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2009.08.02

「お祝い」を見る

15周年記念公演第二弾「お祝い」
作・演出・出演 わかぎゑふ
出演 コング桑田/朝深大介/野田晋市/千田訓子
    上田宏/谷川未佳/祖父江伸如/福井千夏
    小末春奈/山下明里/美津乃あわ/桂憲一(花組芝居)
    中川浩三(Zsystem)/泉しずか(新生松竹新喜劇)
    出口ルナ(新生松竹新喜劇)/森崎正弘(MousePiece-ree)
    伊藤えりこ(Aripe)
日替わりゲスト 武藤陶子
観劇日 2009年8月1日(土曜日)午後3時開演
劇場 全労済スペースゼロ 8列23番
上演時間 2時間15分
料金 4500円

 ずいぶんと空席が多いように見えたのがとても残念だった。面白いお芝居なのに勿体ない。

 しかし、だからといって、一番出入り口に近い端の席とはいえ、明らかに劇場のスタッフと判る人がかなり前方の席でお芝居を観るというのはどうなんだろう。それというのも、目の前の席に座られて、ちょっと舞台が見にくくなってしまったので、余計にムッとしてしまった。
 後方の席が空いていたのだから、せめてそちらに座ることはできなかったんだろうか。

 ロビーでは、パンフレットの他、過去公演のDVDや、手ぬぐい、Tシャツなどが販売されていたけれど、今回は珍しくパンフレットを購入しなかったのでお値段のチェックはしなかった。

 ネタバレありの感想は以下に。

 玉造小劇店の公式Webサイトはこちら。

 つい最近、前回公演のDVDを見ていたので、ついつい心の中で比較しながら見てしまった。
 そうすると、何よりも、社長の奥さんが千田訓子から谷川未佳に変わったところが大きいという印象だった。
 千田訓子が演じると、それは確かに世慣れない物慣れない感じを漂わせつつも、いざとなったらやるときはやるというようなある意味の落ち着きが感じられるのだけれど、谷川未佳が演じると、奥さんになってもまだまだ修行中、という感じが漂う。
 これは、それぞれの個性の発露であって(あるいは、意図的な演出なのかも知れないけれど)、いずれにしてもどちらがいいというものでもないと思う。

 その千田訓子が、谷川未佳演じる亜紀の保護者のような「姐さん」役だったのも、何だか感慨深いものがある。
 で、役柄が役柄だからある意味当然なのだろうけれど、この千田訓子の着物の着こなしが気になる。それは襟を抜いて着るのが役柄的にも正解だと思うのだけれど、それにしても「着崩れる」寸前まで大胆に抜いてあって、何だかこちらがハラハラしてしまう。
 もちろん、これはこれで、激しく世慣れた感じが漂う源の一つになっていると思う。

 お話は、布団屋さんの若旦那が、初潮を迎えた年の離れた妹がそのことをからかわれて道に飛び出し車にはねられて亡くなってしまうところから始まる。
 そういったお話の骨格は変わっていないし、そういう展開になることはDVDを見て知っているのだけれど、そのシーンではつい「いきなりこの展開じゃなくちゃいけなかったのかな」と変なことを考えてしまう。お祝いのお赤飯を買いに行ったはずの店の者が、亡くなったお嬢さんを戸板に乗せて店に帰ってくる、お嬢さんの死に店中が打撃を受けているところに注文したお赤飯が届く。
 かなり、衝撃的な始まりである。

 だからこそ、「男が一生の仕事として生理用品の改良と普及に努める」というこのお話の骨格と、上田宏演じるこの「若社長」の思い込みと誠意と研究熱心さと異常な思い入れがすんなり入ってくるのだと思う。
 実は、亜紀が変わったことでこのお芝居の印象はかなり変わったと思った私も、この若社長が替わったことによる印象の違いはそれほど感じなかった。
 タイプが似ているからか。
 この場合のタイプというのは、多分、体型などの見た目のことではなくて、一番それを大きく左右するのは声としゃべり方のような気がした。

