「白い馬の物語」を聴く
あうるすぽっとプロデュース モンゴル国立馬頭琴オーケストラ×竹下景子「白い馬の物語」
演出 栗山民也
出演 竹下景子
演奏 モンゴル国立馬頭琴オーケストラ
公演日 2012年11月17日(土曜日)午後2時開演
場所 あうるすぽっと B列11番
料金 4000円
ロビーでは、モンゴル音楽の(恐らくは、今回来日したモンゴル国立馬頭琴オーケストラ関連の)CDが販売されていて、私も1枚(2000円)購入した。馬頭琴とホーミーを奏でる人のソロCDだそうだ。
また、ロビーにゲルが建てられ、自由に中に入ってみたり、スタッフの方の説明を受けたりできるようになっていた。その説明を少しだけ聞いていたら、モンゴルではゲル入口を背にして右側に女性が、左側に男性が寝るのだそうだ。そのため、炊事場も入口を背にして右側に作られているのだという。
モンゴルに行ったときゲルに泊まったり、遊牧民のゲルにお邪魔したりしたけれど、そんなことは気にしていなかったなと反省してしまった。
第1部がモンゴル国立馬頭琴オーケストラによる演奏、第2部が竹下景子の朗読による「白い馬の物語」という構成だった。
モンゴル国立馬頭琴オーケストラという名前だけれど、馬頭琴だけでなく複数の楽器で構成されている。全体で団員は50人ほどで、今回はそのうちの9人が来日したということだ。
馬頭琴奏者が3名、大馬頭琴(チェロのような感じである)奏者が1名、オルティン・ドーという民謡の歌い手が1名(彼女だけは他の奏者と衣装が異なる)、ヤタガという琴のような楽器の奏者が1名、リンベという横笛の奏者が1名、ヨーチンという箱形の弦楽器(こちら側から見ると鉄琴のように見える)の奏者が1名、打楽器奏者が1名という編成だ。
どれもモンゴルの伝統的な楽器である。
そして、もちろん、ホーミーも披露された。
曲目リストも配られており、第1部のコンサートの曲目は以下のとおりである。
ジャンツァンノロブ作曲「モンゴルのメロディー」
モンゴル民謡「空にかがやく太陽」
シャラブ作曲「ハラハ族の馬ジョノン」
ムルドルジ作曲「金のゲル宮殿」
オルティン・ドー「フォーシーズンズ」
ジャンサンノロブ作曲「望郷」
オルティン・ドー「涼しくて美しいハンガイ」
バラガ族民謡「遠くの恋人を慕って」
バットトグトフ編曲「風のささやき」
スヘバートル編曲「水辺に咲く花の上で」
モンゴル民謡「両手の10本のゆび」
ダンザンラブジャー作曲「最高の美しさ」
ジャンツァンノロブ作曲「心に沁みこむゴビ」
日本曲「浜千鳥」
ジャンツァンノロブ作曲「ゴビの野生馬ホラン」
印象に残ったのは、ヤタガという琴のような楽器の音である。
見た目は琴だけれど日本のものよりも弦が多く、奏者は座って楽器を斜めに降ろして演奏する。指に爪は嵌めない。
そのため、穏やかな音が響き、指で押さえたり、弾いたり、弦を揺らしたり、幅広い音を出すことができるようだ。
2曲目がこのヤタガの独奏で、思わずじーっと奏者の女性の手元を見つめてしまった。何しろ、前から2番目、ほぼ中央の座席だったので、細かいところまでよく見えたのだ。
もちろん、馬頭琴だけ4台の四重奏の響きも良かったし、ホーミーのどうやって出しているのか未だによく判らない二つの声の歌も何だか懐かしかった。
オルティン・ドーを聴いたときには、モンゴルは元ソ連領であるので、オペラが盛んだという話を思い出した。
意外だったのはリンベという横笛で、登場回数も多かったし、メロディーラインを担当していることも多くて、この編成の主役は彼だったんじゃないかと思ったくらいだ。
モンゴルでは、チンギス・ハンの誕生日について議論がずっと続いていたのだけれど、つい先ごろ、11月14日であるという結論が出たのだそうだ。
そして、11月14日は文化で功績のあった人に賞を贈ることになり、今回、作曲・編曲を担当したビャンバスレン・シャラブ氏もその受賞者の一人であるという。また、オーケストラからも5人が受賞したのだそうだ。
1時間10分ほどのコンサートの後、休憩を挟んで、「白い馬の物語」の朗読である。
題材は、「スーホの白い馬」だ。
物語はもちろん覚えている。
竹下景子は、アルプスの少女ハイジのようなといえばいいのか、アースカラーの短めのパンツにチュニック、バレエシューズのような靴を履き、赤い短いベストを羽織るという格好で現れた。
手に、薄い小冊子のような本を持ち、しかし、最初はこちらに語りかけるようにして始まる。
少しずつ「耳を澄ますように」言って、そして、朗読が始まった。
懐かしい、物語である。
最後には、朗読していた竹下景子自身が涙し、鼻を時にすすりあげながらの朗読になった。
もちろんハッピーエンドなどではないことは間違いないのだけれど、そこまで感情移入するということが、私にはすんなり受け入れられず、置いてきぼりを食ったような気持ちになってしまった。
でも、馬頭琴を作り上げたスーホの物語が終わり、後ろに張られていたパネルが開いて、馬頭琴奏者のネルグイ・アシト氏が現れて演奏を始めたときには、ほうっと思ったのだった。
満席とは言わないけれどかなり盛況で、なかなか充実した楽しいイベントだった。
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