「ライトフライト」を見る
TEAM NACS SOLO PROJECT「ライトフライト~帰りたい奴ら~」
脚本 戸次重幸
演出 福島三郎
出演 川原亜矢子/六角慎司/野仲イサオ/戸次重幸/加藤貴子
蘭香レア/小松彩夏/福島カツシゲ/川井“J”竜輔
観劇日 2009年10月24日(土曜日)午後1時開演
劇場 サンシャイン劇場 1階23列1番
上演時間 2時間10分
料金 5500円
ロビーではパンフレットやTシャツ、膝掛けなどが販売されていて、かつ、その売り場に行列ができていて驚いた。あんまり混雑していたので売り場はチェックしなかったのだけれど、そうしたら、開演前に舞台上のスクリーンでグッズの紹介が行われていた。
それにしても、「誰かを目当て」で来ている人が多かったんだろうか。
ネタバレありの感想は以下に。
NASA(ニューアサヒスカイエアライン)という怪しすぎる名前の付いた、東京ー札幌間のみを運行する新規参入航空会社の初フライト便が、この舞台の舞台である(ややこしい)。
北海道を地元とするTEAM NACS (のSOLO PROJECT)が、「エア・ドゥのことですか?」と聞きたくなるような航空会社の飛行機を舞台にするとなると、ついつい福岡のギンギラ太陽'Sと比べたくなってしまうのだけれど、この「ライトフライト」はそういう物語ではなかったのだ。
初フライトでアナウンスをするキャビンアテンダントはスチュワーデスの格好をした男の人だし、チケットには「13時頃」が出発時間だと書いてあるし、機長は遅刻してくるし、そのフォローをしようとした副操縦士は何故か社歌をいい声で歌い上げるし、しかもこの副操縦士はいかにも「男装の麗人」だし、とにかく怪しいことこの上ない。
もちろん乗客だって怪しくて、最終的に5人しかいない。
やけに旦那の方が低姿勢(嫁の方が高姿勢ともいう)の新婚夫婦が一番まともに見えたくらいで、あからさまにブラックジャックの紛争をした歯医者とか、漫画を読み続けていたと思ったらいきなり肘掛けの取り合いを始める若い女とか、ディスターシャを着込んだアラブ人っぽい外見の日本人とか、ともかく怪しい。
その怪しい風情が十分に行き渡ったところで役者紹介(いや、登場人物紹介だったかもしれない)がスクリーンに映し出され、「まだ秘密」と紹介された加藤貴子が宇宙人として登場する。
宇宙人?
銀色の怪しげな服を着て、銀髪で、歩くたびに「ぽよよん」と音がする。正真正銘の宇宙人である。
もっとも、この歩くたびに「ぽよよん」と音がするという設定は、役者さんも音響さんも大変だったようで、彼女が「そ」という名の宇宙人であるという事実が客席に浸透した辺りで「効果音オフ」と言われてオフされていた。何だか可笑しい。
宇宙人の「そ」は、アラブ人っぽい外見の日本人によるハイジャックが成功し(プラスチック製のダーツの矢だけで成功した希有なハイジャックである)、その後、どういう理由か忘れたけれど、パニック障害っぽい機長がパニックの余り航空機の燃料を全て排出し、墜落しそうになってきりもみで落ちている飛行機にぽんっと飛び込んできた。
しかも、飛行機ごと「風穴(と言っていたと思う)」に落ち込んで時間と空間の双方を移動してしまった、さてどうする、というお話である。
私の席が1階最後列の一番端という場所だったからかも知れないのだけれど、舞台が遠い。
そして、話が遠い。
カーテンコールでは戸次重幸の指名する役者さんが挨拶をするのが恒例になっていたそうで、この日は蘭香レアが挨拶し「最初に台本を読んだときにはよく判らなかった」と言い切った後で「重さん、ごめんなさい」と台本を書いた戸次重幸に謝っていたけれど、正直に言って、そんなに判りにくい話でもなかったと思う。
新婚夫婦の嫁は売れっ子の漫画家で、でも彼女が売れたのは編集者である夫のアイデアの成せる業で、強気の嫁はどこまでも強気だし、弱気な夫はどこまでも遠慮がちなのだけれど、実は2人は愛し合っていました、めでたしめでたし、という展開とか。
どこまでも弱気なこの夫が、最後にはリーダーになり、ブレーンになっていた宇宙人の「そ」に自分たちと別れて仲間達と一緒に行くように言い、皆にも文句を言わせないとか。
血を見ることができなくて潜りの歯医者になった医者が、サングラスをかければ大丈夫なことに気がついてもう一度医者を目指そうと決心したりとか。
