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2012.12.31

「2012年の5本」を選ぶ

 2012年に見たお芝居は56本58公演(「シレンとラギ」と「エッグ」をそれぞれ2回見ている)だった。
 2011年よりも2本減っている。2012年は海外旅行にも2回行ったし、国内旅行もいつも以上に出かけているのにこれしか減っていないのは我ながら不思議である。
 来年も、本数はともかく、楽しくお芝居を観たいと思う。

 58公演見た中から選んだ「2012年の5本」はこの5本である。
 何故か、春に見たお芝居に集中する結果となった。
 そして、井上ひさしの戯曲が2本。2012年は井上ひさしの年だったと思う。

「雪やこんこん」@紀伊國屋サザンシアター 2012.3.4
 これは、とにかく高畑淳子とキムラ緑子という2人の女優が強力かつ強引に客席を引っ張って飽きさせず笑わせ掴んで放さない、という舞台だった。次々繰り出される昭和初めの頃の舞台の決め台詞は名調子なのだけれど、日常耳にしていない名調子で言葉使いだから、そうそう簡単にはついて行けない。
 それを、魅力に変え、滑舌良く名調子を名調子として聞かせ、芝居がかった台詞や動きの数々に説得力を持たせたのは、この2人ならではだったと思う。
 その伏線は回収できなかったんじゃないかとか、そこは強引すぎるんじゃないかとか、時々ちらと頭に浮かばなかった訳ではないのだけれど、やはりこの2人の迫力と「楽しんでいる」という強烈なパワーには敵う訳がない。
 最後の瞬間まで大笑いしていた、本当に楽しい舞台だった。

「ワンダーガーデン」@座・高円寺1 2012.3.18
 男女4人ずつの登場人物を女優4人で演じる「四華」バージョンと、こちらの男優4人で演じる「四獣」バージョンと、2つのバージョンで交互に上演するというなかなか楽しい企画だった。「四獣」にとっては再演で、初演のときとは配役が異なっているそうだ。
 これは、とにかく描かれている男性陣4人が格好いい。
 演じている花組芝居の男優陣もそれぞれ格好いい。
 初演バージョンもぜひ見てみたかった! と思うのだけれど、私のミーハー心はたっぷりと満たされ、とにかくその格好良さをひたすら堪能したのだった。

「闇に咲く花」@紀伊國屋サザンシアター 2012.4.29
 初演も見ていて、そのときはひたすら「理不尽」を感じていたようなのだけれど、今回は、そこまでの怒りは湧いてこなかったように思う。でも、見終わって書いた感想はかなりぐちゃぐちゃだった。
 そういうぐちゃぐちゃっとした感情を呼び起こすお芝居だったし、このぐちゃぐちゃな感じがどこから来ているのか、自分がこのお芝居から受け取ったものは何だったのか、戦争と神社と「上」と日本人と忘れちゃいけないことと、でも理不尽なことと、ずっと「考えなくてはならないこと」として残るお芝居だったと思う。
 「忘れっぽい日本人」と「でもたくましく生きる日本人(女性)」とを描ききっていた。

「海辺のカフカ」@彩の国さいたま芸術劇場 大ホール 2012.5.19
 「海辺のカフカ」という小説はかなり長い長編小説で、カフカ少年の視点とナカタ老人を見る視点と、章が交互に語られて行く。魚が振ったり烏と呼ばれる少年が「いたり」、要するに、舞台化はかなり難しいのではないか、かなり大胆な工夫が必要なんじゃないかという感じがしていて、当初は上演時間4時間が予定されていたし、見る前は一体どういう風になるのだろうと思っていた。
 かなり大胆に省略されていて、「そこを省略しちゃうの?!」と叫びたい部分もあったけれど、全体として非常に「美しい」舞台になっていたと思う。
 久々に蜷川演出を堪能した。

「宮沢賢治が伝えること」@世田谷パブリックシアター 2012.6.1
 男優2人に女優1人、その3人が様々な組み合わせで宮沢賢治の文章を朗読するという企画である。
 その、白石加代子・段田安則・野村萬斎の回に行って本当に良かったと思う。やはり芸達者な方々の朗読は朗読を越えて一瞬でお芝居になる。
 「注文の多い料理店」では爆笑したし、「雨ニモマケズ」の力強さに脱帽だったし、「永訣の朝」の切なさは特筆ものだった。
 僅か1時間ではあったけれど、本当に濃密な1時間だった。

 ここに挙げた5本以外で特に迷ったお芝居はこんな感じである。

「深呼吸する惑星」@サンシャイン劇場 2012.1.8・1.10
「藪原検校」@世田谷パブリックシアター 2012.6.29
「しみじみ日本・乃木大将」@彩の国さいたま芸術劇場 2011.7.14
「おじクロ」@紀伊國屋ホール 2012.11.16

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