「マリス・ヤンソンス指揮 バイエルン放送交響楽団」を聞く
「マリス・ヤンソンス指揮 バイエルン放送交響楽団」
指揮 マリス・ヤンソンス
出演 バイエルン放送交響楽団/五嶋みどり
曲目 ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 ヴァイオリン:五嶋みどり
アンコール バッハ:無伴奏ヴァイオリンソナタ第1番第2楽章
チャイコフスキー:交響曲第5番
アンコール シベリウス:悲しきワルツ
ヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ・シュネル『憂いもなく』OP.271
公演日 2009年11月16日(月曜日)午後7時開演
場所 サントリーホール 大ホール 2階C4列12番
料金 32000円
公演時間 2時間20分(20分の休憩あり)
ロビーを歩く人や観客席の誰もが嬉しそうな、待ちかねていた表情をしているのがとても印象的だった。
パンフレット(500円)も飛ぶように売れていた。クラシックのコンサートでは当たり前の光景なんだろうか。
感想は以下に。
帰り道、「ベートーヴェンって退屈だね」と言っている人がいたけれど、曲の問題だったのかどうか私には判らなかった。それよりは、五嶋みどりの音とバイエルン放送交響楽団の音の相性があまり良くないのではないかという気がする。
五嶋みどりがアンコールでバッハの無伴奏ソナタを弾き、休憩を挟んで、オーケストラがチャイコフスキーの交響曲5番を演奏するのを聴いて、さらにその印象が強くなった。
実は五嶋みどりの演奏は、コンサートはもちろんCDやDVDも含めて初めて聞いたので、こんなことを書くのはどうかという気がするのだけれど、五嶋みどりのヴァイオリンというのは、鋭敏さが持ち味のように思う。繊細さというのとは少し違っていて、もう少し激しいというか、前に出て行く感じがプラスされる。
一方で、バイエルン放送交響楽団の音は、(こちらも昨日初めて聴いたのだけれど)力強さとか骨太という印象が強い。規律というものもプラスされている。
それは、多分、五嶋みどりの演奏とはあまり相性がよくないのだ。
それは、五嶋みどりのヴァイオリンが最初の音を出したときに「え?」という音だった(トーンと狙ったところを最初から当てている音ではなくて、ウゥゥと狙ったところに上がっていくという風に聴こえた)から、違和感を感じていたのかも知れない。
また、曲の途中でも、「え? 今のはミス? それとも解釈?」と思ったときが、2〜3回あったように思う。
曲に馴染みがなかったこととか、ソリストもオーケストラも初めて聴いたこととか、そもそも私がほとんどクラシックを聴かないということとか、私の側にマイナス要因はたくさんある。実際のところ、アンコールの拍手ももの凄い勢いで鳴らされていたし、演奏に満足した聴衆もたくさんいたと思う。
でも、私にはあまりピンと来なかった、というのは事実である。
ちぐはぐした感じが強い、といえばいいのだろうか。
それは、五嶋みどりが何度もアンコールに出てきたときに、オーケストラで弦楽器の弓を振ったり足を踏み鳴らしたりして「拍手」をする団員が少数派だったことや、五嶋みどりがアンコールの演奏をしているときに、若いチェリストが頬杖をついて聴いていたことも、そういった印象を強めたようにも思う。
休憩後、舞台上のオーケストラメンバーがさらに充実し、チャイコフスキーが始まると雰囲気は一変した。
何より、オーケストラの面々が楽しそうに演奏しているし、気のせいか、指揮者であるマリス・ヤンソンスとオーケストラとの間に何というのか、空気の流れがあるのだ。
オーケストラは指揮者を読み取ろうとしているし、指揮者はオーケストラを引き出そうとしているという感じに見える。途中で、マリス・ヤンソンスの指揮棒が全く動かなくなった(ように見えたけど体で隠されていただけかも)場面があって、それでも指揮者の体全体とオーケストラメンバーの食いつきそうな視線とで、同期が取れているという印象がある。
オーケストラメンバーは同じ(というか、交響曲を演奏しているときの方が人数は増えている)のに、どうしてこうなるのか謎である。少数精鋭の方が意思疎通は上手く行きそうではないか。
演奏されたチャイコフスキーの交響曲5番は、私が拙く一言で表現すると「元気で規律正しい曲」で、その曲を楽しそうに演奏するバイエルン放送交響楽団も「元気で規律正しいオーケストラ」という感じがする。
正しい選曲だ、自分の得意とする分野で勝負に出ましたね、という感じなのだ。
多分、元気な曲の方が評価を受けにくいのではないかと思うのだけれど、「でも、こういう曲が好きなんだもんねー」という開き直りな感じが漂うのも楽しい。
実は、ベートーヴェンのときは落ちてしまい「五嶋みどりのヴァイオリンを子守唄にするなんて、何て贅沢なんだ」と思っていたのだけれど、後半は目をぱっちり開けて、楽しませてもらった。
アンコールでも、オーケストラのメンバーが弓を振り、足まで踏み鳴らしていたのが印象的である。
こちらは、満足の行く演奏だったのね、と思う。
アンコール曲の「悲しきワルツ」は弦だけの演奏だったけれど、最後の「憂いもなく」は、小太鼓やシンバルも入って、楽しそうに賑やかに演奏されて、手拍子を打ちたくなるくらい楽しかった。
どうしてクラシックのコンサートでは手拍子を打ってはいけないんだろう。
メンバーが最後に「ヤァ」みたいに声を合わせていたのも、その楽しさに華を添えていた。
かなり高い(多分、今年最高額)のチケット分の元は取ったように思う。
誕生日週間最初の贅沢なのであった。
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