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2009.11.08

「リーディングカンパニー Vol.8」を聞く

「リーディングカンパニー Vol.8」大沢在昌・京極夏彦・宮部みゆき自作朗読会
作・出演 大沢在昌/京極夏彦/宮部みゆき
観劇日 2009年11月7日 午後1時30分開演
劇場 IMAホール M列15番
料金 4200円
上演時間 1時間45分(15分の休憩あり)

 この朗読会はチャリティー公演である。今回の売り上げを寄付する先がどこだったのかは確認しそびれてしまった。

 パンフレット(2000円)や、昨年までの朗読会のパンフレットとCD-ROMも販売されていたのだけれど、購入しなかった。
 9500円ジッポのライターもあって、開演前に物販コーナーに登場した大沢在昌と京極夏彦(というよりも、京極夏彦)がしきりと「作者が手渡します」「握手がつきます」とやっていたけれど、1つ売れただけだったようだ。京極夏彦がさらに揶揄して「売る方が頭を下げます」と実況中継していたのが可笑しかった。

 感想は以下に。

 大極宮(大沢オフィス公式ホームページ)はこちら。

 今回は、全編、大沢在昌の「拳銃家業も楽じゃない」という「ルパン三世」へのオマージュ作品を3人で朗読するという形式で、各作家単独での朗読はなしだった。
 終演後のトークで「どうでしたか?」と3人も聞いていたし、アンケートにもそういう項目があったけれど、私はどちらも好きだなという感じである。絶対に3人それぞれの朗読を聞きたいというのも、絶対に3人での朗読だけにして欲しいというのもなし。どちらも楽しい。
 それはそれとして、京極夏彦が「墓場系じゃなかったのは今回だけですよ」とか、「メイクさんに、今回は普通でいいんですね、と言われましたよ」と言っているのが可笑しかった。

 そして、今回特筆すべきはオープニング映像である。
 京極夏彦が5時間をかけて作成したというアニメ映像は、アニメのルパン三世のオープニングのパクリだけれど、ゼロから作った(つまり、アニメのオープニングシーンを使っていない)というのだから驚く。
 「ルパン三世」の文字も、アニメからではなくコミックから取ったと言っていた。
 最終的に、モンキー・パンチとアニメ製作会社から、「この朗読会に限って」ということで了承がもらえて使えることになったけれど、了承がもらえなかったら、「ルパソ三世」とか「ノレパン三世」とかにしようと思っていたとかトークで語られているのも可笑しい。
 そして、トークの中でアンコール放映(笑)されていた。

 本編は、もう、京極夏彦のレインボーヴォイス全開である。
 最初は、渋く「地の文」を読んでいたのだけれど(これはこれで格好いい。)、ルパン三世の声になった途端「本物?」というくらい「ルパン三世」で、客席からどよめきが起きたくらいだった。
 栗田貫一ではなく、京極夏彦で本物のアニメが作れちゃったんじゃないかというくらい、「ルパン三世」である。

 大沢在昌の「次元大介」は、これはこれで普通に渋くて格好いい。アニメのしゃべり方を真似ているのだけれど、こちらは「形態模写」という感じではなく「雰囲気を出している」という感じ。それがまたハマっているところが楽しい。

 宮部みゆきの不二子がちょっとしか聞けなかったのは淋しいけれど、皇女さまの役と、拳銃早撃ち大会のアナウンスが何だかいかにもそれっぽくていい感じだった。

 そして、その拳銃早撃ち大会に「イケ」とか「ウラ」とか「エチオピヤ人のマスカマダ・カマスカス」「地面師 田中」などなど、過去のリーディングカンパニーでの「常連」が現れて、それぞれやけにインパクトを与えて去っていったのが楽しい。
 こういう「遊び」が楽しいけれど、確かに最後のトークで2人が言っていたように「判らない人には判らない」遊びではある。

 全く、一流の人というのは、何をやらせても一流なのだということがよく判る2時間弱なのであった。
 しかも楽しいからまた困ってしまう。
 そしてまた、相当に準備して拘り満載に凝っていることもよく判る。

 その一端が現れたのが最後のトークである。
 ナントカカントカ(銃の名前である)の9mm弾は音速を超えるので、この拳銃で撃たれた場合、撃たれた後で銃の発射音が聞こえる。
 フルメタルの弾丸は貫通する確率も高く、人道的だと判断されている。
 一方、警察官が持っている拳銃は、街中で使用して貫通弾が一般市民に当たってはいけないのでフルメタル弾は使われない。

 大沢在昌が楽しそうにしゃべりまくり、京極夏彦もまた「拘り」ということでは負けていないわけで何かとしゃべろうとしてもその勢いに負け、宮部みゆきが常識的なところで「こうなんですよ」と茶々を入れてその場を冷やす。
 絶妙のトークが繰り広げられたのだった。

 昼と夜の2回公演で、私が見た昼の部は「お話を聞いてもらおう」というまじめバージョン、夜の部は「アドリブ満載です」と宣伝していたので笑いバージョンだった筈である。
 夜の部は当日券もあるという話だったし(リーディングカンパニー史上初だそうだ)、それは聞いてみたいと思ったのだけれど、夜は夜で別のお芝居のチケットを持っていたので泣く泣く光が丘を後にしたのだった。

 楽しかった。
 ぜひ、来年も開催して欲しいと思う。
 3人で榎木津探偵のシリーズを2時間たっぷりというのが私の希望である。

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