副操縦士とキャビンアテンダントが、時々お互いの性別を交換しながらくっついてしまったりとか。
「風穴」を通って行った先は原始時代の地球で、翼竜に飛行機が襲われたり、虎に囲まれたり、そこはコスプレが趣味の女の子がコスプレと同時に性格や能力まで変わってしまって虎をやっつけたりとか。
ある意味、定番ともいえる登場人物を駆使し、定番ともいえるステップを堅実に踏んだ、判りやすい展開のお芝居だったと思う。
結局、NASAの初フライトは札幌にたどり着けないまま終わる。
現代日本では、初フライトの飛行機が突然行方不明になってしまい、しかも、下手をすると行方不明になる直前に全燃料を排出したことまで判ってしまっていたとしたら、NASAという会社の今後が相当に危ぶまれるところである。
という風に、この世界観に乗っかって楽しむのが正解のお芝居のような気がする。
ちなみに、先史文明の遺物であるピラミッド周辺に残った機長とハイジャック犯の2人は、「そ」からもらった宇宙の便利な道具を武器にエジプト文明をちょっとだけ変え、その他の人々は現代を目指して風穴に飛び込んだものの恐竜の時代に逆戻りしてしまい、そのまま「そ」が宇宙船に作り替えた飛行機と現代人の知識をもって「人類の祖」となって辺りを支配してしまったという。
という後日談が最後に映像で語られる。
手法としてはどうかと思うのだけれど、こういう後日談は好きである。
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コメント
しょう様、コメントありがとうございます。
確かに、ナイロンの映像はスタイリッシュという言葉がよく似合いますよね。
うまっ、とつい呟いてしまう感じ(笑)。
「天才脚本家」面白いですよ。
荒唐無稽だし、この描き方はどうよと思うこともあるけど、でもやっぱり面白いのです。
もし機会があったら(あるいは、主義にちょっと目をつぶってもらうことにされたら)、ぜひ、ラストシーンを楽しみにごらんくださいませ(笑)。
投稿: 姫林檎 | 2009.10.26 22:48
やっぱり、やっぱり!
そうですよね!!(興奮気味ですみません^^;)
私は映像の使い方では、ナイロンが結構好きなのですが、
舞台と切り離された映像だったのが、不満が残る感じなのかなと、
昨日見てきた舞台の時に思い出してました。
(昨日、印獣見てきました)
天才脚本家!
その頃まだ大王作品にも、G2プロデュースにもそれほど
興味を持っていなかったのですよね。
しかし、役者陣を見ても凄く魅力的ですね。
"生の舞台を見てないDVDは買わない"主義にしてるのですが、
(際限なく集めちゃいそうで)
姫林檎さんにお勧めと言われると、見たくなりますねー。
しかも、マンスリーショップで出てるし>天才脚本家
悩む、、、
投稿: しょう | 2009.10.26 13:12
しょう様、コメントありがとうございます。
しょうさんの感想も拝見させていただきました。
確かに、私も最初に機内のセットが現れたとき、「もっと小さい劇場の方が似合ったのでは」と思ったことを思い出しました。私は1階の最後列の一番端っこという、客席全体を見渡した向こうに舞台があるという席だったので、余計にそう感じました。
それから、映像の多用についても全く同感です。
ここのところ、舞台で映像を取り入れることが多くなったように思いますが、舞台には舞台の舞台ならではの表現があるのに、と思うことも多いですし、舞台転換の目隠しのために必要ない情報をここで与えなくても、と思うこともありますね。
ラストシーンは変わっていないようです。
後日談は好きなんですけど。
「天才脚本家」というお芝居はご覧になりましたか? あのラストシーンはまさに「後日談」で、かつ「舞台でしかあり得ない表し方」になっていて、大好きなのです。
投稿: 姫林檎 | 2009.10.25 23:19
姫林檎さんはこの週末ご覧になったのですかφ(._. )
私は先週末に見たので、変化してる所も
あるかも知れないなーと思いつつ感想拝見しました。
やっぱり最後はあれなんですね、、、
あそこが一番納得いかずの私でした。
(変えようがないでしょうけどw)
投稿: しょう | 2009.10.25 19:40