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2009.12.31

「2009年の5本」を選ぶ

 2009年最後の今日、私の「2009年の5本」を選んだ。
 2009年に見たお芝居は52本だった。

 昨年は62本見ているので、10本も減ったことになる。我ながら意外だ。
 年頭に当たって「セーブしよう」と思った記憶はあるけれど、実際にセーブした記憶はないので、週末を利用した国内旅行に何回か出たのと、8月に大きな旅行(週末を2度鋏んだ9日間)に出たためだと思われる。

「風が強く吹いている」@ル・テアトル銀座 2009.1.18
 三浦しをんの原作小説を3時間の舞台に納めようというのだから、相当に刈り込み、箱根駅伝に挑戦する10人の大学生それぞれの設定も単純化されたり語られなかったりしていたのだけれど、それが悪い感じではない。舞台のその後ろにある物語がちゃんと感じられる。
 箱根駅伝の200kmを舞台上でどう走るのかと思っていたら、舞台の後方を八百屋にし、手前のルームランナーのようなものが置かれていた。10人がかわるがわるそこを走り、そして、たすきを渡す姿は神々しいように見えて、涙が出た。
 生身の人間に目の前で演じられることで、小説を読むのとは別の体験ができたようで、同じようで違う、違うようで同じ何かを見たという感じがする。
 見て良かったと思う、いいお芝居だった。

「キサラギ」@世田谷パブリックシアター 2009.4.18
 映画版の「キサラギ」を気になりつつ見逃してしまったので、舞台版はぜひ見たいと思っていた。売れないアイドルだった如月ミキの一周忌に、彼女のファンサイトで知り合った5人の男が彼女を偲んで集まるという、ワンシーンのシチュエーションコメディ、と言ってしまっていいのか、「コメディ」というところに若干の不安がある。
 でも、このまま、様々な出演者、様々な演出で上演される、一種の定番になってくれたらいいのにというのが正直な感想だ。男女入れ替え逆バージョンなども面白いと思う。
 舞台全体を通して出演した5人の俳優の誰かが突出して一人勝ちしてしまうこともなく、見事に「キサラギ」というお芝居を見せてくれたということ自体、この出演者陣から考えて凄いことのような気がする。演出の板垣恭一だからこそ、の舞台に大拍手である。

「容疑者Xの献身」@サンシャイン劇場 2009.5.5
 この年末にテレビで映画が放映されたのを見たからじゃないかという疑問を自分で払拭できないのだけれど、原作を読んでいても、映像(短編集をテレビで連続ドラマ化した後で、「容疑者Xの献身」が同じ俳優陣で映画化された)のイメージが残っていても、結末をほぼ完全に覚えていても、このお芝居は面白かったし、引き込まれてしまった。
 この舞台はとても原作小説に忠実に作られていたと思う。
 湯川のいう「最高の頭脳」は、自分が折れそうになることまで計算して退路を予め断っておくほど完璧だったのに、守ろうとした女性と彼女の娘の心の動きまでは計算できなかった。ラストシーンの石神の号泣の理由はそこにはないのだけれど、でも、舞台を見たときだけ、何だかそんなことを思ってしまった。

「組曲虐殺」@天王洲銀河劇場 2009.10.21
 このお芝居の主人公は小林多喜二である。
 こまつ座のお芝居では珍しいと思ったのだけれど(確証はない)、このお芝居は全員がほぼ一人の役を演じていて、こまつ座といえば一人が何役も演じるという印象があるので、かなり意外だった。
 前半で張り巡らせた伏線が、後半で一気にスピードアップして収束し、小林多喜二は特高警察に捕まったその日のうちに殺されてしまう。そこを「見せない」ようにして、知り合った頃は「多喜二兄さん」と呼び、努力して「多喜二さん」と呼び方を変え、フジコさんと結婚した多喜二のことは「Tくん」と呼び、彼が亡くなった後再び「多喜二さん」と呼ぶようになった「タキちゃん」と、多喜二の姉の2人に告げることで伝えたラストが切なかった。

「十二人の怒れる男」@シアターコクーン 2009.11.21観劇
 「十二人の怒れる男」という作品を見たのは初めてで、改めて(というか初めて)「十二人の優しい日本人」という三谷幸喜の作品は、とても上手く「本歌取り」をしていたのだな、と思った。本歌をちゃんと見てから「本歌取り」を見れば良かった、と訳の判らない後悔をしたくらいだ。
 10人の男たちが次々と、陪審員8号やその他の陪審員たちのちょっとした「気づき」の発言によって最初の確信を揺るがされ、自分たちが怒りを抱いている「何か」と少年のを重ね合わせることからなかなか自由になれないことに自覚的になり、あるいは無自覚なまま、一人また一人と「無罪」に意見を変えて行く過程が、このお芝居の醍醐味である。
 これまた、つい、「十二人の怒れる女」にすることは可能だろうかと考えてしまった。

 ここに挙げた5本以外で特に迷ったお芝居はこんな感じである。

「アケミ」@シアタートップス 1009.1.10
「ブラジル」@紀伊國屋ホール 2009.1.17
「関数ドミノ」@赤坂RED/THEATER 2009.5.15
「きらめく星座 ~昭和オデオン堂物語~」@天王洲銀河劇場 2009.5.23
「NINAGAWA十二夜」@新橋演舞場 2009.6.27
「マクベス」@紀伊國屋サザンシアター 2009.7.18
「リボルバー」@紀伊國屋ホール 2009.8.8
「jam」@東京芸術劇場小ホール 2009.12.10観劇

 そして、一番淋しかったのはTHEATER/TOPS閉館イベント「さよならシアタートップス 最後の文化祭」が開催されなければならなかったことで、一番嬉しかったのは、激戦を勝ち抜いて、東京サンシャインボーイズ「returns」を見られたことである。
 あれは、本当に淋しくて幸せな空間だった。

 来年もたくさんの楽しいお芝居を見られますように!

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コメント

 逆巻く風さま、コメントありがとうございます。

 私も読売演劇大賞のノミネート作品を見ました。
 逆巻く風さんにお勧めしていただいた作品がかなり入っているな、お勧めに従って少し無理をしても見ておけば良かった! と思ったことでした。

 「読売演劇大賞」のコンセプトって、そういえば知りません。読売新聞のサイトを見てみましたが、やっぱりよく判りませんでした。
 ミュージカルも対象だと思うのですが、どうなのでしょうね。

 今年も、お互い、たくさんの楽しいお芝居を見ることができますように!

投稿: 姫林檎 | 2010.01.17 21:51

先日「読売演劇大賞」のノミネートが発表されて、『組曲虐殺』が作品賞を受賞しました。あー、やっぱり評価高かったんだ・・・・
他にも僕の観たのでは『炎の人』と『コースト・オブ・ユートピア』が受賞していました。これはまあ評論家とか演劇の専門家が選ぶので絶対ではないですが、ベスト5の内3本観れたのはラッキーかな?
まあ『コースト~』は生では観れなかったんですが (笑)
『グレイ・ガーデンズ』も候補に上がったみたいですし。
他に観たので主演男優賞とか女優賞で『フロスト/ニクソン』とか『この森で天使はバスを降りた』とかありましたねー。でもミュージカルとかはあまり無くて、いわゆる”商業演劇”?は評価されないんですね・・・
そんなわけで今年もミュージカルを中心に、食指が動くのを観ていきたいです。

投稿: 逆巻く風 | 2010.01.16 09:36

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