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2010.10.24

「ジョアンナ」を見る

わかぎゑふ 新神戸オリエンタル劇場 芸術監督就任記念「ジョアンナ」
脚本・演出 わかぎゑふ
出演 安寿ミラ/葛山信吾/宮本大誠/野田晋市
    千田訓子/美津乃あわ/斉藤レイ/原川浩明/有馬自由
観劇日 2010年10月23日(土曜日)午後5時開演(千秋楽)
劇場 シアター1010 4列3番
上演時間 2時間25分(15分の休憩あり)
料金 7500円

 ロビーでは、パンフレット(1000円)が販売されていた。

 ネタバレありの感想は以下に。

 ステンドグラスが配された奥の壁に、開いたり閉じたりできる弧を描く壁が左右にある。
 何と言えばいいのか、観音開きの様に壁が開け閉めできて、かつその壁はカーブを描いている、というセットである。
 最初はそのセットが半ば閉じられた状態で、私の席はかなり前方の一番端だったので、「このまま芝居が進行したらどうしよう、見切れる部分ばっかりじゃないか」と思っていたのだけれど、開け閉めできることが判ってほっとした。
 それでも、やっぱり片方ずつ閉じたり完全に閉じたりするシーンも結構あって、そういうときにはかなり見えない部分もあるのがちょっと悔しかった。
 席によって役者さんが見えたり見えなかったりしないようなセットにしてもらいたい、というのは、無理な願いなんだろうか。

 最初のシーンは、原川浩明演じる大司教(だったと思う)が修道士を前に、「フランス国王の命でテンプル騎士団を異端として扱う」みたいな説教をする場面だった。
 この説教が結構長い。
 割と広めで暗い舞台に赤い衣装の偉そうなお坊さん(というか、カトリックだから神父さんか?)が立ち、延々と、耳慣れない話をするので、今ひとつ入り込めない。
 でも、ここでこのお芝居全体を貫く時代背景なり、カトリックを取り巻く状況なりが語られることになる。

 その長い説教の後、場面はそのフランスのペドロ大司教が葛山信吾演じる路取り後をイタリアから呼び寄せ、テンプル騎士団の一件を語り、行方をくらましている隊長の子どもがシエナにいるので、隊長をおびき寄せるエサにすべく、パリまで騙くらかして連れて来い、と命じる。
 言葉遣いは「依頼」だけれど、絶対に断れない命令なのは一目瞭然である。
 このシーンに入る最初、千田訓子演じるメイドが「庶民の噂」を語ってくれるのは、多分、現状把握のダメ押し兼サービスなのだろう。

 で、その隊長の子どもというのが宮本大誠演じるアルフォンソと、安寿ミラ演じるジョアンナの兄妹である。
 この兄妹の宗教問答のような時間がまた長い。
 ジョアンナの賢さを見せるシーンなのだと思うのだけれど、如何せん長い。しかも、お題は宗教で神学だから、馴染みのないことこの上ない。しかも、題材に馴染みがないので、ジョアンナがどれほど鋭いことを言っているのか、今ひとつピンと来ない。
 どちらかというと、兄のアルフォンソの大きさ(そうやってつっかかってくるジョアンナの相手をし、決して負けず、彼女を高める方向に導き、この賢い妹を持てたことを神に感謝する。イヤになるくらいできた人物である。

 買い物にでかけようとしてジョアンナはテンプル騎士団のことを知り、逃げようと兄と相談していたところへ、テンプル騎士団縁の者だと大嘘をついてロドリゴがやってくる。
 そして、まんまと兄妹を騙してパリに連れて行くのだ。
 この、連れて行く過程は一切カットで、次のシーンでは、兄妹はパリの小さな教会に到着する。
 展開が早いのか遅いのかよく判らない。

 何の脈絡もなく、今度は斉藤レイ演じる貴婦人(というにはちょっと「貴」の部分が少ないような気がしなくもない)が、美津乃あわ演じるお針子のマリアにドレスの仮縫いをしてもらっているところに、野田晋市演じるモントレーという男(多分、身分は高い、でもイヤな奴)が帰って来る。
 この2人の関係がいわゆる「愛人関係」であることに、かなり長い間気がつかなかった私は相当のマヌケである。

 で、1幕の終盤近くになって物語は突如として動き出し、ジョアンナ兄妹のいる教会にやってきたモントレーがアルフォンソを刺し殺し、その計画を聞いていたお針子のマリアはジョアンナに警告して彼女を逃がす。
 ジョアンナは、修道士に混じって食事をするため僧衣を着ていたのだけれど、おかげでパリの街を歩いていても本物の修道士と間違われ、教会の前に思わず座り込んでいると、そこに有馬自由演じるボッソが出てきて、彼女を招き入れる。
 自分が着ていた僧衣がテンプル騎士団のものではないとボッソに教えられ、ジョアンナは自分が罠にはめられたことを知る。

 このボッソというじいさんが、なかなかいい味を出している。
 目が不自由ということなのだけれど、僧衣に触っただけでどこの修道士会のものか当てて見せる。
 それなら、ジョアンナの手を握っているのだから、女だと気付よ! というのが私のこのシーンの感想である。
 なのに、何故か気付かない。
 ジョアンナを親切に招き入れ、会話を楽しみ、何やら含蓄のあることを語る。怪しいけれど、好人物に見える。

