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2012.07.14

「なにわバタフライN.V」を見る

パルコプロデュース公演「なにわバタフライN.V」
作・演出 三谷幸喜
出演 戸田恵子
観劇日 2012年7月13日(金曜日)午後7時開演
劇場 パルコ劇場 J列23番
上演時間 2時間
料金 7500円

 戸田恵子がミヤコ蝶々を演じる一人芝居、そのニューバージョンの再演である。
 ネタバレありの感想は以下に。

 パルコ劇場の公式Webサイト内、「なにわバタフライN.V」のページはこちら。

 「なにわバタフライ」は、初演、再演となる「N.V」と見ていて、今回で3回目だ。
 再演の「N.V」と同じサブタイトルがついているし、演出の基本はN.Vと同じだと思う。「なにわバタフライ」といえば、生演奏の音響というイメージがとても強いのだけれど、今回もそれはなし。だとすると、音響はどんな音楽が流れていたんだろうと考えたのだけれど、全く記憶にない。まさか効果音や音楽が一切なかったということはないと思うのだけれど、意外とそうだったんだろうか。
 我ながら非常に怪しい記憶力である。

 初演は戸田恵子の「技術」に翻弄されたし、再演はひたすら寂しさを感じていたのだけれど、3回目の今回は、何だかひたすら楽しんでしまった。
 再演の時の自分の感想を読んで「前回はこんなことを考えていたんだ」とびっくりしたくらいである。今回は意外なくらい「寂しさ」を感じなかった。ミヤコ蝶々になのか、戸田恵子になのかは自分でもよく判らないけれど、ひたすら感嘆しているうちに2時間が終わった、という感じである。

 7歳で父親が作った一座の座長となり、学校にも通わずに芸事に精進していた子供時代から始まり、失恋し、娘が大人の女になり、大阪に出て「師匠」と付き合うようになり、奥さんから奪うような形で結婚し、師匠の浮気に悩まされ、その弟子と寝てしまったことから逆に離婚し、薬漬けになり、そこで支えてくれたその弟子と結婚して夫婦漫才で人気が出始めたところで芸事を仕込んでくれた父親を亡くし、またしても夫が外に子供を作ったことを知って離婚する。その前夫を見送り、人情芝居を始め、今これから自らを主人公にした舞台の幕が上がる。
 そこまでを、三部構成で見せる。
 三部といっても休憩がある訳ではなく、戸田恵子曰く「私の休憩です」ということで、戸田恵子の手で舞台セットが直され、水を飲んだりあるいは着替えたりされ、客席の電気も点いて何となく弛緩した空気が流れる。そういう隙間が2回入るということである。

 今回、芝居を見ながら思ったのは、やっぱり役者さんは声だよ、ということだった。
 仕草や表情ももちろんだけれど、声としゃべり方で、7歳から相当の年配のときまで、一人で、舞台で、生身の体で演じてしまうことができる。歌が上手すぎだよと思ったりもしたけれど、とにかく声の力で年齢も感情も思いも演じ分けて行く。
 凄いよなぁと感嘆しつつ、ひたすらミヤコ蝶々の生涯に浸る。
 「強い女よ」と言い切る彼女に「おまえほど弱い女と会ったことがない」と言う男がいい男かどうか、かなり迷うところではあるけれど、多分、そう言われたことを告白できる彼女は強い女なんだろうと思う。

 広い舞台にミヤコ蝶々が好きだったというブルーにした風呂敷を広げ、その上で、彼女の人生を語って見せる。
 ミヤコ蝶々も凄いけれど、戸田恵子も凄い。
 「堪能した」「楽しかった」と言い切れる舞台だった。

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コメント

 あんみん様、コメントありがとうございます。

 香川照之が歌舞伎役者って、実はあんまりピンと来ていなかったりします。NHKの「坂の上の雲」の正岡子規等々のイメージが強いんですよね、やっぱり。
 襲名披露公演を終えたら、香川照之と市川中車とどちらに軸足が置かれるんでしょう。

 でも、何はともあれ、久々の猿翁の舞台姿がファンの方にはたまらなかったんでしょう。私もチケット争奪にチャレンジすれば良かったかなと思いました。

投稿: 姫林檎 | 2012.07.16 22:45

続・あんみんです。
襲名披露の余談ですが、中車(香川照之)が出番で2番目に拍手をもらってました。
1番は圧倒的に父・猿翁(猿之助)でした。

ご不自由な体で最後の短い演目のみ、黒子の介添えで座って
出られたんですが、終わってからカーテンコールも有り(!)
その時手振りで黒子に顔を上げよとされたら、
黒子はかぶりを上げると、あらま茶髪の香川さんでした。
それはちょっと親子の過剰演出なんじゃ...とも思いましたが
場内割れんばかりの拍手でしたよ。

投稿: あんみん | 2012.07.16 15:22

 あんみん様、コメントありがとうございます。

 あんみんさんはこの3連休で観劇ツアーをされているのですね。今日はもうお戻りでしょうか。あるいは今日まで目一杯観劇のご予定でしょうか。

 「なにわバタフライ」よかったですよね。
 私としては、初演のときに、関西弁の指導をした生瀬勝久に、三谷さんが今度は男版の一人芝居を書くと約束した、というようなエピソードを覚えていて、それも早く実現されないかしらと思っているところです。
 見てみたいですよね。

 猿之助襲名もご覧になったのですね。
 まだ、「亀治郎さん」という感じがしちゃいますが(笑)、きっと近いうちに「これぞ猿之助」という風格になるのでしょうね。
 現代劇では拝見していますが、実は歌舞伎の亀治郎改め猿之助は拝見したことがないので、いつか私も見てみたいと思います。 

投稿: 姫林檎 | 2012.07.16 10:24

おはようございます、あんみんです。
昨日の土曜昼公演で観て来ました。
只今お江戸滞在中で携帯からコメントしています。
私は初演・再演と見逃し、コレが初めて念願でした。
もぉ戸田恵子にしか出来ない、最初から最後まで無駄なく流れるような、2時間みっちり魅せるお芝居でした。
私の中では100点満点でした。
先月「桜の園」も観ましたが、三谷さん演出を手抜きしたのかと残念な想いがあって(オリジナルではないから仕方ない?)
これで私の中の三谷評価はまたグッと急上昇です。
始めの照明で蝶々と入れ替わる所や、最後の元夫との病室でのやり取り、鰻屋の愛人対決など引き込まれしたね。
額縁も面白かった。
大満足でした。

その後大急ぎで新橋演舞場に移動して、猿之助襲名を観ました。
また彼も凄かった!
どうやって踊ったのかビックリした所もあって
こちらも飽きさせませんでした。
歌舞伎は血縁ではなく、芸の鍛錬の積み重ねだなぁと感じました。
こちらも声が良かったです。

今回の観劇ツアーの趣旨は一人芝居。
本日はイッセー尾形in大手町です。
携帯投稿で読みにくかったかも知れません、それではまた。

投稿: あんみん | 2012.07.15 09:50

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