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2012.08.05

「いつか見た男達-ジェネシス-」を見る

劇団500歳の会 「いつか見た男達-ジェネシス-」
原案・原作 松原敏春
監修 佐藤B作
劇作・脚本・出演 千葉雅子
演出 福原充則
出演 荒谷清水/池田成志/宇梶剛士/小川菜摘
    金井良信/中村まこと/深沢敦/山西惇/渡辺いっけい
観劇日 2012年8月4日(土曜日)午後1時開演
劇場 本多劇場 I列23番
料金 6000円
上演時間 2時間10分

 そういえば、パンフレット等があったかどうか、すっかりチェックしそびれてしまった。
 ネタバレありの感想は以下に。

 G2プロデュースの公式Webサイトはこちら。

 このお芝居は、今年50歳になる役者さん10人が集まって、昔見た、東京ヴォードヴィルショーの「いつか見た男達」を、50歳になった自分達流にやってしまおうじゃないか、というお芝居である。
 いわば、同窓会で、学園祭ということではないだろうか。
 チラシのごあいさつで、山西惇が「18歳の奥にとってどれほどカッコ良く見え、影響を与え、その後の俳優人生の核になっているか」とまで語る「いつか見た男達」は、当時30歳前後の役者さん達が演じていたのだそうで、50歳の男(と女)達が演じるのなら、それは多分、プラスアルファがイヤでもついてしまおうというものだろう。

 幼稚園から一緒だったらしい「逆境」に生まれた5人の男に、高校から普通の男とできた男が加わり、マドンナが加わり(という言い方も古いけれど、時代的にまあいいだろう)、30年以上ぶりに思わせぶりな手紙で呼び集められて再会する、というお話である。
 そういうお話だけれど、この場合、お話は多分、関係ない。
 何しろ、同窓会で学園祭なのだ。
 でも、不思議なことにノスタルジーは感じさせない。幼稚園時代を振り返っても、高校時代を振り返っても、あくまで「現役」な感じが漂う。

 そして、これだけ芸達者な方々が集まってしまうと、もう、やりたい放題である。
 渡辺いっけい演じる「一軒家の子」が自分の名前を思い出して貰おうと、何故かジェスチャーゲームを始めるところなど、完全に遊び倒している。
 渡辺いっけいは大汗をかいているし、見守る女優陣3人(深沢敦はこの場合こちらに入る)は笑いをこらえているし、答えている男優陣6人は好き放題渡辺いっけいを困らせている。中でも「わざと」外しまくっていたのは池田成志で、この後の、一軒家の子じゅんじがその辺のメンバーを殴りまくるシーンできっぱりと報復されていたのも可笑しい。

 それはともかくとして、役名が「こういち(連れ子)」だったり、「たけお(パンパンの子)」だったり「かずや(乞食の子)」だったりするのは、それはセンセーショナルだったんだろうなと思う。
 どれくらい改作されているか判らないのだけれど、恐らく、最初から最後までテンション高く、高く上げすぎたテンションで突っ走るような芝居だったんじゃないかなと思う。
 そして、申し訳ないけれど、そのテンションを今、本多劇場という空間で再現するのは、相当にキツイことなんだろうと思う。それは、客席側にいた私がそのテンションを受け止めきれないということでもあるし、一緒に盛り上がって行けないだろうということでもある。
 メジャーになるということは、ある意味、そういうことなんじゃないだろうか。

 そこをこの10人は、それぞれが身につけた武器を手に、「今の」「50歳の自分たちの」芝居に持って行く。
 それは、やはり30歳と50歳の差だし、観客の差だし、立場の差でもあるんだろうなと思う。ここに「時代の差」が入るのかどうかは今ひとつよく判らない。
 幼稚園児のときも高校生のときも問題を抱えていた彼らは、大人になってもやっぱり色々と問題を抱えていて、「はちろー(普通の子」が何故、一軒家の子と白鳥ゆみ(噂の転校生)一家と一緒に温泉旅館にいるのか、そういえば説明されることはなかったけれど、とにかく、普通の子と噂の転校生とがつるんで企んで彼らを一同に会させたらしい。

 「一軒家の子」は高校時代に書いた脚本以来、全く書けていない物書きになっていて、結婚した「噂の転校生」にも、自分の(一見娘に見える)息子にも辛く当たり放題らしい。
 この「噂の転校生」が集まった男たちそれぞれに「亭主を殺して」と頼むのだけれど、雰囲気は意外と険悪でもなければ不条理でもない。隣のスナックのママが加わって大宴会が始まってしまう。
 そんな中で、一人「俺にだけ言え」と言った男だけが「殺人」を実行しようとし、彼女の息子に見送られて2人で逃げることになるのは、多分、彼の声が一番良かったからだ。

 最後、結局どうしてその旅館にいて、どうしてつるんでいて、彼の目的は何だったのかよく判らない「普通の子」が温泉に浸かっているシーンで幕を下ろす。
 相変わらず、辛くて面倒くさいことが多い。
 でも、昔のメンツで集まれば普通に同窓会で、普通に大騒ぎして、普通に喧嘩もするし、深刻な話にもなれば、笑い飛ばす奴もいる。酒に溺れる奴もいれば、駆け落ちする奴もいる。
 18歳から今までは本当に長かった。色々あった。
 でも、とりあえずみんなが集まって、何とか今日1日は過ぎていったじゃないか。
 うん、まだまだ!
 そういう気持ちになる舞台だった。

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