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2011.10.01

「髑髏城の七人」を見る

劇団☆新感線2011年夏興行 いのうえ歌舞伎「髑髏城の七人」
作 中島かずき
演出 いのうえひでのり
出演 小栗旬/森山未來/早乙女太一/小池栄子
    勝地涼/仲里依紗/高田聖子/粟根まこと
    河野まさと/千葉哲也 ほか
観劇日 2011年9月30日(金曜日)午後6時開演
劇場 青山劇場 1階J列7番
料金 12500円
上演時間 3時間20分(20分の休憩あり)

 こちらもまた、自力ではとてもチケットが取れなかったところを、あんみんさんにお声がけいただいて、チケットを取っていただいたものである。
 感謝!

 ロビーでは、パンフレット(2500円)や、トートバッグ、手ぬぐい、Tシャツなどの他、前回観劇の時にはまだ発売されていなかった(と思う)サントラCDが販売されていた。

 ネタバレありの感想は以下に。

髑髏城の七人

 2回目の観劇なので、感想は簡単に。

 いのうえひでのりの演出は、公演期間中もかなり変更を加えて行くというイメージがあって、東京公演の序盤と終盤で恐らくは大分変えてくるのだろうなと思い、そこが楽しみだったのだけれど、期待以上だった。
 やはり2回見て良かったと思う。

 全体的な印象としては「笑い」が随分と増えていたように感じる。
 シーンとして変わったことに気がついたのは2カ所だけだ。
 1カ所は、磯平がくるくると回って苦悶を表す場面で(見た方にはこれで特定できると思うのだけれど)、私のあやふやな記憶では確か、1回目に見たときにはバレエの音楽はかかっていなかったと思うのだ。今回はバレエの音楽に合わせてくるくる回っていて、これは音楽が終わったら必然的に回るのも止めなくてはならず、無制限に回り続けるのを防ぐ意図もあったのではないかという気がした。
 でも、時は安土桃山時代、織田信長が死に豊臣秀吉が関東攻めを始める直前ということなのだから、その違和感の激しいことといったらない。客席も待ち構えるようにして笑っていた。
 もう1カ所は高田聖子演じる贋鉄斎の登場シーンである。「寂しかったの」とこれまた身悶えるシーンが増えていたのか、時間が長くなっていたのか、とにかく客席から大きな笑い声が上がるシーンになっていた。

 これらだけではなく、全体的に笑いの要素が増やされていて、その大部分は天魔王を演じた森山未來が担っていた。
 狂ったような笑いが相当に狂ったようでヒリヒリさせていたのだけれど、そこに「これって誰かの物まねだよなぁ」と思わせる台詞回しをしてみたり、思いっきり殺されているのに「こんなのあり?」と言ってみたり、何の関係もないけれど、天保十二年のシェイクスピアに出演していたときの古田新太を思い出した。あの感じである。
 狂ったように笑う怜悧な男を演じつつ、三枚目的な笑いの取り方をするって凄くないか? と思いながら見入ってしまった。
 何しろ、今回はオペラグラスという強力な味方もあったのだ。

 天魔王がそういう路線に行ったものだから、実は天魔王は狂気に捕らわれている訳ではなく、狂ったような笑いも何もかも計算ずくの冷静かつ怜悧な男手、この「髑髏城の七人」の登場人物達の中で唯一狂気に捕らわれていたのは蘭兵衛なんじゃないかという印象に変わった。
 どこがという風には指摘できないのだけれど、前回見たときに比べて蘭兵衛演じる早乙女太一の気怠い感じが激しくパワーアップしていたような気がするのだ。
 一歩間違うと役者である早乙女太一自身が気怠いようにも見えてしまうギリギリのラインで、ヒリヒリした感じよりは、無力感に捕らわれた感じを強めていたように思う。

 最初の時は「どうしてそうするかな」という思いもあって確信が持てなかったというよりも持たないようにしていたのだけれど、2回見て、やっぱり「ワカドクロ」の極楽太夫は蘭兵衛に恋愛モードで惚れていた、と思う。
 そうすると、その極楽太夫が兵庫に惚れた瞬間をどこかで見せて欲しかったという風にも思う。単に私が朴念仁過ぎて気がつけなかっただけなのかも知れないけれど、何か唐突感が強かったのだ。
 今回の舞台で、兵庫を演じた勝地涼と極楽太夫を演じた小池栄子の2人はかなり私のツボだったので、単純にこの2人に絡んだエピソードがもっと見たかったということでもある。

 何だかあら探しをしている小姑になったような気分なのだけれど、とりあえず「変わった(かな)」と思ったところを書き出しておくと、天魔王の鎧を着せられて薬をかがされた捨之介と髑髏城に乗り込んだ7人が会う場面で、沙霧が「天魔王の鎧を着せられた捨之介だ」と気付くのではなく、沙霧は本気で天魔王だと思って斬りかかり、捨之介の方が自分を天魔王と呼ぶ沙霧を殺すという呪縛を自ら解き放つ、という展開になっていた。
 この辺りも、逆に捨之介の余裕のなさをより鮮明にしたかなという風にも思う。
 信長の影武者を務めた男と、信長の小姓を務めた男と、同じだけの余裕や斜に構えた感がある方がおかしいという気持ちはよく判る。

