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新感線☆RX 「薔薇とサムライ~GoemonRock OverDrive」
作 中島かずき
演出 いのうえひでのり
作詞 森雪之丞
出演 古田新太/天海祐希/浦井健治/山本太郎
神田沙也加/森奈みはる/橋本じゅん
高田聖子/粟根まこと/藤木孝/ほか
観劇日 2010年3月19日(金曜日)午後6時開演
劇場 赤坂ACTシアター 2階J列40番
上演時間 3時間40分(20分の休憩あり)
料金 10500円
ロビーのグッズ売場は大混雑していて、「近づけないかも」と思うくらいだった。
パンフレット(2300円)、ポスター(2枚組2000円だった、と思う)などなどが販売されていて、パンフレットはかなり迷ったけれど、来月にもう1回見に行く予定だし、「ハードカバーの小説よりも高いんだなあ」と思ってとりあえず見送った。
ネタバレありの感想は以下に。
2階J列というのは、2階席の最後列から2列目という位置だった。
しかし、前の人の頭が邪魔にならないし(段差がかなりあったと思う)意外と見やすい。2階席でも前方の席はS席だと考えると、オペラグラスさえ持って行けば、A席はお得に楽しめたという感想である。
劇場の造りだけでなく、新感線の舞台そのものが、全体を見て楽しめるとか、上から全体を見た方がライティングの妙が楽しめるとか、そういう要素を持っていることも多いと思う。
歌の際に字幕の一部が出ることがあったのだけれど、その一部が読めない位置に出ていたこと以外は、全く問題なかった。
舞台の背景はほとんど電光掲示板(とは言わないのかも・・・)で表現されていた。
場面がぽんぽん切り替わる新感線の舞台では、これまた、暗転の時間が最小限に抑えられて、テンポ良く話を進めるのに貢献していたと思う。
上から見ていたので、舞台手前に低めの柵(というか塀というか)を出したときも、その後ろで何が起こっているか概ね見えていたのだけれど、あれは、1階席から見ているときにはどう見えたんだろう。
舟の舳先と艫だけで大船を表現し、あとは後ろの電光掲示板で帆や荒れる海を表現することで、海賊船に見せる。
これまた、上手い。
コマ劇場で五右衛門ロックを上演したときは、3重の回り舞台を使っていたように記憶しているのだけれど、こちらも結構臨場感が出ていて、船の揺れを感じるくらいだった。
古田新太演じる石川五右衛門は、何故か「ああ、きっとポルトガルのもじりね」という感じの国の近くで、天海祐希演じる女海賊アンヌ・ザ・トルネード一味の(というか、一家の)用心棒をしている。
時は(恐らく)大航海時代。
このアンヌが、「弱気を助け、強気を挫く」という、正義の味方の鞍馬天狗みたいな「姐御」で、まさに天海祐希のハマリ役という感じである。
地で行けてしまうのではあるまいか。
橋本じゅん演じる海賊バルバがこのアンヌ達を襲い、逆襲されて蹴散らされる。その勝利祝いをしているところに国から兵隊が乗り込んできてアンヌをお城に連れ去る。
そこには、粟根まこと演じるガファス将軍が、森奈みはる演じるエリザベッタと待っていて、アンヌの左目は瞳の周りに金色の環が見える「日輪の瞳」で、それは前国王の娘である証だと言う。
こう書いてしまうとやたらと荒唐無稽に聞こえるわけだけれど、そもそも義賊のような女海賊という時点でかなり物語世界に引っ張り込まれているし、天海祐希がまた激しく自然なものだから、違和感を覚えている暇がない。
違和感といえば、西ヨーロッパを舞台にした女海賊(と石川五右衛門)の物語に散りばめられる音楽の、特に俳優陣が歌っている歌がやたらと昭和な感じなのも楽しい。最初は「何故?」と思ったけれど、慣れてくるとそれが普通な感じがしてくる。
それで思い出したけれど、今回は、全員に配られるチラシの中に、劇中歌の歌詞が書かれておらず(だから字幕で出していたのかも知れない)、パンフレットを購入しないと判らないというのはかなり残念だった。
あっという間にアンヌは自分が王女(かも知れない)ことを納得させられ、藤木孝演じる大宰相と高田聖子演じるその娘マーロウと、自分たちを襲った海賊バルバとが裏取引をしていた現場を見てしまい、あっという間の流れで女王として立つことを決めさせられてしまう。
