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2011.07.23

「TRAIN-TRAIN GIRL'S VERSION」を見る

LEMONLIVE vol.8 「TRAIN-TRAIN」
作・演出 斎藤栄作
出演
 山本芳樹(Studio Life)/円城寺あや/星野園美/野口かおる(双数姉妹)
 前田綾(演劇集団キャラメルボックス)/遊井亮子
観劇日 2011年7月22日(金曜日)午後7時30分開演
劇場 下北沢 駅前劇場 Aブロック15番
料金 4500円
上演時間 1時間45分

 ロビーではパンフレットが販売されていた。

 LEMONLIVEの公式Webサイトはこちら。

 駅前劇場にはかなり久しぶりに行ったと思う。フリースペースに近い、舞台や客席の形を自由に変えられる空間だったろうか。
 舞台を横から見るブロックの、一番舞台に近い席だったのでかなり俳優さんの後ろ姿を見ることになったのは残念だった。顔を見せてくれー、その相対する形でずっと台詞を言わないでー、と何度か思った。

 このお芝居はGIRL'S VERSIONとBOY'S VERSIONがあって、ダブルキャストという、いわば技巧的なお芝居である。
 その技巧を凝らしているんだろうなというところと、出演者陣の贅沢さで見てみようと思ったので、LEMONLIVEのお芝居を観たのは初めてである。

 舞台奥に向かい合わせのボックスシートが用意され、タイトルのとおり、このお芝居の主な舞台は列車の中である。
 ウエディングタウンと呼ばれる「結婚式のことならどんと来い」という地域に向かって走る列車で、乗客は全て結婚式関係者、列車の乗客同士や車掌の挨拶は「おめでとうございます」だという、私は絶対乗りたくないなという感じの列車だ。
 そのボックスシートに、曰くありげな女が4人(いや、女4人が乗り合わせるまでにもドラマがあるのだけれど)集まり、それぞれが暗い情熱を語って行く。

 衣装が、クリームイエローとローズレッドの、恐らくは同じ地模様の布と、グリーンを基調にした割と大きな花柄のでも落ち着いた布と、その3種類の布を組み合わせて全員分作られていた。もちろん、デザインはそれぞれ違う。そして、新郎新婦を演じる2人の衣装は白いシャツ・白いブラウスが効いている。
 生地が割と張りとツヤのあるものなので、披露宴出席の「ハレ」の感じが出るし、どことも知れない国(何しろ、お金の単位がシリングである)という感じ(統一感なのか閉塞感なのかは微妙なところだけれど)が出ていて、あら、洒落てると思った。

 星野園美演じる新婦の親友は、引き合わされたその結婚相手に一目惚れしてしまい、友人に頼まれたウエディングボード制作に全く手を付けないまま披露宴出席のためにこの列車に乗り込んでいる。
 円城寺あや演じる女性は新郎の元乳母で、新郎5歳の時に別れているのだけれど、亡くなった新郎の母の代役を頼まれて30年ぶりに「坊ちゃま」に会うのだという。
 野口かおる演じるキャバ嬢は、「うちの店」にやってきた男性と公園ボートのデートを重ねていたのに、その彼が別の女を選んだと嘆いて映画ばりの新郎略奪を画策しているらしい。
 前田綾演じるキャバ嬢の姉は教師で、高校(だと思う)の頃に憧れていた教師と妹の思い人が同一人物であることに気がつき、妹を止めるという名目で再開を目論んでやってきたようだ。

 確かに、「失恋したにも関わらず熱い情熱を持ち続けている」女たちである。
 というか、新婦の親友だけは「恋に落ちてはいけない人と恋に落ちてしまった」と思っているけれど、他の女3人は多分誰も「自分は失恋した」とは思っていないような気がする。多分みんな、「チャライ新婦に騙された私の恋人を救い出しに行くの!」と思っているのだろう。
 思い込みが強くて熱い情熱を持ち続けている迷惑な女たち、というのが正しい気がする。
 そしてまた、演じている役者さんたちとそれぞれが演じるキャラが見事にハマっていて、「もしかして素?」と思うシーンがいくつもあった。
 役者さん達の技量と情熱に任せて、遊ぶシーンはとことん遊んでいて、ちょっとやり過ぎなんじゃないか、もうちょっと抑えた方が良かったんじゃないかとも思うけれど、でもそれも楽しい。
 山本芳樹演じるそれぞれの女たちの「相手」の男と新郎と車掌その他諸々の登場人物がアクセントになって、かなり「効いて」いる。ときどき、舞台上の「世界」から飛び出して、客席に役としてではなく語りかけるというシーンもたびたびあるし、「10分経過しました」とわざわざ教えてくれたりする。お約束を駆使して、遊び方もどんどんパワーアップしてドタバタラブコメ路線をばく進だ。

 そんなこんなで女4人が「自分の恋愛」のつもりで「己の失恋」を語り明かした翌朝、ウエディングトレインは目的地に到着する。
 バッグの取り違えが原因で4人の女が再集結し、それぞれの「恋人」が同一人物であると判ったところから、暗い情熱スタートだ。
 何だかよく判らないのだけれど、気がついたら遊井亮子演じる新婦が4人の女に誘拐されていた。
 そうして、「彼をどちらがどれだけよく知っているか」対決が4人の女と新婦の間で戦われ、最後は、乳母だった女が仕込んだ「新郎への手紙」が功を奏して、2人は(多分、結婚式の開始時間には間に合わなかったけれど)無事に結婚式にと駈け去って行く。
 ウエディングボードも無事に完成して手渡され、めでたしめでたしだ。

 そして、帰りのウエディングトレインでは、女4人はカッコいい男を前に盛り上がってソーダで乾杯する。
 こっちこそが、めでたし、めでたしかも知れない。

 こんなに技巧に走らなくてもいいんじゃないかと思ったりもしたのだけれど、せっかく2VERSIONやるのだから、そこで出来ることは全てやってやろうという貪欲さも楽しい。でもやっぱり、その代わり、両VERSIONを見ないと消化不良な感じなんじゃないかという予感もする。
 BOY'S VERSIONを見れば、何となく残っているこのモヤモヤ(例えば、乳母が仕込んだ手紙の内容はここでは明かされなかったのだけれど、BOY'S VERSIONでは明かされるのだろうか)は解消されるんだろうか。
 GIRL'S VERSIONだけ見た感想としては、女たちのパワー全開で、かしましいけどいっそ清々しさを感じる舞台だった。

 ところで、終演後、挨拶をしたのは円城寺あやだった。
 アンケートのお願いや、パンフレット(1000円)の紹介をした後、「本日、誕生日を迎えた役者がおります」ということで、前に押し出されたのは新郎を演じた山本芳樹だった。
 「23歳になりました」と言っていたけれど、多分(間違いなく)ウソだろう。もっとも私は実年齢を知らない。
 運んでくる間にケーキに立てられていたろうそくの火が消えてしまったりしつつ、とにかくお誕生日をお祝いしよう、でもあんまり段取りを考えている時間はなかったの、という手作り感が出ていてなかなか微笑ましい感じだった。

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