「TRAIN-TRAIN BOY'S VERSION」を見る
LEMONLIVE vol.8 「TRAIN-TRAIN」
作・演出 斎藤栄作
出演 遊井亮子/半海一晃/みのすけ(ナイロン100℃)
植本潤(花組芝居)/浅野雅博(文学座)/山本芳樹(Studio Life)
観劇日 2011年7月23日(土曜日)午後1時開演
劇場 下北沢 駅前劇場 Aブロック17番
料金 4500円
上演時間 1時間45分
ネタバレありの感想は以下に。
衣装はどうなっているのかな、GIRL'S VERSIONと同じ生地を使った衣装なんだろうか、それとも色目を変えてくるんだろうかと思っていたら、同じ生地で男性陣の衣装も作られていた。
両方に出演している遊井亮子と山本芳樹の衣装は同じである。なるほど。
開演前のBGMは、ちょっと懐かしい(多分、20年以上前の)流行歌(いや、今はJ-POPと言うのか?)が選ばれていて、GIRL'Sのときはヴォーカルが女声、BOY'Sのときはヴォーカルが男声だった。この辺りも男女ダブルキャストの遊び心だろう。
でも、開演のときに流れる曲は、両バージョン共通でpsy'sの曲だった。2回聞いてやっと誰が歌っていた歌か思い出したのだけれど、曲のタイトルは思い出せない自分がちょっと悲しかった。
家に帰って調べたところ、恐らくこの曲は「Lemonの勇気」だと思うけれど、よくよく考えたらCDを聞き流していたので、元々私はタイトルを知らなかったような気もする。
ところで、BOY'S VERSIONを見て、私は自分が根本的な誤解をしていたことに気がついた。
あれだけチラシ等にも「ダブルキャスト」と書かれていたのに、この両バージョンは裏表の関係にあると思っていたのだ。この2つの公演は同時進行の物語で、片方を見ればもう片方の事情が判るというような関係になっていると思いこんでいた。
実際のところは、本当にダブルキャストのお芝居で、ほぼ同じ台本を違う役者さんが演じていたのだった。
というわけで、昨日、GIRL'S VERSIONを見て疑問に思っていた「新郎宛の手紙」の謎が、BOY'S VERSIONを見て氷解するということもなかった。自分の勘違いとはいえ、ショックである。
確かLEMON LIVEのブログで、GIRL'Sの「動」に対してBOY'Sの「静」と作・演出の斎藤栄作が書いていたと思うのだけれど、その違いを主に生み出しているのは新郎新婦の親友役のお二方のような気がする。
先にこの「動」と「静」というコメントを読んでしまったので、どちらかというと「言うほど静じゃないじゃん」と思っていたのだけれど、落ち着いて思い返してみると、お芝居のテンポを決めていたのは、最初に「私の事情」を語ったみのすけのように思う。
展開は、(脚本の9割は同じだというのだから当たり前だけれど)GIRL'S VERSIONとほぼ同じである。
設定として違っているのは、浅野雅博演じる「兄」と新譜である彼女との関係で、こちらでは教師になりたての「兄」と高校生の「彼女」とが出会い、彼女からもらった「一目見てそれは義理チョコですね」という感じの板チョコをバレンタインデーにもらって後生大事に持っていた、と変わっている。
板チョコの方が、渡せなかった本気チョコよりも、保存状態はいいような気がする、などと間抜けなことを考えてしまった。
演じる役者さんたちの年齢の問題もあるだろうし、男性教師と女子高生の方が、女性教師と男子高生の方がより怪しい感じがするという(私の思いこみかも知れないけれど)イメージの問題もあるだろう。
だからなのか、演じた役者さんの狙いなのかは判らなかったけれど、「姉」よりも「兄」の方が、どちらかというとまだ「いい人」の範疇に近いところにいるような気がした。
そして、新婦の親友は画家だったけれど、新郎の親友は詩人という設定になっている。
結婚式当日まで準備ができていなかったウエディングボードをいつの間にか完成させたというよりは、一行も思いつかなかった新郎新婦に捧げる詩が最後にできたという方が、「らしい」ような気がする。
何となく、先に書かれたのはBOY'S VERSIONじゃないかという気がした。
私が後から見たせいもあるかも知れないけれど、こちらの方がしっくり来たということもある。
好みとしては、BOY'S VERSIONの方が好きだった。
2回目で話の流れを知って見ていたということもあるだろうし、狂言回し役の「10分経過」みたいな運び方に慣れて気にならなくなっていたということもあると思う。昨日は「遊び過ぎじゃない?」とも思ったのだけれど、今日はそういう感想が頭に浮かばなかった。
順番を逆に見ていたらどういう感想になったのか、自分のことながら、気になるところである。
しかし、落ち着いて考えてみると、このお芝居の展開はツッコミどころ満載である。
25年前やら30年前やらに別れたお嬢様や坊っちゃまと、執事や乳母は連絡をとり続けているものなんだろうか。連絡をとり続けていたのなら、どうしてそれまでこんなに長い間会うことはなかったんだろうとか、新郎新婦がキャバクラやホストクラブで知り合った異性を結婚式に招待するものなんだろうか、とか、もしかしてこの新郎新婦も決して「いい人」達ではないんじゃないだろうか。
そしてまた、新郎や新婦を誘拐というか拉致監禁した彼ら彼女らは、その後、結婚式と披露宴に出席したんだろうか。気になる。
ウエディングボードを作成した彼女は結婚式に出席しなくてもそう大きな問題になりそうもないけれど、詩を朗読することになっていた親友が欠席になったら披露宴の段取りは結構混乱するのではなかろうか、とか。
それに、執事と乳母は、新郎新婦の親代わりをすることになっていた筈で、出席できないとなれば大問題である。
ということは、拉致監禁の後、号泣していた彼ら彼女らは、フツーの顔をして出席したんだろうか。
結局、最後まで明かされず、私は未だに判っていない、執事と乳母が書いた手紙には、一体どんな内容が書かれていたのだろう。
どんな内容が書かれていれば、時間になっても現れない相手を、あんなに落ち着いた表情で迎えに来ることができるのだろう。
この辺りの、お芝居としてはどうでもいいような気がする疑問を感じさせるか、感じさせずに押し切るか、そこがポイントのような気がする。
ダブルキャストの異性バージョンを作ることで設定だったり展開だったりに恐らくは多少の無理をしている筈で、その無理を感じさせないためには、やっぱりここまで贅沢な役者陣に演じてもらいたいよなー、と思う。
謎は解けなかったけれど、でも、なんだかんだ両バージョンを見てかなり楽しかった。次のLEMON LIVEの公演も見てみたいと思う。
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