「愛知のオンナ」を見る
Theatre劇団子 24th act「愛知のオンナ」
作・演出 石山英憲
出演 斉藤範子/田中千佳子/沢城みゆき/阿部英貴
観劇日 2010年10月9日(土曜日)午後2時開演
劇場 座・高円寺2 G列7番
上演時間 1時間15分
料金 2500円
観客全員に配られるフライヤーというのか、出演者紹介などなどが入ったチラシがA3サイズの裏表カラー印刷で、お金をかけているんだな、というのが第一印象だった。
過去の上演作品のDVDやTシャツなども販売していて、その辺りは「シアター!」で描かれていたままである。
パンフレットを販売していたかどうかはチェックしそびれてしまった。
上演後、出演者4人によるアフタートークがあった。
ネタバレありの感想は以下に。
何というか、一言で言うと「惜しい」という感じだった。
300席弱の客席はほぼ満員で、意外なことに男性が多い。過半数までは行かないにしても、半分近くは占めていたのではなかろうか。Theatre劇団子をモデルにした(らしい)有川浩著「シアター!」と同様、声優として活躍しているという沢城みゆき効果なのだろうか。
舞台は、いきなり回想シーンから始まる。見ているときは、それが回想シーンだとは気がつかない。ただ「暗い」「意味ありげな」シーンだという印象があるだけだ。
体育館なのか、ガランとした場所にジャージの男性が正座している。ピクリとも動かない。
そこに、忘れ物を取りに来たらしい、同じくジャージ姿の女性が入ってくる。灯りを点け、忘れ物を見つけ、無言で正座している彼を見つける。
「一緒に帰ろう」と肩を叩くと、その男性はカタンと倒れてしまう・・・。
ストーリーは、沢城みゆき演じる結婚を間近に控えた泪(るい)が、故郷の愛知に披露宴で上演するビデオを撮影しに来たところから始まる。
阿部英貴演じる式場専属なのかビデオを構えた男性と、どこで撮ろう、まだ被写体が来ないと話している。このカメラマン(ということにする)が、とにかくすぐ怒る、かなり感じの悪い人物である。割としっかりした女の子に見える泪がどうしてこんなプロに頼んだのか、訳が判らない。
というよりも、このカメラマンの性格をこう設定した意図は何だったのだろう。
そこへ、泪の中学時代の友人である田中千佳子演じる愛がかけつける。
披露宴で流すビデオに中学時代の友人としてコメントを入れるべく、駆けつけてきたのだ。地元に残り、どんな仕事をしているのか、結婚しているのか、その辺りはよく判らないけれど、明るく、調子よく、でも地に足をつけて人生を歩んでいるオンナ、という風情である。
そして、この愛は、冒頭でジャージ姿で登場した女性と同一人物らしい。
泪と愛の会話から、中学時代は彼女たちは演劇部だったこと、演劇部の仲間にもう一人、斉藤範子演じる瞳という女性がいること、泪と瞳には何やら確執があって泪は瞳を披露宴に招いていないこと、ところが口止めされていたのに愛が瞳に披露宴のことも今日の撮影のことも話してしまったことが判ってくる。
そして、女優をしているらしい瞳がその場に現れた!
この後の展開を急ぐと(別に急ぐ必要もないのだけれど)、ここで再び回想シーンに入る。
舞台は、3人の中学校生活最後の演劇部公演となる文化祭に向けての稽古中である。
阿部英貴が2役で演じる1年生演劇部員の高柳のことを瞳が好きで、でも高柳は泪のことが好きで、そのひどく真っ直ぐな告白を瞳が聞いてしまう、という事件が起きる。
それだけならまだしも、泪のことが好きな高柳が、泪から花粉症を治すよう忠告され、何とか翌日の公演中だけでも抑えようと薬をがぶ飲みし、その飲み合わせが悪かったのか、量が多すぎたのか、稽古場で亡くなってしまう。
それを発見したのが冒頭シーンのとおり愛で、冒頭シーンが繰り返された後、彼女が瞳と泪を呼び、瞳は泪に向かって「高柳君を追い詰めて殺したのは泪だ」と叫んでにらみつけ去ってゆくところまでが演じられる。
ヘビーすぎる。
そして、このヘビーすぎる話はいつの間にかどこかに消え去り、その中学校の公演で着るはずだった衣装を着て現れた瞳は、しかし高柳君のことは一言も語らず、稽古で泪に「そんなことでは女優になんかなれない」と言われたことの悔しさや腹立たしさ、泪が嫌いだったことなどを語り出し、女優として上手く行っていない現在を語り、そして、「私のことを真剣に考えて言ってくれたのは泪だけだった」とそれこそ涙ながらに語る。
だから、ちょっと待て。話のポイントはそこか? 2人が拘っていたのはそこなのか?
・・・という私の疑問は解消されることはない。
今書いていて思ったけれど、一番ひっかかったのはここだったのかも知れない。
ちなみに、3人のオンナの名前はもちろん漫画の「キャッツ・アイ」から取られており、瞳がここで来ていた衣装は、漫画の衣装を彷彿とさせる衣装である。
私のひっかかりはともかくとして、こうして瞳と泪は仲直りし、泪は瞳を披露宴に招待することになる。
カメラマンの男が昔(かどうかは判らないけれど)見て「演じている女優の生き様に感動した」というDVDに出演していたのが瞳だということが判り、瞳の女優としての自信もほんの僅か上昇したようだ。
そして、最後に泪が愛に「もしかして、わざと結婚式のことを話した?」と瞳に聞こえないように尋ね、愛が「お婆ちゃんが愛知のオンナはこうと決めたことはどんな手段を使ってでも成し遂げるんだ」と叫び、泪が「アンタが一番女優だわ」と呆れて呟く。
ここで一旦、暗転し、ふわっと3人のオンナが楽しそうに中学生のようにおしゃべりしているシーンが無音で展開され、そして幕である。
この辺りの仕込みは「やるな」という感じだし、1時間15分楽しんで見たし、大団円を期待して大団円だったし、なのに、何故だか「惜しい」という感想が浮かぶ。
何故だろう。
具体的にこれと挙げられないのだけれど、何となく内向きな感じがしたせいだろうか。
次回公演も見てみたいと思う。
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