展開、早すぎっ。
でも、この後の展開を考えると、さっさとアンヌに女王になってもらわないと追いつかない。
彼女の戴冠式に、浦井健治演じる隣国の小国の王太子がやってきたり、従者1人を連れただけのこの王太子が山賊に襲われたところに、山本太郎演じるデスペラード豹之進が通りかかって賞金稼ぎを兼ねて命を救う。この豹之進が、事情は不明ながらとにかく命を狙っている相手が石川五右衛門、と話はどんどん絡まってゆく。
海賊仲間にアンヌを連れ戻してくれと頼まれた五右衛門がお城に乗り込み、そこで、神田沙也加演じる大宰相の孫娘ポニーと出会い、ついでに裁判前に私刑されそうになていたバルバを助ける。
このバルバが「死ぬ前に赤いドレスが着たい!」と叫び、その後、いかにもなファッションに身を包んで登場するとそのたびに大拍手が起きていた。橋本じゅん、流石である。
今にして思えば、このポニーが跳ねっ返りながらも冷静に様々なことを見極めているというところと、エリザベッタがとにかくまっすぐな女性であるというところが、この物語の二大ポイントだったような気がする。
もの凄く短くまとめると、この「薔薇とサムライ」は、実は前王の忘れ形見である女海賊のアンヌが女王となる話なわけだけれど、その中でアンヌはもちろん、キーパースン2人が女性だというのは何だか嬉しいようなきがする。
もちろん、その「女王になる」までには、一波乱も二波乱も待ち構えている。
戴冠の舞踏会では、マーロウにドレスを引っかけられて破られてしまうのだけれど、そこは潜入していた五右衛門の機転で(そして、何故かドレスの下に着込んでいて貴公子の服装が功を奏して)、逆にフラメンコのショーに仕立て上げてしまう。
隣国の王太子がアンヌに惚れたおかげで、フランスなどの大国がこの国を「海賊の女王を迎えた海賊を支援する国」と難癖をつけてつぶそうとしているという情報が入る。この王太子、軟弱そうに見えて意外とやり手で、この五右衛門の機転を見抜いていたりするのも小技が効いていて楽しい。
だからこそ、アンヌはその王太子を使って和平工作をしたのだろうと納得できる。
それでも、大宰相一派(というか、娘のマーロウが直接海賊の本拠に乗り込むという大活躍!)に潰され、五右衛門率いる海賊との戦争に突入してしまう。
こうなると、アンヌという女王はとことん優秀なのだ。
城に戻ったアンヌは、深刻そうなエリザベッタから、アンヌは前王の娘ではないらしい、夫が隠していた肖像画には日輪の瞳がないと告げられる。
そこにラファス将軍もやってきて、この国を救うためにアンヌを女王に仕立て上げたのだと告白する。
その話を聞いてしまったポニーは、何故か豹之進を捕まえて自分を五右衛門のところに連れて行くようにと命じる。この「命じる」を普通にやってしまうところが大宰相の孫娘だし、そういう役が彼女には合っているし上手いとも思う。
アンヌが実は王の血を引いていないと聞かされた五右衛門は、同時に、アンヌが残した眼帯から何かを発見したようだ。
悪事を全て白日の下にさらしてやろうじゃないかと、お城に乗り込んで行く。
乗り込んだ途端、豹之進に殺されてしまったときには「絶対に死んでない!」と確信したけれど、それはやっぱりその通りで、「王女を語った罪」でアンヌが磔の刑に処されようとした瞬間、ゴンザンス男爵に化けていた五右衛門が姿を現し、アンヌを助けて大暴れする。
しかし、この「**に化けていた五右衛門」というのは何回かあったのだけれど、右近健一演じるゴンザンス男爵に五右衛門が化けていたのはともかくとして、隣国の王太子に化けていた五右衛門、というのは体型的にかなり無理があって、それが何とも可笑しかった。
体型といえば、古田新太はどうして舞台であんなに格好いいのだろう。
本人が、「五右衛門ロック」や「薔薇とサムライ」のようなお芝居には飽きちゃったと何かのインタビューで言っていたと思うのだけれど、その分、「ここが見せ場だ」というところとそうでないところでの緩急の付け方が見事で、見せ場の格好よさが際立つ。
ここ一番以外のところで肩の力が抜けているのが、その秘訣なのではなかろうか。
でも、舞台上の古田新太を見たことがない人に、彼の格好良さをなかなか伝えきれないのが辛いところである。
