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2012.12.02

「菅原伝授手習鑑~天神さまの来た道~」を見る

花組芝居「菅原伝授手習鑑~天神さまの来た道~」
原作 竹田出雲・三好松洛・並木千柳
脚本 石川耕士
演出 加納幸和
出演 加納幸和/水下きよし/原川浩明/溝口健二
    山下禎啓/桂憲一/八代進一/大井靖彦
    北沢洋/横道毅/嶋倉雷象/秋葉陽司
    松原綾央/磯村智彦/小林大介/美斉津恵友
    堀越涼/谷山知宏/丸川敬之/二瓶拓也
観劇日 2012年12月1日(土曜日)午後1時開演
劇場 あうるすぽっと G列20番
料金 5800円
上演時間 3時間(15分の休憩あり)

 ロビーでは、パンフレット(1000円)の他、恒例の舞台生写真、物販隊長コング桑田さんイチオシのクリアファイルなどが販売されていた。
 また、25周年記念ということもあってか、過去公演の舞台ポスターなども展示されていた。

 ネタバレありの感想は以下に。

 花組芝居の公式Webサイトはこちら。

 「菅原伝授手習鑑」は、元は歌舞伎と人形浄瑠璃で演じられるお話だそうだ。歌舞伎や人形浄瑠璃で見た記憶はないのだけれど、うっすらあらすじは知っている。
 あらすじを知っているというよりは、我が子を菅原道真の子の身替わりとして差し出すという「寺子屋」の場面だけを知っているという方が正確かも知れない。
 要するに、そのくらいの「予備知識なし」の状態で見に行ったということである。

 ただ、逆に言うと、非常に後味の悪いお芝居だという予備知識だけはあったことになる。この前の日に見た「バカのカベ」があまり後味のいい物語ではなかった(と思った)こともあって、ちょっと最初は引き気味に見始めてしまったかも知れない。
 そういえば最近「ネオ歌舞伎」という言い方を聞かなくなったような気もするけれど、花組芝居の芝居はネオ歌舞伎である。基本的に、台詞は現代日本語で語られるし、BGMに「The ニッポンの歌謡曲」が使われて役者さんが歌い踊ったりする。
 しかし、コング桑田氏が「パンフレットを購入すれば役者の素顔が判ります!」と大宣伝していたように、化粧や衣装は「歌舞伎」である。

 「寺子屋」はうっすら知っていたけれど、三つ子の三兄弟の話は全く知らなかった私は、あっさりと物語に取り込まれた。
 先が気になるお芝居なのだ。
 気になるといえば、一人派手な顔を作られている藤原時平もかなり気になる。この菅原伝授手習鑑では何故かキャデラックに乗って登場するのだからなおさらだ。ここまで判りやすい悪役で、しかも情状酌量の余地は全くない(少なくとも語られることはない)というのもなかなかいないのではなかろうか。

 物語の前半は、菅丞相が太宰府に流されることになった原因である、斉世親王(天皇の弟)と苅屋姫(菅丞相の養女)との恋と、太宰府までの道行きの途中、苅屋姫の実母である覚寿の家に立ち寄り、身を寄せていた苅屋姫との対面や、菅丞相暗殺を時平から命じられていた、苅屋姫の姉の夫父子の企みから殺人、菅丞相が精魂込めて彫った木彫りの人形が菅丞相の身替わりを務めたりと、本筋だけでもかなりのぎゅう詰め状態である。

 これに、菅丞相が目をかけていたという三つ子の兄弟が、それぞれ、斉世親王に使えていて自分が恋を取り持ったばかりに恩人に濡れ衣を着せさせてしまったと切腹する桜丸、菅丞相の妻子を守り(子供である管秀才は、菅丞相の書の秘伝を受け継いだ武部源蔵という男に預けるのだけれど)最後には太宰府に赴く梅王丸、時平に仕えて完全に敵方に回った(ように見える)松王丸と、全く別の道を歩くことになるというサイドストーリーが加わる。
 というか、ここに三つ子の親である白大夫と、三兄弟それぞれの妻の話も加わると、これだけで十分に一本のお芝居だ。

 行きがかり上、余り語らずに来てしまったけれど、この物語の主役は菅丞相である。と思う。
 高潔かつ英明、故に時平に疎まれて(というよりは追い落とされて)濡れ衣まで着せられて太宰府に流されてしまう。それだけでなく、本人は元より、妻子まで命を狙われるというのだから悲劇の主人公である。
 それが、時平が、天皇や上皇、その一族を殺して自分が至上の地位をを得ようとしていると聞くと、いきなり荒ぶる雷神となって自らは死に、そして遠い太宰府から京都の時平を成敗する。
 何というか、さてどこに主眼を置いて役作りをすればいいのかと悩む感じではなかろうか。「難役」と言われているそうだけれど、そりゃそうだろーなー、と呆れ半分に思ってしまう。
 今回の桂憲一は、どちらかというと、淡々と演じることで凄みを垣間見せようという作戦のように見えた。

 「ここで休憩か?」というタイミングを3回くらい外して休憩に入ったので、実際、休憩前にどこまで演じられたか覚えていない。困ったものである。
 キャンディキャンディの替え歌が歌われたのは、どの場面だったろうか。

 後半は、菅丞相の妻園の前を守っていた桜丸の妻八重が討ち死し、しかし、園の前自身は通りかかった山伏(実は松王丸)に助けられる。
 ここではまだ、松王丸が改心したのか、相変わらず時平方についていて園の前を攫うという手柄を奪っただけなのかは判然としない。
 次に、管秀才が預けられていた寺子屋に時平の手の者が現れて、武部源蔵に秀才の首を差し出せ、その首実検は松王丸が行うという話に続くから尚更だ。

 八代進一演じる松王丸の妻である千代が寺子屋にやってきて、息子を預け、しかし、挙動不審に涙の別れを息子と交わしている様子で、そういえばこれは「寺子屋」だったんだよと思い出した、マヌケな私である。
 何というか、私の中では何故か、武部源蔵夫婦が自分達の子供の首を身替わりとして差し出すという話にすり替わっていたのだ。
 武部源蔵はこの松王丸夫婦の息子の首を「管秀才の首である」として差し出し、首実検に現れた松王丸はこれを認める。
 そして、自分達の子を身替わりに差し出したのだと夫婦に語り、救い出した園の前と秀才を対面させて、武部源蔵に覚寿の元へ連れて行くように言うと、自分たちは息子の菩提を弔うと白装束になる。

 どうも、ラストシーンが思い出せないのだけれど、「菅原伝授手習鑑」では、「大内天変の場: 天神の神威により時平は破滅、菅秀才が菅原家を再興し、菅丞相には正一位が贈られる。」という終わり方らしい。
 時平が、天皇に拝謁しようとしている斉世親王と刈屋姫、管秀才の3人を邪魔しようとして、逆に菅丞相に討たれてしまうシーンは覚えているのだけれど、どうしてもその後が思い出せない。
 私の記憶に残っているのは、出演者が総出で一幅の絵のように舞台上に並んで見得を切っている、そのシーンだけである。

 今回、「通し」で見られたためなのか、「寺子屋」の話に後味の悪さや違和感を覚えなかったのが不思議である。
 3時間、ぎゅっと詰め込まれた、中身の濃い、でも「説明だけ」になっていない、楽しい舞台だった。
 ネオ歌舞伎、万歳! である。

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