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2013.04.22

「しゃばけ」を見る

アトリエ・ダンカン プロデュース「しゃばけ」
原作 畠中恵(新潮社刊)
脚本・演出 鄭義信
出演 沢村一樹/臼田あさ美/宇梶剛士/高橋光臣
    阿知波悟美/久保酎吉/池田有希子/西村直人
    星野園美/金井良信/孔大維/水谷悟
    根本大介/マギー/山内圭哉/麻実れい/他
観劇日 2013年4月20日(土曜日)午後7時開演 初日
劇場 新国立劇場中劇場 1階P列16番
料金 9500円
上演時間 2時間55分(15分の休憩あり)

 ロビーではパンフレット(値段はチェックしそびれた)等を販売していた。
 終演後の物販はないようだったので、観劇前か休憩のときに購入する必要がある。そのためか、パンフレットと金平糖だけは休憩時間中に客席に売りに来ていた。

 アトリエ・ダンカンの公式Webサイトはこちら。

 「しゃばけ」のシリーズは何冊か読んでいるのだけれど、あの通りの世界が再現されると思って行くとだいぶ違うことに驚くと思う。
 沢村一樹を主役に持ってきて10代半ばの若者「若旦那」を演じさせるのかと思いきや、設定を40代に変更している。それにともなって、宇梶剛士演じる幼なじみで親友の栄吉も(多分)40代以上という設定なんだろう。
 それだけで、かなり印象が異なるし、何というか、原作の持つ「意味」も違ってくるように思う。15歳と40歳では「実は自分の祖母は妖かしだった」と聞かされたときの反応も変わるだろうし、実は自分には腹違いの弟がいたと知ったときの行動も変わろうというものである。何より、体が弱くて明日生きているかどうかも判らない、という状況に対する諦観みたいなものが全く違うだろう。

 若旦那と臼田あさ美演じる栄吉の妹であるおはるとのやりとりのところだけは、何故だか20代の若者同士のようにシーンが作られていて、それもまた、妙である。
 臼田あさ美の台詞回しがどうにも一本調子に聞こえてしまうというのも惜しいところだけれど、何というか、とにかく原作とは違うものだと思って見た方がいいようだった。

 「妖かし達が舞台狭しと駆け回り、歌い、踊る」という宣伝文句は確かにその通りで、特に歌い踊っていた麻実れいが大活躍だ。若旦那の設定がとにかく人が良くて当たりが柔らかいというところだから、息子の分も含めて母親の多恵と祖母のお銀の二役を務めた麻実れいが持って行った感がある。歌うわ、踊るわ、笑いは取るわ、大活躍だ。
 とにかく可笑しい。
 けれど、劇中、ものの見事に台詞を忘れたシーンがあって、それはいただけない。その場にいたのが、佐助と仁吉を演じるマギーと山内圭哉だったから、苦笑半分「台詞真っ白にならはりましたね」と堂々と事実を言い放ちつつ芝居を戻していたけれど、そうでなかったら一気に芝居の気分がぶち壊しになるところだ。

 もう一人「持って行って」いたのが若旦那の父親と、日限の親分の二役を演じた久保酎吉だと思う。というか、まず久保さんがこの二役をやっていたかどうか確信が持てない自分が悲しいが、キャストを見る限り他はあり得ないと思うので、とりあえずそういうことで話を進める。
 正直、最初はこの藤兵衛の役と日限の親分の役を一人の役者さんが演じているということに全く気がついていなかった。(最初に殺されてしまった大工さんと、二幕の最初に出てきた読み売りが同じ役者さんだということには気がついたのに・・・。)
 でも、若旦那が殺されてしまったかも知れないというシーンで、早替わりでくるくるとこの2人が交互に現れて、やっと気がついて大笑い。いや、本当に声の出し方からして全く違っていたし、私が極端に鈍いからということではないと思う。
 その早替わりの連続シーンがとにかく大変そうで、大笑いしてしまった。これがまた、山内圭哉がサービスなんだろうけれどほとんどいじめてるようにくるくる回すのだ。

 赤坂ACTシアターの舞台は広いので、「舞台狭しと駆け回り、歌い、踊る」には、例えば家鳴りたちを登場させたりしてもっとお祭り感を出した方が良かったんじゃないかという気がする。
 特に前半は、時々、舞台がとても広く見えてしまうシーンがあって、このお芝居だったらもっと小さな劇場でぎゅっと詰め込んだ感じで行った方が似合っていたんじゃないかと思ってしまった。

 でも、高橋光臣演じる若旦那の弟(これまた原作の設定は兄だからだいぶ違う)が付喪神になり損なった墨壺に取り憑かれた辺りから、舞台の広さが気にならなくなり、調子よく進み始めたような気がする。
 鈴彦姫を演じた星野園美や、若だんなに恋するおしまを演じた池田有希子など、考えてみれば芸達者な役者さんたちがたくさん登場しているのだ。かみ合い始めれば面白くできない筈がない。

 何だかんだ楽しんで、カーテンコールの今ひとつ統一感がなかったのもご愛敬ということで、最後は再び佐助と仁吉の2人が音頭を取って三本締めでカーテンコールが終わった。
 化けるまであと一歩、という感じの舞台だった。

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コメント

 みずえ様、初めまして&コメントありがとうございます。

 なるほど、みずえさんは原作の愛読者なんですね。
 読んだことはありますが、ファンと言えるほどにはハマらなかった私はこれはこれと楽しんでしまいましたが、原作がお好きな方には辛かったかも知れません。

 またどうぞ遊びに来てやってくださいませ。

投稿: 姫林檎 | 2013.04.26 23:18

姫林檎さま、はじめまして。

私は一昨日「しゃばけ」を観ました。
観劇が趣味で、原作ファンでもあったので、期待して観たのですが、正直、ちょっとがっかりでした。
原作とは違うと思った方がいいですね。
それに、公演というよりは「コント」のようでした。
つまらなかったとまでは言いませんが、こんな舞台だと知っていたら観なかったと思います。
お笑いのシーンがいちいち長くて引っ張りすぎ。
原作のキャラがことごとく無視されているのも哀しかったです。
私の隣の、女性一人客は、一幕で帰ってました。
でも、結構皆さん喜んで、手拍子したりはしてましたけどね。
私はそこまでノレなかったです。

よそ様のブログで言いたいこと言ってすみません。
今後も拝見させてくださいね。


投稿: みずえ | 2013.04.26 18:05

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