「シレンとラギ」を見る
劇団☆新感線 いのうえ歌舞伎「シレンとラギ」
作 中島かずき
演出 いのうえひでのり
出演 藤原竜也/永作博美/高橋克実/三宅弘城
北村有起哉/石橋杏奈/粟根まこと/高田聖子
橋本じゅん/古田新太/他
観劇日 2012年6月30日(土曜日)午後6時開演
劇場 青山劇場 1階J列44番
上演時間 3時間25分(20分の休憩あり)
料金 12500円
ロビーでは、パンフレット(2500円)や公演グッズ、過去公演のDVDなどが販売されていた。中には、すでに完売したグッズもあったようだ。
ネタバレありの感想は以下に。
「シレンとラギ」の2回目の観劇である。
前回は下手側から、今回は上手側から、そして今回の方がやや後方(といっても、1階の見やすい席である)からの観劇ということになる。
例えば、シレンの登場シーン、シレンは舞台上手奥で動いていたので、前回はバッチリ見えたけれど、今回はその動きを知っている私が注視していてもよく判らなかった。
それくらいの見え方の違いはある。
新感線の場合、公演期間中も演出が変わることがよくあるので、ついつい「前回と違うところはどこか」という目で見てしまう。
もっとも、「変わった」と思っても、それは演出の違いかも知れないし、受け取っている私の側の問題もあるし、席の違いもあるし、2回目で展開を知っていることや目が慣れていること等々、色々と要因はあると思う。
今回、確実に「ここだ」と思ったのは、永作博美演じるシレンがしびれ薬を投げて藤原竜也演じるラギと一緒に逃げるシーンで、そのしびれ薬を吸った高橋克実演じるゴダイが覚醒した瞬間である。
1回目に見たときは割と自然に流していたと思うのだけれど、今回は、照明も使って、覚醒した「その」瞬間を際立たせていたと思う。おぉ、判りやすい! と思ったので、よく覚えている。
もう1箇所は、古田新太演じるキョウゴクが毒薬を撒き散らす爆弾を次々と北の国に発射しているシーンで、シレンとラギがキョウゴクと戦っている途中、負傷したシレンが自分の流した血で死んだ筈のミサギが息を吹き返したことに気付くところである。
シレンが気付く経緯が前に見たときよりも強調されていたと思う。
多分、他にも多々あったと思うのだけれど、恐らくは「判りやすく」する方向で演出の変更があったのではないだろうか。
橋本じゅん演じるダイナンがキョウゴクに愛を告白するシーン(これが実に何回もある)で遊びが増えたりといったところは、ご愛嬌兼ファンサービスで嬉しい。
判りやすいといえば、ラギがシレンに一目ぼれ(というか、2回目の一目ぼれというか)をするシーンもやけに判りやすくなっていた。
でも、総じて、意外と変更点が少なかったなという印象だった。
2週間前に見たばかりで流石の私もストーリーをバッチリ覚えている。
「この後どうなるのか」というドキドキわくわくがないにも関わらず、やっぱり引き込まれ、じーっと時には息を止めて見てしまう。その吸引力といえばいいのか、暴力的に引き付けて注意をそらさせない呼吸は本当に見事だと思う。
それでも、やっぱりいつもに比べてカタルシスがなかったように思うのだ。
張り巡らされた伏線が最後に一気に収束し、謎が全て解け、スカッとする爽快感を求めてしまうのだけれど、もしかするとそもそも「第二章」と最近(だと思う)銘打たれるようになったいのうえ歌舞伎自体が実はそう志向しているわけではないのかも知れないと思う。
同時に、スカッとしない割り切れなさこそが人であり業であって、単純化できないからスカッとしない、でもそれこそが「第二章」、という感じもある。
永作博美と藤原竜也のダブル主演に、高橋克実の迫力。この3人が親子という設定は、落ち着いて考えると不思議な感じだけれど、見ているときにはそうした疑問は抱かせない。
やっぱりスピード感が命だし、多分、この3人は新感線は初めてだと思うのだけれど、すっと溶け込んでいる感じがして違和感がなく安定感がある。
この安定感、安心感というのは、意外とないような気がする。
虫の標本にしか興味がない王を演じた三宅弘城の野生の勘によるアクションも見事だし、石橋杏奈も、役柄と本人の立ち位置とがシンクロしているせいか、背伸びしている感がないところがいい。
そういえば忘れてしまいそうになったけれど、やたらと実直なシンデンを演じた北村有起哉もいわばハマリ役でこれまた違和感云々というところを超えている。
ゲスト陣と新感線の役者さん達のバランスがいいところが、この芝居を支えるポイントだと思う。
そして、実は「シレンとラギ」には劇団員が総出演している。最近では珍しいことなんじゃないだろうか。
賢しげな悪役に徹する古田新太に、その悪役に惚れ抜いている(しかも危なげに)橋本じゅん、ダンナが20年間眠ってしまったのをいいことに好き放題やってきた高田聖子演じるモンレイはゴダイ復活後の画策とゴダイ死後のたくましさがいい感じである。
そういえば、主演級でゲストを呼ぶことに当初は違和感を感じていたけれど、今となってはそれが定番、定着してきたような感じもある。
粟根まことだったかが、新幹線の舞台は学園祭だ、学園祭は参加してこそ楽しい、というようなことを言っていたと思うのだけれど、見ているだけでも十分、参加している気持ちになるし楽しい。
改めて、そう思ったのだった。
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