「リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝」に行く
昨日(2012年11月24日)、招待券があると友人から誘ってもらい、国立新美術館で2012年12月23日まで開催されている、「リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝」に行ってきた。
10時30分に3人で待ち合わせをして入場したところ、いきなりの混雑に驚いた。これくらい人が多い美術展に来たのは久しぶりかも知れない。やはり3連休の真ん中で人出も多かったのだろう。
私は借りなかったのだけれど、イヤホンガイドは大地真央が声色を変えて演じるバージョンでなかなか楽しいらしい。
「リヒテンシュタインってどこ?」という体たらくで出かけたのだけれど、知らないのもむべなるかなという感じで、オーストリアとスイスに挟まれた、面積160平方キロほどの小さな国である。場所的にも、ハプスブルグ家との関係を考えても、ゲルマン系の人々の国だろうと思うのだけれど、仕事でリヒテンシュタインと付き合いのある彼女は「ラテンの乗りだ」と言い切っていた。
とにかく、そのリヒテンシュタイン侯爵家が18世紀以降、家訓に則って収集した一級かつ保存状態抜群の美術品のほんの一部が今回来日している、ということのようだ。
第二次世界大戦まで、ウィーン郊外にある侯爵家の「夏の離宮」で一般公開されていた美術品も、戦火を避けて一旦本国に戻り、その後長く秘蔵されていたのだけれど、2004年から再び夏の離宮で一般公開されるようになったのだという。
見終わってから、「次にウィーンに行く機会があったら、ぜひ、夏の離宮に行ってみたい」と3人で意見が一致した。
この美術展の白眉は、何といっても、エントランスからいきなり導かれる「バロック・サロン」である。
夏の離宮において、絵画、彫刻、工芸品、家具やタペストリーがバロック様式の室内装飾と調和するように一同に並べられ、空間全体がひとつの芸術として提示されており、そのため作品にはキャプションをつけていないのだという。
この「バロック・サロン」と名付けられた部屋だけは、その夏の離宮の展示方法を取り入れ、キャプションなし、ちょっと殺風景ではありつつも左右対称を意識し、天井には天井画が飾られ、広間風に展示品が置かれている。ナンバーはあるけれど、キャプションはなく、バロック・サロンだけの展示品案内の紙が別に用意されている。
象眼細工のテーブルやチェストはちょっと東洋趣味のようにも見えるし、最初は中国の情景を描いているのだろうと思ったタペストリーは実はインドがモチーフになっているらしい。
コンソール・テーブルという壁につけて置かれるテーブルの脚の装飾は見事だし、鏡に入ってしまったヒビを木の枝に見立てて装飾に仕立て上げてしまうというのも凝った装飾だと思う。
こんな贅沢品に囲まれたお部屋は落ち着かないよと思いつつ、しかし、ここまで徹底されるとふわーと溜息ともつかない溜息をつくしかない。
こういった美術品の数々に囲まれて育てば、家訓に則って「美術品の目利き」となることができるということだろうか。
贅沢な気分に浸った後も、贅沢な美術品の数々が続く。
リヒテンシュタイン侯爵家ゆかりの品々の後は、ルネサンス期、イタリアバロック、ルーベンス、17世紀のフランドルとオランダ、18世紀の新古典主義から、ビーダーマイヤーまで、これでもかと続くから凄い。
美術展のポスターやチケットでクローズアップされている、ルーベンスの「クララ・セレーナ・ルーベンスの肖像」の女の子も可愛買ったけれど、彼女よりも、「マリー・フランツィスカ・リヒテンシュタイン侯女 2歳の肖像」の寝顔の方がもっと可愛かったと思う。
みんな、お人形を握りしめてほっぺたを赤くして眠る彼女の絵に釘付けである。
「ようこそ、わが宮殿へ」という惹句だって、彼女に冠された方がずっと合っているではないか。
縦33cm横27cmという小さな絵だし、作者のフリードリヒ・フォン・アメリングという人も全く知らないのだけれど、とにかく印象に残ったということでいえば、この絵が1番だ。
この他に印象に残っているものというと、ラファエロの「男の肖像」のモデルは不明だということだったけれど、私にはクドカンに見えたとか、エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブランの「虹の女神イリスとしてのカロリーネ・リヒテンシュタイン侯爵夫人」では身分高い夫人が裸足で描かれていることに物議が醸されたと聞いて「そんな僅かな部分が話題になるのか・・・」と唖然としたり(本当に裸足なだけでくるぶしまでの長いドレス姿なのだ)、ルーベンスの「マルスとレア・シルヴィア」では、マルスが全く普通の(というか、普通よりモテない)ただの人に見えるよと思ったこととかが挙げられる。
そして、「貴石象嵌のチェスト」と「豪華なジョッキ」には本当に唖然とした。
貴石(半貴石ではない)を象眼して風景や静物を描き、それを一面に張り巡らせたチェストの豪華さときたら普通ではない。流石に背面は木肌のままだったのを確認して、逆にほっとしたくらいだ。
そして「豪華なジョッキ」というタイトルも凄いけれど、確かに、全て象牙、高さ35cmのジョッキ全体にとにかくこれでもかと浮き彫りの彫刻が施されている。絶対にジョッキとしては使えないと思うけれど、それにしても、超絶技巧を駆使したあり得ないようなジョッキだった。
一番前でゆっくり見るには並んで待たなければならないところも多くて、大体90分くらい見ていたと思う。
かなり豪華な気分になった。友人に感謝である。
「マリー・フランツィスカ・リヒテンシュタイン侯女 2歳の肖像」などの絵は、ミュージアムショップで「100年くらいは褪色しない」と銘打たれた版画(だったと思う)が額装されて30000円から50000円で販売されていた。友人が買おうかどうかかなり迷っていて、散々後押ししたのだけれど、まだ迷っているようだ。
私もこっそりGINZA TANAKAが出したコインペンダントに惹かれたのだけれど、130000円は思い切れなかった。
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コメント
あんみん様、こめんとありがとうございます。
リヒテンシュタイン展に行かれたのですね。よかったですよね〜。
マリー・フランツィスカ・リヒテンシュタイン侯女には誰でもノックアウトされちゃいますよね。
さて、私は今年は「TOPDOG/UNDERDOG」で見納め、来年は「音のいない世界で」が観劇初め(そんな言葉はないかも)です。
引き続き、よろしくお願いいたします!
投稿: 姫林檎 | 2012.12.24 19:39
こんばんは。
行きたいと思いつつ、行きそびれていて最終日(12/23)に行き、
先ほど帰宅しました。
午前中でしたが混んでましたね。人混みで途中まで暑かったです。
「マリー・フランツィスカ・リヒテンシュタイン侯女 2歳の肖像」。
かわいい薔薇色ほっぺにやられてしまい、
ショップでファイル3種類も買っちゃいました!
デジタル版画、結構みなさん購入されてたようですね。
赤いシールがたくさん貼ってありましたよ。
さて今回の遠征は、『祈りと怪物ケラバージョン』
『TOPDOG/UNDERDOG』『音のいない世界で・初日』でした。
とにかく松さんが素敵!
ご期待あれ。
投稿: あんみん | 2012.12.24 00:19