 生理用品のことを聞きたくて呼んだ、身売りした女の子と結婚すると若社長が言い出し、そりゃあ大騒ぎになるだろうと思うところだけれど、お店の人たちは泰然としたもので、一人で怒ったのが近くの商店の穀潰しの息子の優平である。
 そこで、初めて極楽とんぼのように見えていたこの若社長が人を怒鳴りつけ、自説を曲げず、強気な物言いをする。
 お店の結束と、若社長の芯の強さを一気に見せる、お得なシーンである。
 しかも、ちょうど「女になりきるためにはどうするか」を教えに来ていた女形の晶さんは、この啖呵に感動して「女として」会社に勤めるようになる。

 お店の結束といえば、今回は、使用済みの生理用品を集めて回ってくるのは、桂憲一、野田晋一、コング桑田が演じる3人の丁稚(?)である。
 若社長夫婦が若返った分、「よーし、遊ぶぞ!」と思い切れる、若社長夫婦をお芝居の中でも上でも力強く支えてくれる布陣を敷けるというのは、かなり強みだと思う。
 このまま、その「世代交代」をうまく進めて行けるか、どこかで無理をしすぎてしまうのかが、「劇団」が続くかどうかの分水嶺のような気がする。

 それはともかくとして、DVD版と変わったなと思ったのは、晶さんが女装して婦人団体の幹部や女子校の校長、婦人雑誌の記者を集めて、開発した生理用品の説明をしていたところである。
 ここで、DVDでは、千田訓子はいかにも大家の奥様風に貫禄たっぷりに演じていたのに対して、谷川未香の亜紀は、「物慣れない」風に「教わっているとおりに言おうと努力しています」風情を醸し出している。
 そして、恐らくこの2人の亜紀の違いから来たのだと思うのだけれど、婦人のオピニオンリーダーであろう彼女たちが帰った後、DVDではそれほそ種明かしはされていなかったと思うのだけれど、今回の公演では亜紀に演じさせた理由や、その相手役が役者であることまでバラしていた。ここまでの説明はDVD版ではされていなかったと思うのだけれど、どうだろう。

 それから、あまり自信はないなりに「あれ?」と思ったのは、寺田という従業員の描かれ方である。
 DVDで見たときは、兵隊になった後、自分が勤めていた会社に綿花などの接収のため来たとき、かなり「嫌な奴」に変貌していたような気がしたのだ。亜紀に対する態度や、上官の命令に従うその風情など、「人間ってあっという間に変わっちゃうのね」という感想を持ったような気がする。
 繰り返すようだけれど、自信はない。
 しかも、今回の上演では、明らかに寺田は逡巡し、罪悪感を覚えながら上官の命令に従っているのである。だからこそ、戦争が終わった後、寺田とお絹さんが結婚していても違和感がない。
 DVDを見て確認すべきかどうか、もの凄く迷っている。

 あともう一つ、こちらは自信を持ってDVD版と違うなと思ったのは、若社長夫婦の娘の晴香である。今回の公演では、長いスカートにチェーンを振り回し、登場はサングラス付きだし、いかにも「不良少女」な出で立ちなのである。
 それでも社長夫婦は猫かわいがりしているようなので、「これ以上ヤバイ方向には進むまい」という妙な安心感があったのだけれど、それにしても驚いた。
 そして、この「不良少女」も、社長令嬢が初潮を迎えたことを、はちまきと幟と三本締めで祝う社員達には敵わないのである。

 日替わりゲストが来ることに劇場に行ってから気がついたのだけれど、この公演のゲストは武藤陶子だった。「お弔い」にも出ていたし、そのときの衣装で登場したからかも知れないけれど、彼女が挨拶をしようとして完全に「お弔い」と「お祝い」をごっちゃにし、リリパット・アーミーIIとラックシステムとを混同しているのをみて可笑しかった。
 わかぎゑふにだめ出しを出され、店に入ってくるところからやり直したのも、まあ、ご愛敬である。

 面白かった。

 ちなみに、今回の公演では生理用品のバラマキはなかった。
 ちょっとどきどきして気になっていたので、何も客席に撒かずにカーテンコールが終わったときには、残念なようなほっとしたような気分になったのだった。

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