「鋼鉄番長」を見る
2010年劇団☆新感線三十周年興行【秋】豊年漫作チャンピオンまつり「鋼鉄番長」
作・演出 いのうえひでのり
出演 橋本じゅん/坂井真紀/池田成志/高田聖子
粟根まこと/田辺誠一/古田新太
右近健一/逆木圭一郎/河野まさと/村木よし子
インディ高橋/山本カナコ/礒野慎吾/吉田メタル
中谷さとみ/保坂エマ/村木仁/川原正嗣/前田悟 ほか
観劇日 2010年10月8日(金曜日)午後6時開演
劇場 サンシャイン劇場 1階13列6番
上演時間 3時間10分(20分の休憩あり)
料金 10500円
思わず3000円也のパンフレットを購入してしまったくらい、楽しかった。
ネタバレありの感想は以下に。
諸般の事情により、最初の15分を見逃したのが痛い。
けれど、見始めて少ししたところで、その後の展開を見る上ではほとんど支障ないことが判った。いわゆる「ネタもの」のお芝居だし、ポイントはあくまでもキャラとネタにあるのであって、ストーリーは「まあ、判ってもいいよね」というところに落ち着いてしまった。
橋本じゅん演じる鋼鉄番長は、(どうも最初の15分に色々あったらしく)保坂エマ演じるアイドルの沢々尻モニカを救い出すべく、聖アンガー学園に乗り込む。ついでに、聖アンガー学園の悪事を暴いてぶっつぶしてやる、という目的もあるらしい。
しかし、パッと見、保坂エマが沢尻エリカに見えるところがポイントである。
顔立ちが似ているのか、メイクが特殊だからそこを同じにすれば似て見えるのか、いずれにしても「発見」の勝利だ。
乗り込んだ聖アンガー学園では、早速不良に絡まれ、あっさりと電池切れで負けそうになったところを、坂井真紀演じる浅見山サツキに救われる。
龍馬伝にあやかってしゃべり始めたという土佐弁が限りなく胡散臭く、でも、今時珍しい正統派のセーラー服と、「ま」と「つ」が余計に入った名前、武器がヨーヨーではなく剣玉という辺りのネタがすぐ判るのが嬉しい。
そうそう、ターゲットの年代はここよね、土佐弁をしゃべっていたのは斉藤由貴じゃなくて南野陽子だっけ、と妙な親近感が湧くのである。
浅見山が撃退した後に出てきた、高田聖子演じる生徒会副会長の権田原ユカのいかにも「裏番、張ってます」という感じの作られた上品さと怪しさ満載の感じが楽しい(しかし、彼女が何かのパロディだったかどうか、判らなかった自分が悲しい)。
判らなかった自分が悲しいといえば、古田新太演じる聖アンガー学園理事長兼生徒会長(ここからして胡散臭い)の天王寺天牙の登場が、多分、韓流スターの誰かのパロディなんじゃないかと思うのだけれど、それが誰なのかが判らなかったのが悲しかった。
それはともかくとして、シルエットで登場した古田新太を見て「田辺誠一が生徒会長か?」と思ったのは、多分、私だけじゃないと思う。少なくともあと1人か2人はいた筈だ。なぜなら、古田新太がちょっとびっくりするくらい痩せていたからである。
そして、前髪の一部だけを長くした(デビュー当時のチェッカーズに近い感じ)髪型で、何故かチャイナ服で、気障〜に「ナイスですね〜」を繰り返す姿が、これまたやけに格好いい。
もちろん、この姿で「実は悪の親玉さっ」という悪事の数々を自ら語ってくれたり、にこやかに語っていたのに一瞬のうちに冷徹な目になったりしたときの格好良さが彼の真骨頂である。
私が一瞬生徒会長と間違えた田辺誠一は、沢々尻モニカと追っかけてきた永遠のアイドル(40歳)の、土方夢知彦となって現れた。
格好は、もう、明らかに間違いなくマッチである。(と言って、判る人の方が今や少数派なのか?)フルネームを書くと近藤真彦である。
なるほど、近藤真彦・近藤勇・新撰組隊長・新撰組副長・土方歳三・土方夢知彦という連想で役名が土方なのか、と私は本当に今書きながら気がついた。
それはともかくとして、この判りやすいアイドルを田辺誠一がやけに楽しそうに演じているのがよかった。極々真面目な顔でスケバン刑事を演じる坂井真紀も見事で、2人のゲストが意外なような素顔のような顔を見せるのが楽しい。
しかも、このアイドル土方と来たらとんでもない奴で、二枚舌とか表と裏の顔とかそういう単語をこれほど判りやすく具現化した人もそうはいないだろうという感じである。
「アイドル」としてのドキュメンタリーを撮影中はやけに「誠実ないい人」だったのに、撮影が終わった瞬間からとんでもなく底意地悪い顔を見せ、でも相手が自分より強いとなるとまたコロっと転んで土下座してみせる、みたいな。
結局、コイツがいい奴なのか悪い奴なのかは、最後まで判らなかった。
最後までいい奴なのか悪い奴なのか判らなかったのは、池田成志演じる井尻亀吉もそうである。
「ドッカーン」と言いながら両手両足を広げて見せるポーズで登場し、以後、ひたすらドカンドカン言っている。
聖アンガー学園の生徒指導だか何だかの役割を担っている教師だし、天牙生徒会長らの悪巧みの席にもいるし、判りやすく悪役だよと思っていたら、最後の最後に「潜入捜査をしていたんだ」と言い放つのだから呆れる。
それを「私たちもお客さんの誰もが予想していなかったと思う」と台詞でしゃべった高田聖子も流石である。
まあ、彼の裏切りはそれほど功を奏していなかったので、まあ、どちらでもいいということだろう。
あと私が判ったパロディは、山本カナコ演じるギャルソネっぽいギャルカナとか、右近健一演じる假屋崎省吾っぽい九竜伊崎(くるいざき)教頭(この教頭は何故かお尻の割れ目で華道をするという特技を持っている)とか、中谷さとみ演じる何かの理由で生徒会傘下のスケ番から学園の畑を耕すよう農園に落とされて「ありえない」が口癖だったからいつの間にか「その日暮らしのアリエッティ」と呼ばれるようになった娘とかくらいだろうか。
「アバター」も出てきていたけれど、これは映画のタイトルは知っているけれどタイトルしか判らないので「判った」うちには入らないだろう。
こういうネタものでネタが判らないことほど悔しいことはない。
返す返すも悔やまれる。
もちろん、最後には学園側と鋼鉄番長側とが派手に立ち回りを演じて戦い、最終的に天牙生徒会長は滅び、副会長・校長以下は何故か学園の農園を引き継いで農作業をやっていくことになり、鋼鉄番長は「次は女子校に潜入して売春組織を壊滅させる」というサツキの甘い(?)言葉に乗せられて次の仕事に向かって行く。
・・・というところで幕である。
これはもう、文句なく楽しい。
2回目だったか3回目だったかのカーテンコールでは、場内の半分くらいが立ち上がっていた。
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