 あと変わったと思ったのは、最後に「髑髏城の七人」と徳川家康とが相まみえるシーンだろうか。
 「お金に**はない(**が何だったのか思い出せないところが、我ながらマヌケである)とさるお侍に教えて頂きました!」と沙霧が見得を切って500両を求めるシーンで、確か、1回目に見たときは沙霧と同時に他の4人も見得を切っていて、それはそれで可笑しかったのだけれど、今回は見得を切る沙霧を見て慌てて他の4人が同じポーズを揃えて見せた。
 それは、こちらの方がより可笑しいに決まっている。
 だからこそ、この後に、徳川家康が「二度とわしの前に姿を見せるな」と声を張るシーンが際立ち、際立つ下地が出来たからこのシーンが入れられていたのだと思う。これはアカドクロにあったのだったか、14年前の髑髏城にあったのだったか、覚えていないのだけれど、かつての髑髏城の七人にあったシーンなのは間違いない。

 そんなこんなで笑いの要素をふんだんに盛り込んだワカドクロは、見終わって、「あぁ、これも伝説になった」と自然に思ってしまう完成度だった。
 「この髑髏城の七人もありだな」と心の底から思ったのだった。

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コメント

 あんみん様、(遅れましたが)コメントありがとうございます。

 もう、「髑髏城の七人」がどこでも上演されていないと思うとかなり寂しいですね(笑)。

 新感線の次回作のタイトルは「シレンとラギ」というのですね。今探してみたら、公式サイトが表紙だけできていました。
 うーん、見てみたい。
 ワカドクロよりはチケット争奪が激しくないことを祈ります。

投稿: 姫林檎 | 2011.10.15 10:42

こんばんは。

そうですね、DVDのがいいかも。

それにしても、森山未來は凄い若手だなぁと思います。
得意のダンスは無くても、身体能力でしょうか。
崩れないバランス感、狂気じみた迫力。
セリフ言いながらの殺陣。マントさばきにうっとり。

もちろん小栗君も、雪駄の足元での立ち回りでハンディだと思うし。
殴られての倒れ演技もダイナミック。
小池さんも小股の切れ上がった感、声もよく通るし。

なんにせよ、この若い組み合わせは姫林檎さんのおっしゃる
【伝説】になりますよね。

「あの天蘭の対決、生で観た。」とか自慢出来そう。

新感線次回公演の『シレンとラギ』、藤原竜也、永作博美は
もちろん観てみたいですね。

投稿: あんみん | 2011.10.13 00:32

 あんみん様、コメントありがとうございます。

 ワカドクロ、堪能されたようですね。よかった!
 大阪とは随分と違っていたのですね。3週間あけて同じ東京で見た私も変わったと思うくらいだったですから、あんみんさんからするとほとんど別のお芝居を観ているような感じだったのではないでしょうか。

 私はゲキシネよりもDVDかなぁ。予約をしたわけではないのですが。
 ほんと、終わっちゃって寂しいですね・・・。

投稿: 姫林檎 | 2011.10.11 22:54

こんばんは~、あんみんです。
は~、良かったですワカドクロin青山。
終わっちゃって淋しいですよ。

大阪と変わったなという点は・・・
  まず迷ってたような小栗旬はいなかったし、
  極楽大夫の女っぷりや迫力がスケールアップされてたし、
  早乙女太一が見せ場が殺陣だけではなく、殿を想い募る感がよく出て
  てグッと来たし、
  森山の小物感も遊び感も増えてたし
  間延びしてたように思えたところは無くなってました。
  全体的に遊びがかなり増えてました。
  また拍手がやたら増えていて、セリフが聞きづらかった所も。

私が観た大阪はカーテンコールで、不満げで怒っていたような顔してた小栗旬でしたが、やり切った感が出てました。
殺陣でも相手側に受けるのを待っててもらうようだったのも
スムーズに見られたし、100人斬りも迫力出ていた。
天蘭の殺陣は大阪からすでに完成されてましたね。

家康がらみのところが良かったな~と思います。
身分を隠しているのに、天蘭捨がそれぞれ気付くところや
大人の色気というか、千葉さんが良かった。
声がまず良いですね!
 
もっと思うところは一杯有りますが、とにかくこの作品にはまりました。
あと、天魔王の物真似は⇒平泉成(オイ、どーしたステノスケ!)
『お金に身分の差は無い』だったかな?

来年あたりのゲキシネ、見に行きますよ必ず。
  

投稿: あんみん | 2011.10.11 01:16

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