「ワンダーガーデン」を見る
玉造小劇店配給芝居vol.9「ワンダーガーデン」
作・演出 わかぎゑふ
出演者
四獣(スーショウ)
桂憲一(花組芝居)/植本潤(花組芝居)
大井靖彦(花組芝居)/八代進一(花組芝居)
観劇日 2012年3月18日(日曜日)午後3時開演
劇場 座・高円寺1 E列25番
上演時間 2時間10分
料金 4500円
男優版は千秋楽を見に行った。
千秋楽はパンフレットに役者さんのサインといういつもの企画はないらしい。それが少し寂しかった。
その代わり、楽しく遊んでいる感じをたっぷり味わえた。
ネタバレありの感想は以下に。
ストーリーは当然知っている。2日前に同じ芝居を見ているのだから、いくら私だってちゃんと覚えているのである。
そして、台詞もちらほらと覚えていて、こちらは少々うろ覚えのところもあるのだけれど、感触としては「一言一句違わない」訳ではなかったと思う。もちろん話の骨格や、キーとなる台詞が違う訳ではなく、芝居を作っていく中で変わって行った部分なんだろう。
それにしても、台本の段階では全く同じ芝居だったのだろうに、こうも雰囲気が異なるものかと驚いた。
開演前のアナウンスは、こちらは四華の4人が務めていて、その宝塚風の男役の作り方が笑える。四獣のアナウンスが「**ましね」「**ませね」という調子だったのに対して、何というか、声も作り、しゃべり方も作っている。
そして、場面転換を出演していない四華の4人が務めるのも同じ趣向で、ここへ来て、場面転換のときの衣装と出演しているときの衣装は同じだったんだと判った。
この辺りは比較の楽しみを味わってよしというものだろう。
そして、偶然、四華バージョンは舞台の上手がよく見える席、四獣バージョンは舞台の下手を見渡せる席だったので、その視野というか見え方の違いも合わせて楽しむことができた。
四獣バージョンと四華バージョンの違いはそれはもうあちこちにあって、四獣バージョンの方が何というか、下ネタとまでは行かないけれど、その辺りの機微が非常に判りやすくなっているというか、躊躇がない感じがある。
加えて、今日は千秋楽だったので(ということだと思う)、かなり「お遊び」の部分があったと思う。何というか「いつもより多めに楽しんでおります」という感じだ。
四華の楽日にも四獣の4人が最後のホームパーティのシーンに乱入したようだけれど、こちらにも四華の4人が登場し、声が出なくなっていたらしい高橋由美子が散々いじられていたし、「これどうやって芝居に戻すんだろう」「無理矢理戻そうとしちゃって」「戻さないと終わらないから」なんていう台詞(なのか、呟きなのか)が出ていたし、「最後の着替えに行くから!」と植本潤が走り去ったのに対して「そこまでぶっちゃけなくても」と大井靖彦がこれまた呟いたり、こうしたことはこれまでの上演のときにはなかったと思う。
でも、ここまで遊んで壊しておいて、ラストの2人の出会いのシーンではきちんとメロドラマをやっているのだから、やっぱり四獣はただものではないのである。
4人が演じる8人のキャラは同じだと思っていたのだけれど、当然のことながら、演じる俳優が変われば役も変わるのである。
しみじみとそのことを感じた。
一番差を感じたのは、やはり、桂憲一演じる薫子と植本潤演じる大村子爵(+@)のカップル(というのもとことん古い言い方だけれど)だろうか。幕が開くときにも幕が下りるときにも舞台にいる薫子は、舞台となったこの家にずっといることもあって、やはりこの芝居の要である。
四人姉妹を描くと次女がキーになるのは、若草物語の時代からのセオリーだ。
高橋由美子の少し冷たく合理的な部分を前面に出した薫子と、桂憲一のより柔らかで怜悧さを抑えた薫子と、二人の薫子の違いがかなり舞台の雰囲気を変えていたと思う。切なさVS柔らかさという感じだ。
どちらかというと、女優が男性を演じるよりも、男優が女性を演じるところを見る方が慣れているように思っていたのだけれど、何故だか、四獣バージョンの方が恥ずかしい感じがしたのが我ながら不思議である。
どうしてだろうと考えたのだけれど、要するに、四人姉妹の話だからあまり目立たないのだけれど、この「ワンダーガーデン」に出てくる男性陣はみなそれぞれに格好いいのである。格好いいというよりも、いい男なんである。
それはもう、女優陣が演じると「作っている」という感じがあってこちらも冷静なのだけれど、普通にいい男が4人舞台上にいるから見ているこちらに冷静さがなくなったんだという結論に達した。
我ながら莫迦な理由である。
男優が女性を演じているときに、すぱっと男言葉になると笑いを取れるっていうのは有利だよなぁと思う。女優が男性を演じているときに、すらっと女言葉を出しても多分笑いは取れないんじゃないだろうか。
それって、女性は実は男っぽいと皆がおもっているけれど、男性が実は女っぽいとは誰も思っていないということなのか、別の理由があるのか。
そして、四獣の四人姉妹の方が、当然のことながら(?)夢がある。それは決して花柄のスカートを履いていたからではなく、「こうありかし」という願望が入っているからだと思う。顔もそのまま髪もそのまま、声の出し方もそんなに作っている感じがしないのに自然に女になっていて、しかも可愛らしい。
その点、四華の四人姉妹はとことん意地悪にもなれる感じがそこはリアルである。
何はともあれ、四獣の演じる4人の男性はとにかくいい男揃いだった。
16歳の長男を出征させると聞いて千草が実家に逃げ戻って来たとき、薫子に語っていた、八代進一演じる杉山少佐が私的にはその白眉である。
このお芝居を観てそういう感想というのは随分と本道を外れている気が自分でもするのだけれど、とにかくそう思ってしまったのだから仕方がない。そして、女はたくましい。
カーテンコールでの植本潤発言によると、2年半後、ミュージカル版で再演するそうだ。
そのときもぜひ観たいと思っている。
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