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「ア・ラ・カルト2 〜役者と音楽家のいるレストラン」
台本 高泉淳子
演出 吉澤耕一
音楽監督・出演 中西俊博(violin)
出演 高泉淳子/山本光洋/本多愛也/中山祐一郎(レギュラーゲスト)
クリス・シルバースタイン(bass)/竹中俊二(guitar)/林正樹(piano)
日替わりゲスト 池田鉄洋
観劇日 2011年12月17日(土曜日)午後6時開演
劇場 青山円形劇場 Cブロック24番
料金 6300円
クリスマスシーズンといえば、この舞台である。
この日は、当初は山寺宏一が日替わりゲストの予定だったのだけれど、池田鉄洋に変更になった。
ネタバレありの感想は以下に。
ア・ラ・カルト2になってからは2年目ということになる(と思った)この舞台は、やっぱりクリスマスシーズンに欠かせない。
ア・ラ・カルトの時代も、後半になるにつれ山田ノボル少年が全く姿を現さなくなったり、親子の会話もその場にいない「ママ」に焦点があったり、家族から「2人」という単位に軸足を移してきている感じがあったと思うのだけれど、ア・ラ・カルト2では完全に家族の要素をすっぱりと落としたように見受けられる。
家族が最小の単位ではなくなった、ということかも知れない。
2011年の新しいところといえば、ミュージシャン4人が服装を合わせていたことじゃないかと思う。
うろ覚えの記憶だけれど、この4人が衣装を合わせていたことってなかったと思うのだ。もちろん全く同じ服装をユニホームのように着ていたということではなく、シャツに太めのネクタイ、サスペンダーという部分を揃え、シャツの色と白、黒、赤、青としていて何とも洒落た感じだった。
オープニングは「フローズン・マルガリーター心が冷めたら氷でハートを凍らせてしまえばいい−」である。
要するに(って、要するににしてしまっていいのかという気もするけれど)、相変わらずのドレスアップした女性が一人、クリスマスイブの夜にフレンチレストランで待ち合わせをしている。しているのだけれど、待ち合わせの相手が来る様子は全くないし、彼女もそれを期待している様子がない。
「傷口に塩」を繰り返されると、いつもよりも痛さがアップして、すみません、もうちょっと控えめにしてください、と思ってしまった。
宮城県北部の日本酒も用意して、フレンチレストランで温まるディナーの開始である。
タカハシが中山祐一郎演じる後輩とやってくる「フランス料理とワインを嗜む会ーフランス料理と僕たちの微妙な関係−」では、昨年に引き続き、タカハシが後輩にワインを講釈するという無茶な設定である。
ギャルソン達(そういえば、昨年よりも彼らがしゃべるようになったと思う。ちょっと嬉しい。)の助けを借り、呆れられつつ、タカハシ先輩のシャンパン講座が開かれる。
最後には、後輩クンが振った(ことになってるらしいけど、後輩クンとしてはそんな関係になったつもりはないらしい)彼女と彼女いない歴40年のタカハシとがつき始めたらしい、というところで2人は退散。
ノリコさんはどこに行ってしまったのだ。ゲストでやってくるなんていうサプライズがいつかあるように、ノリコさんには残っていていただきたいものである。
「おしゃべりなレストランーワインは喋っているうちに美味しくなるらしい−」で、マダム・ジュジュが登場する。
そういえば、コーナーとコーナーの間に必ず演奏が入るのは、高泉淳子の着替えの時間が必要だからなのかも知れない。彼女は最初から最後までほぼ出ずっぱりである。
ここでゲストの池田鉄洋氏が登場する。
初日から数公演にゲスト出演し、本人曰く「10日振り」「これは誰かのピンチヒッターでしょう」ということである。
メルシャンと富士通の宣伝がここで入るのも相変わらず、富士通のコマーシャルのナレーションは池田氏がやっているらしい。
そして2人が一旦着替えるために退場し、始まるのが「フランス料理濃いのレシピ小辞典ー濃いと料理は神様がお膳立てしてくれることもある−」である。
これまた昨年と同様に、日替わりゲストは台詞が入っていない、という前提である。メニューに貼られたシナリオを「読ませていただきますよ、10日振りですからね」と熟読する池田氏のどこまでが素でどこからが演技なのか、とにかく可笑しいことこの上ない。
歯医者で知り合ったらしい2人のなれそめは「歯ブラシを取り違えたこと」というのがオチで、果たしてあちこちで顔を合わせたのが運命なのか縁なのか。いつもならここで終わるところを敢えて「ストーカーなのか」という選択肢を入れて来たところが「らしくない」風ではある。最近の某女性タレントの結婚をあげつらうようなコメントが入ったのも、私にはちょっと違和感だった。
そこはともかく、ここは、シナリオを書いて結末も知っている高泉淳子がどうゲストを料理するかというのが見どころだと思うのだけれど、今回に限っては、私としては池田鉄洋vs中山祐一郎の気のおけない感といえばいいのか、中山祐一郎までが一緒になって「いじっている」感じと、池田鉄洋が「その蘊蓄はいらないから」と一矢報いている感じが楽しかった。
ここで、10分間の休憩である。
ワインが1杯300円で販売され、ソフトドリンクのサービスがあるのもいつも通りだ。
休憩後はショータイム。
コルクがなかなか抜けなかったり、高泉淳子のジャズが聴けたり、そういえば今年は山本光洋のマリオネットのパントマイムがなかったのだけれど、圧巻というか白眉は池田鉄洋の「ワインレッドの心」だろう。
とにかく、可笑しい。
本人が「こいつ選曲間違ったんじゃねえかとみんな思っているでしょう」と自虐ネタに走っていたけれど、いえ、似合っていましたとも、と思う。怪しげな皮のパンツと、フリルにレースの赤いシャツが何ともまた怪しげで、この舞台の中で私はここで一番大笑いした。
そして「黄昏のビギンーあなたと逢った今宵の夜−」である。今宵の夜ってのは日本語としてどうなんだろうと思いつつ、何故か老人に見える2人が(ポイントは座り方とうなずき方のような気がする)フランス料理の夕食を楽しんでいる。
昔、プロポーズして断られた相手に、でも仙台在住の彼女が心配でお見舞いの手紙を出し、夕食の約束をし、クリスマスに一緒に夕食をいただいている。
「楽しい時間が終わってしまう、明日からどうしましょう」という彼女に、「また夕食を一緒にしましょう」と答える彼がいい感じである。
ラストシーンは、最初に戻って「ホット・ブランデー・エッグ・ノッグー恋の予感はディナーのあとで−」で、フレンチのコースをいただいた彼女が「おでんに行かなくて良かった」と笑う。
そこに再び池田鉄洋が登場。待ち合わせの約束をした記憶もない、面識もないその彼が、待ち合わせの相手であるかのように登場することに戸惑う彼女。
でも、最後に5人で乾杯。
いいシャンパンを開けちゃった、というのもお約束の楽しさである。
楽しかった。
そして、来年の再会が楽しみである。
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