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2013.01.13

「ZIPANG PUNK~五右衛門ロックIII」を見る

劇団☆新感線 2012年冬興行 SHINKANSEN☆RX「ZIPANG PUNK~五右衛門ロックIII」
作 中島かずき
演出 いのうえひでのり
作詞 森雪之丞
出演 古田新太/三浦春馬/蒼井優/浦井健治
    高橋由美子/橋本じゅん/高田聖子/粟根まこと
    村井國夫/麿赤兒 ほか
観劇日 2013年1月12日(土曜日)午後6時開演
劇場 東急シアターオーブ 2階10列22番
料金 12500円
上演時間 3時間45分(20分の休憩あり)

 

 東急シアターオーブという劇場には初めて行った。ヒカリエの11階にあって、エレベーターが混むかと思ったけれど、かなり大きな、レストラン街と劇場エリア以外は止まらないエレベータがあって、問題なく行くことができた。
 階段の多いロビーはちょっと構造が判りにくいけれど、一面のガラスから夕焼けに浮かぶ富士山も見えて、なかなか気持ちのいい場所である。

 

 その階段が多すぎて平らな場所が少ないロビーでは、いつもより控えめな物販コーナーが用意されていた。パンフレット(2500円)や、Tシャツ(値段はチェックしそびれた)等々、気になったけど購入しなかった。

 

 ネタバレありの感想は以下に。

 

 「ZIPANG PUNK~五右衛門ロックIII」の公式Webサイトはこちら。

 とにかく楽しかった!
 この一言に尽きる。越冬公演、確かに年末年始を明るく笑って過ごせるお芝居である。
 2階席の10列目というとかなり高い。完全に見下ろす感じになるけれど、逆に新感線が凝る床面の絵や歌や踊りのフォーメーションはばっちりで、オペラグラスで表情も見えるし、映像を使って必要なところは補ってくれるので全く問題ない。もちろん、舞台近くでも見てみたいと思うけれど、2階席には2階席の楽しみ方ができるところが新感線の舞台のいいところだ。
 もっとも、2階10列をS席にするなら、A席とB席は一体どこにあるんだと思わなくもない。

 

 古田新太演じる石川五右衛門は相変わらずの大泥棒で、南蛮から帰ってきて派手に暴れているらしい。
 登場が宙づり(いや、宙乗りか?)で南禅寺の大門から、というのも外連味たっぷりでいい感じである。
 そこに、蒼井優演じる猫の目お銀という盗賊や、三浦春馬演じる明智心九郎と名乗る京都所司代の侍が絡んで、高橋由美子演じる春来尼が住職を務める津雲寺に残された空海のお宝を巡る一騒動が始まる。

 

 最初っから実は全ての謎を知っていてかつ仕掛けていたらしい「これぞ八百比丘尼」という感じの高橋由美子のいかにも意味ありげな様子もいいし、村井國夫演じる堺の豪商も格好いい。いい声で歌われて「スーパースター」と持ち上げられても沈まない姿を見せられたら惚れるしかない。一方の麿赤兒演じる豊臣秀吉はあくまでもひたすら「妖怪」な感じを漂わせる。
 これだけ脇を豪華かつクセのある人々で固められて面白くない筈がないのだ。
 豊臣秀吉の朝鮮出兵を背景に石川五右衛門を大活躍させ、史実も虚実織り交ぜて取り込みまくる。今回は歌と踊りのシーンがさらにパワーアップして、飽きさせるようなことは一瞬たりともない。

 

 さらに、史実といえば橋本じゅん演じる前田利家と粟根まこと演じる石田三成がそれぞれ見事にハマっていて、かつこの二人だったらこういう風になるんだろうなというやりとりを見せてくれるところが憎い。
 虚の方でいえば、前作に登場した天海祐希が映像だけだけれどアンヌ女王として登場して空海の謎を高田聖子演じるマローネが狙っていると五右衛門に警告し、その警告の手紙を届けてきたのが浦井健治演じるシャルル・ド・ボスコーニュと、前作との絡みもバッチリである。

 

 ここまで揃えてきて全編が見どころのような舞台なのだけれど、一つ見どころを挙げろと言われたら、私は三浦春馬を押したい。
 動けて歌えておどけて見得も切れる。こんなに格好いい役者さんだとは知らなかった。オペラグラスを覗いていたときは、ほぼ彼を追っていたような気がするくらいである。
 蒼井優も細い体でよく動く。本当に楽しそうに演じていてこちらもにっこりしたくなるくらいなのだけれど、気のせいか、歌声が不安定なところが惜しい。彼女が歌っていると何となく心配になってくるのだ。

 

 逆に、古田新太、橋本じゅん、三浦春馬に高橋由美子の4人で歌ったシーンはとにかく圧巻だった。いや、上手い人が力一杯歌うって気持ちがいい、と思ったものである。
 何のシーンだったかはすっかりさっぱり忘れているけれど、とにかく「あー、気持ちいい」と思ったことだけは覚えている。

 

 明智心九郎は実は明智光秀の子供で、堺の豪商と組んで秀吉に復仇しようとするけれど、結局、その豪商に踊らされ、「思うとおりに振る舞え、生きろ」と言いに来たお銀とともにとらわれの身になってしまう。
 そこへやってきた秀吉は実は石川五右衛門の変装で(物陰に本物が隠れ、煙幕とともにその衣装をちょんまげを外しながら五右衛門が悠々と現れるところが一々可笑しい)、マローネ達ともども一網打尽にされる。それもまた、五右衛門が秀吉に「空海の宝」を担保に持ち出した駆け引きの結果である。

 

 空海の宝は黄金と思われていたけれど、実は、春来尼がたびたび「食うかい」と言い続けていたおにぎりに似た薬草が「不老不死の薬」だったらしい。
 それを差し出された秀吉は(ここで、秀吉が9歳で瀕死の際におにぎりを与えて「生まれ変わらせた」のが春来尼だったというオチをつけておくところが見事である)、「今のまま死なない」と言われて「引き際は心得ておる」と拒絶する。
 春来尼はこの薬草を食べていたのだろう、と思わせるところまで計算されているのが憎い。

 

 そして、秀吉は五右衛門に「天下統一の後、お前は道が見えていないのではないか。だから遊ぶしかできないんだ」と捨て台詞を吐かれ、五右衛門には「去ね!」と怒鳴りつけるものの、光成を呼んで「遊びは自分一代にする」と申しつけるところが、やはり、妖怪には妖怪にも落とし前の付け方があるというところだろう。
 そういう意味では、捕まって「これからのことをそろばんで弾け」と言われた豪商善右衛門が「自分が金以外のsろばんを弾くと思うな」と見得を切るのも、やはり「悪党には悪党の大物がいる」感があって格好いいのである。

 

 とにかくがーっと集中して、大団円ですっきりして、殺陣と歌と踊りでスカッとする、超エンターテイメントな舞台だった。
 やはり舞台はこうでなくっちゃ、なのである。

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