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2012.03.17

「ワンダーガーデン」を見る

玉造小劇店配給芝居vol.9「ワンダーガーデン」
作・演出 わかぎゑふ
出演者
四華(スーホア)
    高橋由美子/大森美紀子(演劇集団キャラメルボックス)
    澤田育子(拙者ムニエル/Good morning N゜5)/小椋あずき
観劇日 2012年3月16日(金曜日)午後7時開演
劇場 座・高円寺1 C列2番
上演時間 2時間10分
料金 4500円

 男優バージョンと女優バージョンがあるうち、先に女優バージョンを見た。

 ロビーでは、パンフレット(1000円)や、初演のパンフレット(500円)、マグカップ等が販売されていた。

 ネタバレありの感想は以下に。

 玉造小劇店の公式Webサイトはこちら。

 薔薇園のある広いお庭があるお宅なのだから、いわゆる「セレブ」ということになるのだろう。
 四人姉妹の20年を綴る舞台だということは何となく知っていたので、最初の疑問は「これはいつの時代なのだろう」ということだったのだけれど、さっさと明治から大正に変わる時期の話であるということが明かされる。
 新聞に載っていた天皇の病の記事を語らせることで明かすところが格好いいと思う。

 大森美紀子演じる長女の千草、高橋由美子演じる次女の薫子、澤田育子演じる三女の葉月、小椋あずき演じる千草の夫の妹である桜。
 この四人姉妹が主人公である。
 そこまではいいとして、千草の夫を演じるのも小椋あずきだし、薫子の恋人を演じるのは澤田郁子、葉月の夫を演じるのは大森美紀子で、桜の夫を演じるのは高橋由美子である。かつ、葉月は最初は桜の夫である詩人と付き合っていたし、桜の最初のお見合いの相手は葉月の夫となった男である。
 ややこしい。
 でも、それが楽しい。

 最初は、当初は男優4人のために書かれた舞台だったという知識だけあったせいか、何となく違和感を覚えていた。
 宝塚も女優が男性を演じているし、歌舞伎には女形がいるし、違和感を覚える方がおかしいのかも知れないのだけれど、やはり女優が男性を演じているというところに、無理とは言わないまでも気負いを感じて、こちらも身構えなくてはならないような気持ちになる。
 やっぱり、元々が男優が女性を演じるというところから書かれたお芝居だからなのかとぼんやり思っていたのだけれど、時がたち、女優全員が男性として舞台に登場する頃にはその違和感も消えていた。やはりこちらの思い込みによって生まれた違和感だったのだろうと思う。

 それにしても四人姉妹には色々とある。
 職業軍人に嫁いで5人の子供の母となった千草、妻子ある子爵が操縦する飛行機に乗っていて事故に遭い奇跡的に一人だけ助かった薫子、千草に新聞なんて読んでいたらお嫁に行けなくなると嘆かれていた文学少女の三女は美顔器なるものを商う商人(というよりは一発屋?)の妻になって商いに目覚めているし、大人しいばかりの少女に見えた桜はデモクラシー運動に携わったことで特高に狙われる女優になった。
 何年かおきにこの姉妹が庭に集まって語ることで、姉妹の人生が語られて行く。

 この舞台セットの転換(といっても、庭にあるテーブルの上の食器が片付けられたり、舞台上に立てられた柱に薔薇の花を咲かせたりといったことなのだけれど)を、出演していない男優陣が担うのも何となく楽しい。
 また、この男優陣がわざとのように「優雅な」動きを見せるので、それも(言い古された言い方のような気もするけれど)セレブ感を漂わせていた。
 そういえば、開演前のアナウンスも男優陣が「女性として」行っていて、その無闇に山の手然としたアナウンスは笑ってしまった。この辺の、優雅さを感じるか笑いになるかの境目はなかなか難しいところだ。

 最後、四人姉妹はそれぞれの家族を連れて薫子が一人で守る実家に集まってくる。
 千草は夫について上海に、葉月は商売のために大阪に、桜はデモクラシー運動のためにロンドンだったかシンガポールだったかとにかく外国にこれから行こうとしている。そのための集まりである。
 ここで、何故だか突然に遊びが入って、それまで上着の色で男役か女役かを分けていたのだけれど、「どうして上着を脱ぎながら出て行くのかしら」と言ってみたり、葉月が夫に「千草を呼んで一緒に来て」と言ってみたり(この2人は大森美紀子が演じているのだから一緒に舞台に現れるのは不可能である)、最初のシーンで撮ることを計画していた四人姉妹の写真を見つけた桜が「前の方に来て」と言うのに、庭に前も後ろもないと言ってみたり、意地悪発言が次々と続くのも可笑しい。

 でも、そうやって場がほぐれたところで、最後に、薫子が長く文通していた台湾の男性がやってくる。
 その姿は、かつての恋人そっくりである(同一人物が演じているのだから当たり前である)。
 そして、薫子と長年文通していた彼は、薫子のことを誰よりも知っている。
 その彼を彼女が家の中に招き入れるところでこの舞台は幕である。
 一人二役をずっと皆がやっていたからこその違和感のなさで、またもや「やられた」という気持ちになる。

 ラストシーンで照明が落とされたとき、つい「オチは?」と思ってしまったのだけれど、いや、これはこの静かなシーンで、薫子が一人ではないと示して終わるのが正しい幕の降り方だなと思い直した。

 男優陣が演じる「ワンダーガーデン」も台詞は全く一緒らしい。
 ますます楽しみになってきた。

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コメント

 しょう様、コメントありがとうございます。&お久しぶりです。

 また、ニアミスしていたんですね。ふふふ。
 初演をご覧になったとは羨ましいです!
 パンフレットにもありましたが、大井さんの子爵は非常にノーブルな王子様だったとか。見てみたかったです。

 そして、私も本日、四獣を見て参りました。こちらでもニアミスしていたとは!

 感想はこれから書こうと思いますが、こちらも良かったですねー。
 返す返すも初演を見逃したのが痛いです。
 2年半後のミュージカル版をぜひ見たいと思います!

投稿: 姫林檎 | 2012.03.18 22:10

姫林檎さん、お久しぶりです。
同じ回のB列17番で見ておりましたw
私は初演を見ているので、正直四華バージョンは
あまり期待しておりませんでした。
が、見てみたら矢張り楽しい(^^;
わかぎゑふ さんらしい脚本、演出でしたね。

時代物の女性を衣装やメイク舞台装置に頼らずに演るなら、
女形の方が絶対に良い!と思っていましたが、
千草が長男を戦地に送る事に動揺するシーン、
あそこだけは女性が演じた方が、真実味が増すんだなぁと感じ入ったのでした。
初演では、大杉子爵を大井さんが演じてらして、
それはそれは王子様のようでしたが、今回はかなり年齢差のある
ちょっとコミカルな子爵になっていて驚きましたが、
ダンディな所があって女心を擽られました(笑)
舞台という虚構の場所では、女性が男性を演じた方が格好良く、男性が女性を演じた方が可憐に見える物だなぁって、今日の四獣版を見て納得してきました(^^)
また、別の人が演じる不思議の庭を見てみたいです。

投稿: しょう | 2012.03.18 19:14

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