「流れ姉妹 たつことかつこ~エンド・オブ・バイオレンス~」を見る
真心一座 身も心も 最終章「流れ姉妹 たつことかつこ~エンド・オブ・バイオレンス~」
脚本・出演 千葉雅子
演出・出演 河原雅彦
出演 古田新太/池田成志/村岡希美/坂田聡
小林顕作/政岡泰志/伊達暁/信川清順
観劇日 2011年2月19日(土曜日)午後2時開演
劇場 前進座劇場 14列22番
上演時間 2時間30分
料金 7000円
前身座劇場に行ったのは10年ぶりとかそれくらいかも知れない。道に迷いそうになって焦った(実際は一本道で非常に判りやすい場所にある)。
ロビーでは、パンフレット(1500円)や手ぬぐい(800円)、Tシャツ(2500円)等々が販売されていた。
ネタバレありの感想は以下に。
真心一座の最終章ということで、第1章、第2章、第3章からの引きはバッチリである。あまりにも前3作との関連性が深いためか、開演前に廣川三憲のアナウンスと映像で「これまでのおさらい」があったのが有り難い。
そして、出演者陣は覚えているのにストーリーをほとんど忘れていた自分が情けない。インプットされていた情報は「たつことかつこの姉妹が、昔殺して青森山中に埋めた母親が実は生きている。姉妹は母親を捜している。」という本当の大筋だけだったということが判明した。
前進座劇場は、花道があるためか、印象として横に広い劇場である。
本多劇場に花道はないし作ったとも思えないので、花道を使ったシーンは前進座劇場だけのものだったんだろう。何だか花道やせりからの出入りがもの凄く楽しそうだった。
最終章だし、ゲストが古田新太と池田成志の2人となれば、それはもうストーリー云々というよりも「たっぷりハレの舞台を見てください」「ケレン味たっぷりに行きますよ」という舞台になるに決まっている。
ガヤ4人衆もパワーアップした無駄に見事な早替えで(誉めているので念のため)そのお祭り気分を盛り上げる。
やはり最終章というのはお祭りだ。
たつことかつこは故郷の小名浜で2人だけの穏やかな暮らしをしようとしていたらしいけれど、そのまま放っておいてもらえる筈もない。
千葉雅子演じるたつこは講談師が語る自分たち姉妹の事情に怒髪天を突いて「すぐ帰る」と飛び出し、そこを狙い澄ましたように村岡希美演じるかつこの元へ河原雅彦演じる保護司の末次から手紙が届いて「お前には兄がいる。訪ねてみろ」などとまたまた翻弄される気配である。
第3章の最後で刺されてしまった、坂田聡演じる元刑務官の谷川は入院加療中だったけれど、やはり翻弄されるべくかつこを探しに飛び出して行く。
かつこは、兄だと名乗る古田新太演じるエディさんと暮らし始めるけれど、池田成志演じる講談師を追いかけて行ったたつこが「兄がどこにいるのか教えろ」と詰め寄っている辺りからすでにしておかしい。かつこの元に届けられた末次からの手紙には「たつこは兄と時々会っていた」ということになっていたのだ。
物語の始めから、破局の匂いがぷんぷんとしている。
それにしても、ゲイで心優しい前向きな男を演じる古田新太も、口から出任せの声のいい講談師を演じる池田成志と、どうしてこの2人はここまで怪しい男を演じさせてハマリ、かつ格好良く見せられるのか。本当に謎である。
谷川がかつこの居所を探し当てて、ゲイの振りをして仲間に入り、たつこの方は何故か講談師に弟子入りしている。
何となく少しずつこの講談師が、実は2人の腹違いの兄なんだということがほのめかされて行く。
ついでに、かつこの保護司である末次が整形手術を受けたらしいなんていう情報も流れる。
前半は、カタルシスよりもお祭り重視という感じで、全ての謎に解決をつけるというよりは、最後のこの時間を惜しもうという感じに見えたのだけれど、後半になるに従って、最終章らしい、「よしっ、一気にカタルシスに持って行くぜ」という雰囲気がどんどん高まって行く。
エディさんはかつこの兄ではなかった、末次が「兄の振りをしてくれ」と頼んだということが判り、かつこは実はゲイではなかったエディさんに陵辱されるというところまではお約束なのだけれど、今回は「やっぱりできない」と言うエディさんに「やれ」と立場が反転してかつこが引っ張るところが最終章らしいどんでん返しである。
一方のたつこは、実は兄である講談師と恋に落ちることもなく、でも、何故か兄までがバスタオル姿になって、子どもの頃の約束を守るべく一緒に母を殺そうとするけれど、それをかつこに阻止される。
一般人になった筈の(というか、そもそも刑務官にだって逮捕権限はなかったと思うけど)谷川から、父親殺しを償えと言われて観念するこの兄もよく判らない。
兄だと言われていたエディさんに「兄さん」と呼びかけることができなかったかつこと、子どもの頃から兄ちゃんと呼べずにいて、別れたときに「次に会ったときには兄ちゃんと呼んでくれ」と言われたことも忘れていたたつこは、何だか真逆な方向を向いているけれど、やっぱり姉妹である。
そうして、この兄がどうして「末次ちゃん」になって主にかつこの人生を引っかき回していたのか、ということはよく判らないまま、たつこは母殺しを諦め、でもその母がその後どうなったかはやっぱり何も語られないまま、物語は大団円を迎えた、ように見える。
かつこは赤ちゃんを産んで母子で小名浜で暮らしているらしい。結婚した谷川がよく遊びに来ているらしい。兄がその名を騙っていた保護司の末次は再び兄の保護司となったようだ。たつこは何故か袈裟懸けで同じく修行中の身らしいエディさんをお供に従えて獣道を進んでいる。
訳が判らないじゃないか。
大団円だけれど、謎をいくつも放っておいたまま、でもかつこもたつこも楽しそうに暮らしているからいいか、という感じ。
やはりカタルシスというよりもお祭りっぽい、でも相当に濃いお祭りの最終章だった。
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