予約も受け付けていて、「あと40本くらいでとんとんになる」とカーテンコールでマキノノゾミが言っていたのがおかしかった。

 おかしかったと言えば、トリプルコールでマキノノゾミが一人で出てきて、「このおっさん誰だと思った方は、パンフレットを買っていただければ正体がわかります」と宣伝していたのも可笑しかった。

 トリプルコールに役者さん達が出てこなかったのは、物販に回る人がいたからのようだ。DVD予約は、小市慢太郎と岡田達也が担当していた。

 ネタバレありの感想は以下に。

 劇団M.O.P.の公式Webサイトはこちら。

 劇団M.O.P. は、無料で役名と役者名が載ったフライヤーを配ってくれるところがいいと思う。
 そのフライヤーによると、この「リボルバー」という作品は、マキノノゾミが18年前に書いた「ピスケン(多分、ピストルと拳銃の略なのではないかと推察される)というお芝居のリメイクなのだそうだ。
 「ピスケン」は大正の終わり頃の話で、「リボルバー」は明治の初め頃の話だそうだ。

 劇団のホームページを見てみたら、「ピスケン」は第19回公演で上演されていて、役名の中には、大杉栄、萩原朔太郎、伊藤野枝、野口英世、甘粕正彦らの名前が挙がっている。
 これはこれで、見てみたい。

 それはともかくとして、このお芝居に桂小五郎が出てきた辺りから、「そりゃあ、リメイクとはいっても前作と違うお話になっても無理はあるまい」と思ってしまった。
 今と20年前と、お芝居の時代設定を変えてもそれほどお芝居の中身を変える必要は出てこないと思われるけれど、明治の初めと大正の終わりでは、「60年」という差以上の違いがあった筈である。

 そういうわけで、時代は明治初期、「地方官会議」が開催された1868年に物語は始まり、木戸孝允が亡くなった1877年に物語は終わる(と思う)。
 足かけ10年に渡る物語なのだけれど、どうもその時の流れが判りにくいのが時々ちょっと気になった。
 暗転しても舞台セットはほとんど変わらなかったから、暗転が「長い時が過ぎだ」ことを表していたと思うのだけれど、何年くらい過ぎたとかが判らない。
 判らなくても支障はないのだけれど、「あれ? さっきから随分と時がたっていたのね」と思うことが何度かあった。

 そして、舞台は常に横浜のホテル青猫亭である。
 かなり立派な西洋式のホテルで、ロビーは吹き抜けになっていたりする。高そうなウィスキーも揃っている。
 そこの女主人がキムラ緑子演じるお篠である。
 これが、綺麗で色っぽく、気っぷのいいいい女なのである。
 もしかして、劇団M.O.P.のお芝居の基本形は、キムラ緑子演じる女を、三上市朗と小市慢太郎が演じる男2人が取り合う物語なんじゃないかと思ったくらいだ。

 そういうわけで、今回も、篠は三上市朗演じる元会津藩士の日向と暮らしていて、18歳の頃には小市慢太郎演じる木戸孝允に惚れていた、ということになる。
 篠は木戸孝允の援助でこのホテル青猫亭を建て、女将となっている。
 木戸孝允は時々やってきては泊まって行く。

 そこに、坂本龍馬が持っていた拳銃を何故か持っている男(北村有起哉という俳優はどうしてこう無鉄砲で粗暴で志がなさそうな男を演じさせるとハマるのだろう。どうもご本人は気のよさそうな方に見受けられるのだが)がピストル強盗に現れたり、中江兆民に心酔して自由民権運動に取り組んでいる岡田達也演じる佐伯新太郎(岡田達也という俳優は、どうしてこう端正そうな人の良さそうな人物を演じるとハマるのだろう。地であるという印象もないし、地とは正反対という印象もないのだけれど)が現れて議長をやった当人だとは知らずに木戸孝允に地方官会議について議論をふっかけようとしたりする。
 この対照的な2人の関係の変化も、このお芝居の見どころだと思う。
 もっとも、佐伯は常に終始一貫して穏やかで端正な人物で、少しずつ少しずつ守上という男を感化していく課程だと言った方が正しいかも知れない。