 そこへ、宮本大誠が二役で演じるアルベール後言うボッスの弟子らしい男がやってくる。ドイツ皇帝フィリップが何やら難題をボッスに突きつけて来たらしい。
 ボッスはそれを引き受け、ジョアンナに同道してイタリアまで行くように持ちかける。
 兄の俤を持つアルベールが気になったのか(多分、違う)、ボッスにテンプル騎士団に何やら遺恨あることを見抜かれたためか、ジョアンナはその申し出を受け入れる。

 で、多分、ここで休憩である。

 休憩後は、カトリックの仕組みが今ひとつもみっつも判らない私は多分把握できていないのだけれど、とにかく教皇は現在のところアヴィニヨンに幽閉中で、彼を引っ張り出すわけには行かないので、ドイツ王が求める儀式を行うために、1日だけの代理教皇を立てる、ということになったようだ。
 その選任は神学問答によって行われ、ボッスとペドロが仕切り、ジョアンナ(修道士としてはジョバンニと名乗っている)とモントレーが候補者ということになっている。
 何故そうなる?

 その疑問は、一応、ボッスとペドロが密談し、ボッスはペドロのことを罵りまくるのだけれど、どうもそれは「どうしてお前がフランス王を押さえられなかったのだ。カトリック教会の名折れだ」というような論調である。
 要するに、ボッスもペドロも2人とも「カトリック教会の権利拡大」のために日夜奔走する政治向きの人々であり、決して、ペドロが悪でボッスが善などという単純な図式ではなかったということがここで明かされる。
 そうだったのか。
 ボッスはてっきりとことんいい人だと思っていたのに。

 ジョアンナを候補に立てたボッスの意図は、出来レースで負けさせること、だったらしい。
 モントレーは、愛人の(そういえば、彼女の名前を覚えていない)女に、ジョバンニを誘惑するよう言い置いて、「ローマで愛人宅にいるわけには行かない」と去ってゆく。
 女の方は、俄然やる気を出して、代理教皇になる試験から逃げだそうとして女ものの服を探していたジョバンニを屋敷に連れ込む。
 そこに、「モントレーの警護をする者だ」「モントレーの周囲に怪しい者は置いておけない」とやってきたのがロドリゴなのが楽しくご都合主義である。

 ロドリゴから一件の裏を教えられ、一度はやはり代理教皇になるための神学問答など出るのは止めようとしたジョアンナだけれど、アルフォンソが見せしめにさらされ、それを知った父親がスペインに逃れたことを聞かされ、今回の「代理教皇」の選抜試験に、彼女を不幸にした面々が勢揃いすることを聞き、ついでにロドリゴに「復讐のための絶好の機会だ」と唆されて、すっかりその気になる。
 ちょっと待て。
 自分たち兄妹を騙したロドリゴをそんなに簡単に許し、信用していいのか。
 彼女の心変わりには、どうもロドリゴが語った自身の生い立ちが関わっているらしいのだけれど、これまた、宗教的素養のない私には彼の言っていることはよく判らなかったのだった。
 多分、ここが判るか判らないかが、そのまま、ジョアンナがロドリゴを許して信頼してついでにちょっと恋したことに納得できるかどうかの分かれ道になっている気がする。

 そして、教皇の代理を決める試験が行われ、モントレーがジョバンニをやっつける筈の第3問で、模範解答を示したモントレーに対し、ジョアンナは、ロドリゴに聞いた話を頭の中でぐるぐるさせつつ、何やら熱狂的な回答を演説し、聴衆からも熱狂的な支持を得る。
 このジョアンナの演説も、実は意味がよく判らなかった・・・。

 変わり身の早い(諦めのいい、とも言う)ペドロとボッスは、「子犬に手を噛まれた」「貸しておくぞ」と一言二言でこの場の収拾を諦め、ジョバンニを教皇代理と決める。
 ペドロに握手を促されたモントレーは、突然、「俺は女の顔は忘れない」と非常に役に合った台詞を豪語しつつ、あなたはテンプル騎士団の隊長の娘のジョアンナでしょう! と言い切る。
 しかも、教皇になるためには、穴の開いた椅子に座らされ「男である」ことの確認をされるのだと、これは儀式で決まっているらしいのだ。
 割と、馬鹿馬鹿しい。
 でも、どうも実話らしい。
 そんなに、女性を教皇にしたくないのだろうか。(無知な疑問で申し訳ない。)

 ロドリゴの強力で無事にこの「最後の試験」を突破したジョアンナは、代理教皇の座に就く。
 私はてっきり、代理教皇の地位に就いたジョアンナが、例えばテンプル騎士団の正当性を宣言するなどして「復讐」を果たすのかと思っていたのだけれど、テンプル騎士団弾圧の指揮を執ったペドロや、兄アルフォンソを殺したモントレーに試験で打ち勝ち、その名誉を地に落とすことがジョアンナの「復讐」だったらしい。
 それほど、彼らが窮地に陥ったとも思えないのだが、どうだろう。

 そして、女性の姿に戻ったジョアンナは、ボッスは政治的な人だけれど大切なことも教わった、シエナの屋敷に戻って結婚し子どもを産みたい、ロドリゴにはローマ・カトリック教会でとことん上り詰めてもらいたいとロドリゴに別れを告げ、去ってゆく。

 そこで幕である。

 ロドリゴとの道行きのシーンや、ジョアンナがボッスの弟子達の中で認められてゆくシーンなどがあると、もっと味わい深かったんじゃないかな、という感じがする。
 そういう「もっと」が欲しい感じのする舞台だった。

 千秋楽であり、安寿ミラのファンが多かったのか、ファイブコールで最後にはスタンディングになっていた。

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