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2010.02.21

「THE 39 STEPS -秘密の暗号を追え!-」を見る

「THE 39 STEPS -秘密の暗号を追え!-」
原作 ジョン・バカン
脚色 パトリック・バーロウ
翻訳 小田島恒志
演出 マライア・エイトキン
日本版演出 デイヴィッド・ニューマン
出演:石丸幹二/高岡早紀/今村ねずみ/浅野和之
観劇日 2010年2月20日(土曜日)午後1時開演
劇場 シアタークリエ 6列2番
上演時間 1時間55分(15分の休憩あり)
料金 8500円

 パンフレット(1500円)や、原作映画(という言い方は正しくないかも知れない)のDVD(500円)などがロビーで販売されていた。

 ネタバレありの感想は以下に。

 「THE 39 STEPS -秘密の暗号を追え!-」の公式Webサイトはこちら。

 開演の10分前くらいに劇場に入ったら、そこではキャラメルボックスばりの前説が展開されていた。
 クイズを出して、原作といえばいいのか元ネタとなっている「三十九夜」というヒッチコック映画のDVDや、「イギリスから輸入しました」というポテトチップスをプレゼントしたり、セットの説明をしたり、演出意図についてギリギリネタバレしちゃっているんじゃないかというような解説があったり。
 しゃべっているこの人は演出家なのかと思ったら、演出家はデイヴィッド・ニューマンで、「THE 39 STEPS -秘密の暗号を追え!-」の公式ブログを確認したら、演出助手の鈴木ひがし氏だった。

 鈴木氏の解説の中では、演じている役者さん達が「舞台上で自分の姿を丸のまま見られている」という感覚ではなく、「今自分はこの角度からのカメラにアップで狙われている」というような意識で演じている、という話がちょっと不思議な感じがした。
 そういう風に意識して演じようとしているにしても、実際は全身を舞台上にさらしているわけだから、やはり「全部を見られている」という意識は抜けないのではなかろうか。

 主人公のハネイ氏を演じる石丸幹二だけは1人1役だけれど、その他の役者さん達は複数(今村ねずみと浅野和之に至っては50役ずつくらいは演じたのではなかろうか)の役を次から次へと演じ分ける。
 これまた、鈴木氏曰く「舞台上でも膨大な台詞をしゃべり段取りを覚えているが、袖に入ってからも早変わりの着替えなどで大車輪で働いている」とのことだった。
 その上で、舞台転換まで(といっても基本的なセットは変化なく、机や椅子、ドアなどのセットの出し入れが主である)俳優さん達がやっているのだから、きっと汗だくになっていることだろう。

 そういえば、これまた鈴木氏の解説で、映画は86分、この舞台も休憩を抜くと90分強といった辺りで上演(上映)時間にほとんど差はない。映画はシーンの切り替えが一瞬だけれど、舞台の場合は装置の転換などの時間がどうしても必要になる。そこで必要となる時間をどうやって捻出するのか、舞台を見終わった後で映画を見ると面白さがよく判る、という風に言っていた。
 もう一つ思い出したけれど、この日までのアンケートで「舞台を見る前に映画を見た」という人は10人余だったけれど、客席に同じ質問を投げたら5人くらいの人が手を挙げていた。
 アンケートを書かないお客さんもいるだろうから、実際は映画を見たことのある人はもっとたくさんいたと思う。

 そういう「仕掛け」的な意味でもノンストップの感じだし、ハネイ氏が余りの無為に疲れ果てて劇場に出かけ、記憶術のショーを見ていると女が拳銃一発で客席を大混乱に陥れ、その女に頼まれて連れ帰ってみればドイツの女スパイと名乗り、イギリスから航空関係の重大な秘密が盗み出されようとしているのを阻止しているのだと告げ、殺されてしまう。
 彼女が言い残した単語を頼りにハネイ氏はこの「国防の危機」を何とかしようと考え、女の死体を残したままスコットランドに向かうと、当然のことながら殺人を疑われて当局に追われる立場となる。

 一頃流行った(と言うと、年齢がバレるような気がしなくもないけれど)ジェットコースタードラマである。

 そして、このドイツの女スパイの英語(舞台上では日本語)が微妙に可笑しかったり、ハネイ氏が窓から外を覗こうとすると街灯の下にたたずむトレンチコート姿の男2人が舞台袖から登場したりといった「間」で笑わすシーンがたくさんあったり、「笑い」の要素がふんだんに盛り込まれている。
 これは、元々の映画もそうだったのか、舞台にする段階で「登場人物の多い映画をたった4人で舞台上で演じる」に当たってその無理を笑いに変えようという意図で付け加わっているのかよく判らないのだけれど、それはとにかく可笑しい。

 ハネイ氏はとにかく逃げまくりつつ、女スパイの言い残したスコットランドの「大きなお屋敷」に行ってそこの主人に会って話せば「国防の危機」は乗り越えられると信じてひたすらそこを目指す。
 スコットランドに向かう列車で乗り合わせた女に、逃げ込んだ農家の若いお嫁さんと、行く先々で出会う女性と「好意より濃そうだけど恋じゃない」感じのシーンが繰り返されるのも、お約束っぽくなりつつも、ロマンチックコメディ風の彩りとして楽しい。

 ハネイ氏が訪ねた「大きなお屋敷」の主が、実は女スパイが警戒していた「航空関係の機密を盗み出そうとしているスパイ」で、そこに自ら飛び込んだハネイ氏は危うく殺されそうになるが、農夫の妻が貸してくれた夫のコートのポケットに入っていた賛美歌集に救われたり、うっかり紛れ込んだ政治集会で演説していたら電車の女に再会して警察に通報されたり、通報に応じてやってきた警察は実は偽物で彼と彼女はまとめて追われるようになったり、「大きなお屋敷の主」は国外に機密を持ち出す前にハネイ氏が女スパイと出会った劇場に立ち寄るらしいという情報を彼女が入手したり、実は彼女は警視総監の姪でハネイ氏が劇場に向かったことと国防機密が持ち出されようとしていることを伯父に伝えたり・・・。
 国防機密は実は何かの形ではなく、ハネイ氏も見物した「記憶術」の男の脳みそに刻まれていた、とオチを付けるなんて、私の好きな「全ての要素が最後にはピタリとはまる大団円のドラマ」そのものである。

 そして、途中経過は何故か省かれるのだけれど、彼と彼女は無事に結ばれ、ハネイ氏は「愛」を手に入れることになるという結末もハッピーエンドそのものである。

 面白かったし、笑ったし、「流石!」と唸りたくなるシーンが満載である。
 ここは4人の俳優達のキャラクターと、特に今村ねずみと浅野和之の技術に負うところが大きいと思われる。

 だけれど、何故だか舞台からスピード感が感じられなかったのも本当で、その理由が見終わって数時間以上もたつ今になってもよく判らない。
 見ている間も、「もっと早く展開してもいいのに」とずっと思っていたような気がする。
 実際のところは物語の展開も早いし、場面転換も長さを感じたことは一度もなかったし、役者さんたちの早変わりを「待った」ことも一回もなかった。
 だから、余計に何故「早い」という印象を自分が持たなかったのか、かなり不思議である。

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