 そうして、木戸孝允に連れられてきた勝平ともこ演じる女が実は坂本龍馬の妻であるお竜だったり、その木戸孝允の妻が夫を捜しに現れたり、いかにも「時代」な出来事が次々と起こってゆく。
 でも、何故か印象に残ったのは、青猫亭で下働きのようなことをしている元武家の妻たちが、実は外国人相手に春を売っている、という設定だった。
 しかしその商売も警察からストップがかけられ、青猫亭で稼げなくなった女は「麦湯屋」で稼ごうとし、そこでまた警察に捕まったり、その姿を死んだと思い込んでいた夫に見られ、篠の仲介で話をしていたところ、篠が席を外した隙に2人は無理心中をはかってしまう。
 何だか、このキクエ夫婦の話が一番印象に残った。

 もう一つ印象に残ったのは、西南戦争勃発を止められないと思った木戸孝允が、参議を辞してアメリカに逃げ出す、そのときに一緒についてきて欲しいと篠に頼み、篠は「これが自分の惚れた男かと思うと情けない。それが青雲の志というものか」と断り、なじる。
 この篠の言葉が、最後まで明治政府のことを考え続け、「辞めたい」という言葉を言わなくさせたのだ、という林英世演じる木戸孝允の妻である松が言っていたのが、また何ともいい感じだった。
 松は元々、木戸孝允と篠の間を疑ってホテルにまで乗り込んできたりしていたのだから、その変化がやっぱり印象に残ったのである。

 青猫亭の「商売」の話から、篠が昔、外国人の愛妾となっていたことも明かされ、実はそれが木戸孝允の頼みによるものだったということが明かされ、その役を引き受けたのは篠も父親が島送りになってしまって生活に困っていたからだということが明かされ、その父親が実はホテルの番頭のように働いている鉄五郎だったということが最後の最後に明かされる。
 日向は「何だかそんな気がしていたよ」とあっさり言っていたけれど、そんなことは夢にも思わなかった私はかなりびっくりした。

 佐伯は獄中で亡くなり、守上は逮捕された佐伯が置いていった中江兆民訳の「民約論」を読んで中江兆民の塾に参加しようと出て行き、お竜は何故だか西村巡査と所帯を持ち、日向はばっと歌いに参加しようと出て行き、鉄五郎は亡くなり、青猫亭は休業する。
 そして、最後に残った篠とタヅと木下政治演じる車屋の政吉と3人で記念写真を撮る。
 そこで幕である。

 この記念写真に守上は実際に多分青猫亭に戻ってきて後から加わるのだけれど、それから後に加わっていく人々はみな「いなくなってしまった」人なので、もしかすると生死不明で音信不通の日向も死んでしまったのかも知れない、と思わせるところが悲しい。
 日向には生きて戻ってきて欲しかったのだけれど。

 劇団M.O.P. らしい、作り込まれたウエルメイドな(意味、一緒かも)一幕ものの濃いお芝居だった。
 あと1公演で劇団を解散してしまうなど、寂しくて仕方がない。もっとたくさんのお芝居をこの劇団で見たい。
 最後に必ずビッグバンド風に演奏がされるのも、キムラ緑子が歌うのも、楽しい。
 私は今回初めて気がついたのだけれど、この演奏にマキノノゾミも参加していた。毎回、参加していただろうか。

 あっという間で、話のなりゆきが気になって気になって、楽しく見ることができた。
 空席が目立ったのが本当に勿体ない。
 これぞ劇団のお芝居。
 お勧めである。

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コメント

 サニー様、お久しぶりです&コメントありがとうございます。

 「リボルバー」ご覧になりましたか!
 同好の士がいてくださって、嬉しいです。
 面白かったですよね。
 来年の最終公演が楽しみなようでもあり、来ないで欲しいような気持ちもあり、本当に複雑です。

投稿: 姫林檎 | 2009.08.09 23:29

姫林檎さん、こんばんは。
久しぶりにコメントさせて頂きます。

「リボルバー」私も観ました!!
客演のお二人もいい味出してましたよね。
劇団M.O.Pの舞台大好きです。
来年で解散なんて、ホント残念ですね。。。

投稿: サニー | 2009.08.09 21:34

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