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2010.09.30

「美女と野獣」を見る

「美女と野獣」
日本語版台本・訳詞・演出 浅利慶太
作曲 アラン・メンケン
作詞 ハワード・アッシュマン
    ティム・ライス
出演 飯田洋輔/坂本里咲/林和男/田島亨祐
    百々義則/赤間清人/吉谷昭雄/竹原久美子
    大和貴恵/長橋礼佳/川原信弘/牧野友紀 ほか
観劇日 2010年9月28日(火曜日)午後6時30分開演
劇場 四季劇場夏 11列36番
上演時間 2時間50分(20分の休憩あり)
料金 9800円

 ロビーでは、歌舞伎座で売っているような厚みのパンフレット(値段はチェックしそびれてしまった)や、赤いバラが目立つ「美女と野獣」関連グッズが販売されていた。
 四季劇場(夏)に初めて行ったと思うのだけれど、売店はあるけれどカフェはない。お手洗いもかなり混雑していたのが意外だった。何というか、劇団四季であればそういう周辺環境はバッチリなのではないかと思っていたのだ。

 ネタバレありの感想は以下に。

 劇団四季の公式Webサイト内、「美女と野獣」のページはこちら。

 劇団四季のミュージカルは、10年以上前に友人に「キャッツ」と「オペラ座の怪人」を見に連れて行ってもらい、連れて行ってもらったにも関わらず2本とも途中で寝てしまい、「もう二度と一緒に行かない」と言われて以来、足を向けたことがなかった。
 人気の公演でチケットを取るのも大変だったろうし、友人の気持ちもよく判る。
 前日、海外旅行から帰国したところで時差ぼけと寝不足が重なり、今回もかなり危ぶまれたのだけれど、意外と面白く見てしまった。

 「美女と野獣」は、これまたかなり以前にディズニーアニメの映画を見たことがある。
 覚えているのは、大まかなストーリーと、ラストシーンで野獣が王子の姿に戻ることができるのだけれど、戻った後で「野獣のときの方が格好良かったじゃん」と思ったことだけだ。

 始まってしばらくの間は「やけにチープだなぁ」というのが感想だった。
 大体、物語のアウトラインを(王子が野獣になってしまった由来を語る回想シーンであるとはいえ)ナレーションで説明するというのはどうなんだろう。のっけからチープ感たっぷりである。
 舞台セットも書割りのようだし、出演者はマイクを使っている。
 オケピがないし、どう見ても生オケではなくテープで流していると思われる。
 歌も圧倒的なほど上手くはない。というよりも、そもそもどの歌も「斉唱」で、全員が主旋律を歌っているようにしか聞こえない。

 演技もひたすらステレオタイプである。何というか、手を大きく広げて手のひらを見せ、口を「O」の字に開ければ驚いていると表現できる、と地で言っている気がする。
 ある意味、判りやすいけれど、この単純な判りやすさは子供だまし過ぎやしないか。
 確かに、平日の18時30分開演の公演なのに、結構たくさんの子どもがいたのだけれど、それにしてもあんまりだ。

 でも、一幕の後半辺りから、ステレオタイプな感じが段々気にならなくなってきた。
 林和男演じる父親の身代わりになって、飯田洋輔演じる野獣の住む城に残った坂本里咲演じるベルが、城を歩き回り、王子をワガママ一杯に育てた罪で城の調度品に変えられてしまった召使たちと意気投合し、歓迎され、城を探検し、歌って踊る。
 それまでも単発で花火が光ったりしていたのだけれど、ショーという感じで、ストーリーとはほとんど関係なく、全員で歌って踊るシーンというのは文句なく楽しい。
 ストーリーや演技や歌ではなくて、ショーを楽しむのだと割り切ると、これはなかなか楽しいのだ。

 そしてまた、ステレオタイプな演技も、特にほとんど顔の表情が見えない野獣を見ている分には、判りやすくて可笑しい。
 最初のうちは、召使たちもここで「野獣」である王子が恋に落ちてくれないと自分たちが人間に戻る機会を永遠に失ってしまうし、野獣としてもベルに愛されなければ王子の姿に戻る機会を永遠に失ってしまう。
 かなり打算的に、ベルを「若い女の子」としか見ていなかったわけだけれど、段々、ベル個人を見るようになっていくのが判る。
 気がつくと、ちゃんと物語を見せるようになっているのだ。

 そして、ベルが城を飛び出して狼に囲まれたところを野獣が傷つきながらも救ったことで、2人はあっという間に恋に落ちる。
 またもやチープな展開なのだけれど、この辺りまでくると既にその予定調和な感じが癖になっているのか、「そうそう、そろそろ恋に落ちないと2時間50分じゃ収まらないからね」などと寛大な気持ちになってくる。
 「判りやすいきっかけってやっぱり必要よね」という気持ちになるから不思議である。
 そうなると、今度は、判りやすく恋に臆病になる野獣の逡巡もいいもののように見えてくる。
 今回野獣を演じた飯田洋輔の声がいいのもよかった。

 父親が森で迷っているところを、野獣の魔法の鏡で見て動揺したベルに、野獣は「父親のところに行け」と送り出す。
 しかし、父親と一緒に家に戻ったベルは、村人たちに魔法の鏡で野獣の姿を見せてしまい、田島亨祐演じるベルに振られたガストンは、ベルが野獣に惹かれていることを見抜いて、村人たちを「野獣を倒せ」と煽り立てる。

 全てにおいて、ステレオタイプな展開だし、ステレオタイプな演技である。
 でも、そう文句を言いつつも、ガストンと野獣が格闘しているときに、ガストンが後ろから野獣を襲おうとした瞬間、素で「あっ」と言ってしまったのは私である。
 我ながら、ナサケナイ。

 そして、最後に「このバラが散るまでに愛して愛されることを知るようにならなければ魔法は永遠に解けない」と言われたバラの花が散り、野獣がガストンに受けた傷が元で死んでしまう瞬間、ベルが野獣に愛を告白する。
 よしよし、ここまで来たら、完璧な大団円を目指してもらいたいものだ。

 そして、野獣が(多分)宙吊りになり、舞台が暗くなり、花火が散り、野獣の姿を隠れた一瞬後、彼は王子の姿になって現れたのだった。
 何の関係もないけれど、この瞬間、引田天功を思い出した私である。

 アニメでも思ったのだけれど、舞台で見ても、やっぱり王子様は野獣のときの方が格好良かった。
 でも、何だかんだ言いつつも、ステレオタイプな大団円は安心して見ていられて、ダンス(特に群舞)も衣装も歌も楽しめて、なかなかお得な舞台だった。

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コメント

 ぐーぐー様、コメントありがとうございます。

 「キャッツで落ちた」という方が私の他にもいらっしゃって、ほっとしました。カミングアウト、ありがとうございます(笑)。

 私の感想も四季ファンの方が読んだら、腹立たしいのかも知れません・・・。
 でも、今回の「美女と野獣」を楽しんで見たことは本当なのです。

投稿: 姫林檎 | 2010.10.01 23:35

はははは、同じだ。
私もキャッツでおもいっきり寝て、友達に「人非人」といわれたことが有ります。とにかくアサリ「演出」がすべてだから、演じる役者によって「差」がでないようにわざとステレオタイプにやってるのかなあと思ったり(←四季ファンの人がみたらヤバイですね)。まあ、そのわずかな「差」を探しに何回も見にいくんでしょうけど、ファンの方々は。

投稿: ぐーぐー | 2010.10.01 11:01

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