「おしゃべりなレストラン 」を見る
「おしゃべりなレストラン ~ア・ラ・カルト リニューアルオープン 準備中~」青山円形劇場プロデュース
出演 高泉淳子/山本光洋/本多愛也/中西俊博(violin)
クリス・シルバースタイン(bass)/竹中俊二(guitar)/林正樹(piano)
日替わりゲスト 川平慈英
観劇日 2009年12月11日(金曜日)午後7時開演
劇場 青山円形劇場 Hブロック13番
上演時間 2時間50分(10分の休憩あり)
料金 6000円
昨年20周年を迎えた「ア・ラ・カルト 役者と音楽家のいるレストラン」から、白井晃と陰山泰の2人が卒業し、来年のリニューアルオープンに向けて「ちょっとだけ開けてみました」のレストランである。
ネタバレありの感想は以下に。
青山円形劇場の公式Webサイト内、「おしゃべりなレストラン ~ア・ラ・カルト リニューアルオープン 準備中~」のページはこちら。
昨年までの「ア・ラ・カルト 役者と音楽家のいるレストラン」から白井晃と陰山泰の2人が抜けて、リニューアルオープン、ではなく、リニューアルオープン準備中と銘打っての今年の公演は、もしかして、来年以降も興行的に継続できるかどうかの試金石なのかしら、と思ってしまったのはうがち過ぎかも知れない。
意外なくらい、「ア・ラ・カルト 役者と音楽家のいるレストラン」のテイストが残った舞台だった。
予想は裏切られたし、楽しかったのだけれど、果たしてそれで良かったのかな、という感じはする。
開店の挨拶は高泉淳子がギャルソン姿で登場する。
「どうしてリニューアルオープンすることになったのか」ということを、ジョークを混ぜつつも、かなり本音で語っているように見えた。
高泉淳子にとって、「ア・ラ・カルト」という舞台は、それだけのエクスキューズを必要とする舞台なのだな、と思う。
山本光洋と本多愛也の2人のパントマイマーがギャルソン役を務めます。
本多愛也がほとんどしゃべらないところも含め、ついつい白井晃と陰山泰を思い浮かべてしまうし、役割分担というかキャラの立ち位置として踏襲もしようとしているように思える。
でも、それが嫌みや物まねになっていないので、安心して見ていられる。
いつもの「開店前の客」が登場したときはそうでもなかったと思うのだけれど、「タカハシ」が登場したときには客席がどよめいた。
もう会えないと思っていた人に会えたというどよめきである。
私も、これまでの「ア・ラ・カルト」に来ていたお客たちにはもう会えないものと思っていたので、これはかなり意外だった。
でも、逆に「ノリコさん」が現れないことの寂しさは際立つ。
そして、再び「いつものお客」である、自称ご意見番のマダム・ジュジュもやってくる。
オーナーがまだ見つからないこのレストランのオーナー候補として、何故かチノパンにジャージという格好の本日のゲストである川平慈英を呼ぶ。
私は、「以前に川平慈英がゲストで来ていた年のア・ラ・カルトを見ているよな」と思っていたのだけれど、どうもそれは完全な勘違いで、2人のトークの中で「見に行きます! って言っていたのに、1回も客席で見かけたことがない」と高泉淳子が言っていたから、きっと出演もしたことがないに違いない。
このトークがかなり可笑しい。
どこまでが「仕込み」で、どこからが「素」なのか、全く判じがたい。
高泉淳子が、川平慈英を「若い男の子」という感じに取り扱っているのが可笑しい。これは多分かなり「素」に近いのではないだろうか。
川平慈英が「本当にあった信じられない話」を披露すると、「よかったわねー。こんなにたくさんの人が聞いてくれて。」とあしらう。さらにもう一つ披露しようとすると「短ければいいわよ」と促す。
日替わりゲストは恐らく高泉淳子と個人的にも親しい(過去にア・ラ・カルトに出演したことのある俳優さんが多かったけれど)人を呼んでいて、だからこそ、このトークのコーナーが成り立つのだと思う。
次の「大学時代からの腐れ縁の男女のプロポーズ」のシーンはお芝居で、メニューに台詞が書いてあるようだったのだけれど、これは全くのぶっつけ本番なんだろうか。
川平慈英が台詞を全く覚えていないのは確かみたいだったし、前日にゲストで来たときも同じ芝居を演じて「本当に今日もやるの」みたいに言っているので、やっぱりコイツはこれまで「ア・ラ・カルト」の舞台を見たことがないというのは本当だと確信したのだけれど、どこまでアドリブだったのか。
2日連続で同じ芝居をするせいなのか、台詞が書いてある筈のメニューは途中で切れてしまい、ギャルソンが代わりに渡してくれようとする(そして最初は川平慈英は断ってしまう)ワインリストに続きが書いてあったりと、この辺りは2日目限定の仕込みだったのではないだろうか。
そりゃあ、全くのぶっつけ本番だったら、2日目の方に何か「仕込み」をしておかないと面白みがないというものである。
メニューに目を落として台詞を棒読みに近くなったりしつつも語る川平慈英は、その「台詞を覚えていない」というところを逆手にとって表情でおどけてみせ、笑いを取る。
この辺りは、かなりゲストの力量に負うところが大きくて、川平慈英はそこを上手く自分流で乗り切っていたと思う。そして、見ていて楽しい。
実は、このシーンは相手役を務めている高泉淳子の方にも大きな負担がかかって、かつ、相当の力量が要求されていて、ゲストがどんな反応を示そうとこのシーンを最後まで持って行かねばならないというのはもの凄く大変なことなんじゃないだろうか。
日替わりゲストの顔ぶれを見ると、このシーンを入れることは冒険だし、このメンバーだからこそできたのだろうなと思う。
休憩タイムのワインサービス(1杯300円)とソフトドリンクの無料サービスも健在だった。
後半は、ショータイムからスタートである。
多分、山本光洋と本多愛也のお二人にとっても、川平慈英にとっても、本領発揮というところだろう。川平慈英はタップも踏んでいて、休憩前の芝居のシーンとは違って「水を得た魚」のようだった。
楽しい。
そして、ラストシーンだけはやはり2人揃っていないと成り立たないということなんだろう。
山本光洋が老紳士に扮して登場した。
そして、2人は10年か20年ばかり若返ったようで、そして、まだ結婚していない2人という設定になっている。
おつきあいを始めましょう、という2人の食後のデザートというのは、何ともほほえましい。
そして、最初の開店前のレストラン・シーンに戻る。
どうやら「開店前の客」がこのレストランのシェフに、本日のゲストがこのレストランのオーナーになることが決まりのようだ。
これまで登場しなかった「シェフ」が来年からは登場して、そうなると、これまで高泉淳子が演じてきた数々の客たちは今年が見納めということになるんだろうか。
それも淋しい気がする。
でも、本当にガラっと変わったレストランの風景になっているのかと思ったのだけれど、バンド・メンバーが替わらなかった音楽はもちろんのこと、全体のテイストが昨年までと同じ感じだったのが嬉しいような意外なような、来年からどうなるのか楽しみなような不安なような、そんな感じがしたのだった。
それはそれとして、今年の舞台は楽しい。
違うゲストの日の舞台をまた見てみたいと思った。
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