「江戸の青空 弐 惚れた晴れたの八百八町」を見る
北九州芸術劇場Produce「江戸の青空 弐 惚れた晴れたの八百八町」
脚本 千葉雅子
演出 G2
出演 坂東巳之助/植本潤/松永玲子/戸次重幸
朝倉あき/吉野圭吾/柳家花緑/松尾貴史
観劇日 2011年11月18日(金曜日)午後7時開演
劇場 世田谷パブリックシアター 1階G列26番
料金 6500円
上演時間 2時間30分(15分の休憩あり)
ロビーではパンフレット(1000円、だったと思う)が販売されているほか、この日に撮影されたDVDの予約受付も行われていた。
ネタバレありの感想は以下に。
落語をいくつも重ねて連ねて一つのストーリーに仕立てた舞台の第2弾である。
そのコンセプトは同じだけれど、「江戸の青空」とのストーリー上の連続性はない。
「江戸の青空」のときもそうだったのだけれど、今回も見事に「どんな落語が織り込まれているのか」一本も判らなかった。ショックである。
逆に、純粋に一本の舞台として楽しめたので、それは良かったかなと思う。
今回のストーリーの筋一本は、坂東巳之助演じる徳三郎と朝倉あき演じるおせつとの恋物語である。
恋物語ではあるのだけれど、おせつはお店のお嬢様、徳三郎はその店の手代という身分違いの恋でもあるのだけれど、この場合ポイントはそこにはなくて、ひたすら徳三郎がじれったいというところに尽きるような気がする。
どう見ても相思相愛だろうに、この徳三郎が徹頭徹尾情けない。かつ、うじうじしてはっきりしない。おきゃんそのもののおせつお嬢様がそうそう優しくしていられる筈もない。
松尾貴史演じる強突く張りで娘思いだけれど強引なお店の主人や、戸次重幸演じる誰の味方なんだか判らないせつの乳母や、植本潤演じる飴につられてどっちの味方にもなるけれど心の底では二人を応援している丁稚の新どんや、やっぱり戸次重幸演じる徳三郎の叔父とは思えない短気な江戸っ子と、松永玲子演じるその妻のお駒、吉野圭吾演じるおせつの縁談相手である植木職人の彦六や、こちらも松永玲子演じる彦六の亡くなった妻であるお菊や、登場人物入り乱れての大混乱が展開される。
やっぱり、ここは、この雑多な登場人物と落語をまとめきった千葉雅子の手腕が光るというものだろう。
サイトの座談会を読んだら、松永玲子は男優陣全員の妻を演じたらしいのだけれど(私には、松尾貴史と坂東巳之助と植本潤の妻を演じているところは判らなかったのだけれど)、彼女よりも今回の早替わり大賞は柳家花緑に差し上げたいと思う。
刀屋の主人を演じて徳三郎の「どうしてお店を飛び出したか」という話を聞いていたところ、その回想シーンで気弱な番頭が出てくるところで、徳三郎に「他のみんなは忙しいから、番頭を演じてくれ」と言われて舞台袖で着替えて気弱な番頭役になりかわったのを皮切りに、徳三郎を誘惑する女役まで、しかも楽しそうに演じていたのには驚いた。
そりゃあ、噺家は噺の中では女にもなろうというものだけれど、これがまあ確かに「美しい女」ではないものの、ちゃんと女に見えるのである。
実際に数えはしなかったのだけれど、このお芝居の中で柳家花緑の演じた役の数はかなりのものではなかろうか。台詞がある役としてはやっぱり出演者中トップの数ではなかったかと思う。
ストーリーの大筋でも笑いを取りつつ、ちょっといい話も盛り込みつつ、でも、吉野圭吾と松永玲子の2人を指して「80年代小劇場の!」と言ってみたりといったくすぐりをふんだんに入れつつ、話は転がって行く。
そして、最後には大団円で、おせつの父親は亡くなって、お店も潰れてしまったようなのだけれど、彦六の元には亡くなった妻お菊の幽霊がちゃんと出てきてくれたし、妻のお駒に逃げられた徳三郎の叔父は唐茄子屋などになって羽振りがいいようだし、「一人にしてくれ」とその叔父に言われたからと家を飛び出して帰らず浮浪者のようになっていた徳三郎は川に飛び込もうとしたところをその叔父に助けられ、唐茄子売りをしていたところで元奉公先であるせつの家の前に行き、彦六と会ってせつの居場所を教えられ、そこにいた松尾貴史演じる泥棒にも焚きつけられてせつがいる鰻屋に向かい、その鰻屋には新どんがいて、せつがいて、お駒と一緒に逃げた損料屋が開いていた店だと判る。
徳三郎は再会したせつに思いを告げ、「せつの母親と床を一つにしてしまった」というお店の主人がかけた呪いもめでたく解かれて大団円、である。
うん、楽しかった。
「江戸の青空 参」を待とうと思う。
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