« 「木の上の軍隊」 の抽選予約に申し込む | トップページ | 「テーブルウエア フェスティバル2013」に行く »

2013.02.10

「遠い夏のゴッホ」を見る

「遠い夏のゴッホ」
作・演出 西田シャトナー
出演 松山ケンイチ/安蘭けい/石川禅/田口トモロヲ
    手塚とおる/福田転球/保村大和/吉沢悠 他
観劇日 2013年2月9日(土曜日)午後1時開演
劇場 赤坂ACTシアター M列29番
料金 9800円
上演時間 2時間40分(15分の休憩あり)

 あまり物販のコーナーが混雑していなかったのが意外だった。パンフレットは(多分)1500円だったと思う。その他にTシャツやクリアファイルなどが販売されているようだった。
 赤坂ACTシアターはもう少しロビーに椅子があるといいのになと思う。

 ネタバレありの感想は以下に。

 「遠い夏のゴッホ」の公式Webサイトはこちら。

 西田シャトナー演出作品を見るのは何年ぶりだろう。惑星ピスタチオ解散以来のような気がする。同じく保村大和を舞台で拝見するのも恐らくは惑星ピスタチオ解散以来だと思うし、佐々木蔵之介からお花が贈られているんだななどとしみじみしてしまった。
 今回の劇場に、惑星ピスタチオの舞台を見たことがある観客はどれくらいの割合でいるんだろう。
 それはともかくとして、流石にパワーマイム全開とは行かず、平和堂ミラノが作・演出した舞台の静けさのようなものも取り入れつつ(オマージュなのかしら、と思った)、という舞台だったと思う。
 最初と最後(だったと思う)に出演者全員が舞台上に佇み、森の情景を群唱とパワーマイムで表しているところなどは特にそう感じた。群唱で美波の声が目立ってしまうのが惜しいところだと思う。

 登場人物は全員が虫である。
 松山ケンイチ演じる蝉のゴッホと、美波演じる同じく蝉のベアトリーチェとの恋物語だ。
 蝉の幼虫である2人は、蝉になったら「僕の一番上手い歌」を聴かせるとゴッホが言い、ベアトリーチェは「一番かどうかは関係ない。ゴッホの歌を私は聴く」と言う。しかし、2人は同い年で同じ年に羽化すると思い込んでいたのだけれど、実はゴッホは1年自分の年齢を数え間違えていて、ベアトリーチェよりも先に1年早く羽化してしまう。
 羽化して初めて知ったことには、蝉は羽化したその夏しか生きられない。そうしたら、来年羽化するベアトリーチェに自分は歌を聴かせられない。だから絶対に冬を越したいとゴッホはなるべく飛ばず、なるべく歌わず、冬を越す方法を探し始める。

 基本的なキャラは全員が持っているけれど、出番ではないときには、「働き蟻の1人」になったり、一人数役が普通のようだ。「虫」だからこそ違和感がないとも言えるかも知れない。
 幼虫時代は吉沢悠演じるミミズと仲良くし、先輩だと思っていた同期の蝉に福田転球や筒井道隆がいたり、蝉の彼らを「巣を壊す天敵」として捕食しようとする蟻たちも、女王蟻に安蘭けいがいて存分に歌声を披露するし、手塚とおると竹下宏太郎はその女王の側近として好対照な位置にいるらしい。保村大和演じる蜘蛛の「姐さん」が巣を張る木に集っている、何故か冬越えができる石川禅演じるクワガタにゴッホは越冬の方法を尋ねるがはかばかしい答えは得られず、しかし田口トモロヲ演じる長生きのカエルに命を狙われつつも冬を越す方法を教えてもらう。
 羽化した直後に木から落ちて歌うことができなくなったおかげか晩秋まで生き延びた筒井道隆演じる蝉のアムンゼンとともに、長老カエルの忠告に従って「外」を目指したゴッホは何とか暖かい場所で冬を越し、ぼろぼろになりながらも生まれた木に戻って羽化したベアトリーチェとの邂逅を果たす。

 こうしてあらすじにしてしまうとストーリーは単純明快、しかし、初舞台という松山ケンイチの周りにはさりげなく豪華で芸達者な役者さんたちが固めている。
 蝉だし、ミミズだし、蟻だし、蜂にカマキリにカブトムシだし、「虫」を人間が表現するためにパワーマイムをそこかしこで使っている。そこで行われていることは激しく厳しい生存競争だし、ゴッホがやろうとしていることは自然の摂理への挑戦で、テーマは実に壮大で、でも人間が昆虫を演じてかつ壮大なテーマに挑み、しかし重くなりすぎないよう時々細かく笑いを取って行く。
 かなり微妙なバランスの上で成立している舞台で、成立させるためにはこれだけの役者さんたちが必要だったんだろうと、ストンと腑に落ちた。

 衣装も決して虫っぽい訳ではなく、虫らしさは、本人が「蟻です」等々と宣言し、あとはパワーマイムで表現される。
 その口で説明しつつ表す、という表現の方法が、そのまま笑いをもたらしていたりするのが可笑しい。
 舞台上で行われているのは命がけの恋愛で、そこに友情だったり親愛だったり、親子の情だったり忠誠心だったり、様々に重い感情が渦巻いているのだけれど、虫だし、その「軽さ」「笑い」で中和されているように思う。
 うん、ありだ。
 そういう感じがした。

 それはそれとして、「森が四角い」とか「見ようと思わなければ見えない平らな塀がある」とか「二本足の恐ろしい動物がいる」とか「四角い木がたくさん生えている」とか、人間社会との関わり、虫が暮らしている場所の狭さ危うさを言っていることは判るのだけれど、具体的にどういう状況を説明していたのか、最後まで判らなかった自分が悲しかった。

|

« 「木の上の軍隊」 の抽選予約に申し込む | トップページ | 「テーブルウエア フェスティバル2013」に行く »

*芝居」カテゴリの記事

*感想」カテゴリの記事

コメント

 HALさま、コメントありがとうございます。

 やはり、この舞台で描かれていた虫の生態は「事実」なんですね。
 教えていただいてありがとうございました。

投稿: 姫林檎 | 2013.02.18 22:52

実際にクワガタは越冬できる昆虫なんですよ~

投稿: HAL | 2013.02.16 21:59

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「遠い夏のゴッホ」を見る:

« 「木の上の軍隊」 の抽選予約に申し込む | トップページ | 「テーブルウエア フェスティバル2013」に行く »