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2012.11.23

「The Library of Life まとめ*図書館的人生(上)」 を見る

イキウメ「The Library of Life まとめ*図書館的人生(上)」
作・演出 前川知大 
出演 浜田信也/盛隆二/岩本幸子/伊勢佳世
    森下創/大窪人衛/加茂杏子/安井順平
    菊池明明/西山聖了
観劇日 2012年11月22日(木曜日)午後7時開演
劇場 東京芸術劇場シアターイースト F列12番
料金 4200円
上演時間 2時間20分

 ロビーでは過去公演のDVD等が販売されていた。

 ネタバレありの感想は以下に。

 イキウメの公式Webサイトはこちら。

 前に見た「図書館的人生」はオムニバス形式で、一話完結のショートストーリーが何本かという形だったので、今回もそういう感じなのかと思っていたら違った。
 舞台は、一見して図書館である。
 そこで本を探す人あり、本を読む人あり、ボランティアでてきとーに本を書架に戻す人あり、真剣に出口を探す人あり。
 そして、ふっと場面が変わり、役者さんたちが演じる役も変わり、お話の断片が次から次へと語られて行く。いくつかの物語を分割してかわりばんこに語られていくという感じだ。

 出口もなく、適当に本が並び、その「本との偶然の出会い」を楽しむ図書館から、一転、どこかの病院で治験に協力しようという若者達のシーンになり・・・と続いて行く。
 何というか、切れ目はないし、何かきっかけがある訳でもない。それでも、1秒くらいの間をおいて、シーンが変わったことに気付く。
 そうして、次々と違う人物を演じたり、その演じられている場面の背景になったりするためか、役者さんたちの衣装は「色」になっている。黄色、青、水色、茶色、緑、赤・・・、とテーマカラーという訳でもないのだろうけれど、そこに個性はないと主張しているようにも感じられる。

 何というか、静かな舞台である。
 配られるパンフによると、物語は6つ。
 「青の記憶」
   病院に治験で集まった若者たちが地震にあってその後に。
 「輪廻TM」
   生まれ変わる前と生まれ変わった後の自分の視点を体験できるマシンの話
 「ゴッド・セーブ・ザ・クイーン」
   投身自殺しようとしている女の元に魂と肉体を回収しに来た男たち
 「賽の河原で踊りまくる「亡霊」」
   賽の河原で鬼に無意味な作業をするよう命じられた若者4人と、命じた奪衣婆と鬼の話
 「東の海の笑わない「帝王」」
   感情表現が顔ではなく肉体の反応で現れる男と、その妻の話
 「いずれ誰もがコソ泥だ、後は野となれ山となれ」
   万引きのプロと、そのラインを守ろうとしないプロとの攻防と、懸賞で暮らしを立てる女

 万引きのプロの話は、多分、「図書館的人生 vol.2」に入っていた話ほぼそのままだ。万引きのプロを安井順平が演じているところも同じだし、その元締めというか先輩を森下創が演じているところも同じである。そのプロが惚れ込んだ懸賞で暮らしを立てる女が加茂杏子から伊勢佳世に変わり、ルールも何もなく万引きしまくる万引きのプロを大窪人衛から西山聖了に変えたことで、ちょっと雰囲気が変わったようにも見えるのだけれど、それは、それぞれのショートストーリーの側から見ると細切れで演じられているせいかも知れない。

 ショートストーリーの間に関連は多分ほとんどない。
 唯一、明確に関連があったのは、ゴッド・セーブ・ザ・クイーンで投身自殺しようとしていた女の魂は、よく判らない2人組によって彼女が殺してしまった男の中に入り、その男(というか女)が、「輪廻TM」で自分の来世が知りたいとマシンの最初の使用者になりに来る、という2本だけである。

 ただし、何となく全体に一本の糸を通しているのが、「本にその人の人生がまるまる収まっている」という設定で、これはイキウメのお芝居ではなく、「抜け穴の会議室」という前川知大がチーム申に書いたお芝居に通じる設定だと思う。

 静かな静謐なお芝居という印象は、全体をグレーにまとめた舞台セットからも、淡々としかし素早く的確に場面を転換させる役者さんたちからも立ち昇る。
 カンパニーの強さだなと思う。
 イキウメは、それぞれ違う個性を持った役者さん達が集まっていて、どんな飛び道具を使っても使われても大丈夫という感じがしていい。

 静謐な舞台だったけれど、「賽の河原で踊りまくる「亡霊」」のときに、「鬼」が奪衣婆の「折檻」という無表情な指示に従って手にしたゴルフクラブで殴ったり倒れた人を蹴り飛ばしたりしているのは、何だか意外な気がした。決して暴力を扱わない作風ではないと思うのだけれど、ここまで直接的な暴力ってあったっけ? と思ったのだ。
 もっとも、「実は」という説明はきちんと落とされるところが、イキウメだと思う。

 「まとめ」でこれで終わってしまうのは本当に淋しい。
 とりあえず、「(下)」に期待大、である。

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