女海賊から、豪華なドレスの女王様、「これはオスカルですね」という軍服姿まで、天海祐希はやっぱり「ハレ」の衣装が似合う。
天海祐希にどんな衣装を着せてどんな格好をさせようかと、中島かずきはもの凄く楽しんで書いたに違いないと思う。
すらっとした長身の天海祐希と並んで、でもやっぱり格好良く見える古田新太はやっぱり凄いとも思う。
最後はもちろん、大団円。
アンヌを女王に仕立て上げた張本人のガファス将軍は、実は大宰相一派の手先だった、というところから始まって、「アンヌが偽物だという証拠の肖像画は偽物だ」と暴かれ、「アンヌが持っていた左目の眼帯に隠されていたコインからアンヌは本当に前王の娘だ」ということが明らかになり、「そのことを知っていたからこそ、本物のアンヌを偽物に仕立て上げて殺そうとした大宰相一派の企み」が白日の下にさらされ、大チャンバラ劇が展開された後、王太子様が上品に「こんなところにいては、エンディングの邪魔になります」とおっしゃってエンディングに突入する。
やっぱり、格好良さを追及するところと、力を抜いて笑いを誘うところと、その緩急の激しさが楽しい。
アンヌは女王としてこの国を率いて行く、ポニーやエリザベッタも協力してくれる。
五右衛門は、海賊の頭領となって七つの海にこぎ出してゆく。何故か豹之進も海賊に加わっている。
伏線も全部すっきり納め、ハッピーエンドの大団円。
私好みのエンディングだ。
あー、ほんと、ハラハラドキドキしながら、テンポ良く進む展開の激しいお芝居を堪能した。
コスプレあり、陰謀あり、笑いあり、友情と恋愛(未満、かも)あり。
これぞ、エンタメの王道である。
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コメント
なおみ様、コメントありがとうございます。
1階席の前方と後方から観劇されたなんて羨ましい!
私も実はもう1回見に行く予定なのですが、再び2階席なのです。少々忙しいですが、オペラグラスを覗き、全体を眺め、というのを繰り返すことになりそうです。
「薔薇とサムライ」の本ちらし・・・。
黒を基調としたものと、赤を基調としたものと、でしたっけ???
もの凄く自信はないのですが、2種類見たような気もしなくもない、感じです。
投稿: 姫林檎 | 2010.04.14 21:23
お久しぶりです。
私も「薔薇とサムライ」を観ました。
今回は前の方から1回、1階席の後ろの方から1回の観劇でした。
前の方で見た時は映像のよさが全然分からなかったのが勿体なかったです。
お芝居とは直接関係ないですが、今回のお芝居の本ちらしを全然見かけなかったのですが、姫林檎さんは入手されましたか?
ポスター同様2種類あるっぽいみたいなんですが、全く見かけなかったのがちょっと悔しい今日この頃です。
投稿: なおみ | 2010.04.12 12:28
並木さま、初めまして(ですよね?)&コメントありがとうございます。
並木さんも今週に見に行かれるのですね。
どうぞしっかり堪能していらしてくださいませ。
ホント、楽しいですから!
投稿: 姫林檎 | 2010.03.22 10:21
サニーさま、お久しぶりです&コメントありがとうございます。
「薔薇とサムライ」来週(もう今週ですね)ご覧になるのですね!
どうぞ堪能していらしてくださいませ。
そうそう、古田さんって舞台の上に立つとどうしてああも艶っぽく格好良いのでしょうね。
あの格好良さを伝えるには、やっぱり、一緒に舞台を見に行くしかないかも知れませんね(笑)。
投稿: 姫林檎 | 2010.03.22 10:20
初めまして。私は来週観に行きますが、読んでるだけでも面白そうな舞台だなと感じるから実際の舞台は凄いんだろうな…ホントに楽しみですわ。
投稿: 並木 | 2010.03.22 07:29
姫林檎さん、こんばんは。
ご無沙汰しております。
私は、来週観に行く予定です。
なので、さらっと流し読みさせて頂きました(笑)
古田さんが舞台だと格好く見える、には凄く同意です!!
特に新感線の舞台だと何とも言えない色気を感じるんですよね☆
観終えたら、また姫林檎さんの感想じっくり読ませて頂こうと思います~。
投稿: サニー | 2010.03.20 22:19