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2013.05.11

「バブー・オブ・ザ・ベイビー -UNDEAD OR UNALIVE-」 を見る

「バブー・オブ・ザ・ベイビー -UNDEAD OR UNALIVE-」
作・演出 池田鉄洋
出演 田中圭/福士誠治/大口兼悟/田口浩正/池田鉄洋
観劇日 2013年5月10日(金曜日)午後7時開演(初日)
劇場 本多劇場 M列5番
上演時間 2時間20分
料金 7200円

 客席の若い女性率がもの凄く高かったような気がする。そして、値段等々はチェックしそびれてしまったのだけれど、パンフレットやトートバッグ(合わせて買うと割引というのは最近よく目にするような気がする)、タオルマフラーなどが飛ぶように売れていた。

 そして、帰るときにふと見ると、いかにも業界っぽい中年以降の男性率もある客席の一角だけ滅茶苦茶に高かった。初日だったからだろう。

 観劇中、通路際の席の方が階段にはみ出すように足を投げ出していて、それはいいのだけれど、何かの拍子に椅子についているライトを蹴っ飛ばしたらしく、後半、そのライトがずっと点きっぱなしになっていたのは困った。特に舞台が暗くなるシーンでは、本当に気になって、かなり集中を削がれた。

 ネタバレありの感想は以下に。

 ホリプロの公式Webサイト内、「バブー・オブ・ザ・ベイビー -UNDEAD OR UNALIVE-」 のページはこちら。

 新宿歌舞伎町のど真ん中にあるイタリアンレストランで、若者とライターのような男2人が23年前(だったかな?)の事件について語らっている。
 その若者は、新宿歌舞伎町がゾンビに占拠されたその日にこの場所で生まれたらしい。
 そして、時は23年前に遡る。

 何故かゾンビに占拠された新宿歌舞伎町のど真ん中にあるイタリアンレストランでは、田口浩正演じる臨月を迎えた女性と、田中圭と大口兼悟演じるコック、福士誠治演じるウエイターが立てこもっている。正確に言うと、何故か「いつもどおりに店を開けよう」と言い張るウエイターに対して、コックの片割れが「今ドアを開けたらゾンビに殺されてしまう!」とフライパンを片手に徹底抗戦の構えを見せている。
 男5人の芝居だけれど、ふつーに女性が登場するらしい。まぁ、「おじさん?」「単なるメタボ?」とかっていじられてはいたけれど、でも女性らしい。
 ゾンビはどうやら「好きな人」しか襲わないということが彼女の証言から判明し、そしてこのレストランに通風口を通じて同じビル3階にある古地図出版社から「脱出方法を知っている」という手紙が届けられる。

 場面は変わって、その3階の古地図出版社である。
 紅茶を淹れて飲んでいたり、なかなかこちらは優雅な風情だ。福士誠治演じるいかにも文系繊弱そうな青年と、ただダンディなだけな編集長、昔は諜報部員だったらしい局長と、何故そこにいるのかよく判らない女性と4人いる。
 池田鉄洋の女装というか女性役が意外とキレイなのに驚く。キレイというか、普通にその辺にいそうだと思ってしまったのは私の目がおかしいのか。でも、やっぱりその辺りにいそうなのだ。
 入れ歯を失った局長を救うため、その局長の指示で通風口から1階のイタリアンレストランに「脱出方法を知っているので来てください」という手紙を送る。しかし、その手紙を落とした直後、文系青年以外の3人が次々と「好きな相手」を襲って全員ゾンビとなってしまう。
 ちなみに、この辺りから誰がどの役を演じているのか判別がつかなくなってきたのは私だけなんだろうか。

 この辺りまでは、さてこのお芝居は一体どこへ行ってしまうんだろうと思っていた。
 もう既に、話の始まりがインタビューだったことを忘れている。もうちょっとテンポ良く詰めて行けばもっといいと思うのだけれど、これだけフロアが変わるたびに演じる役も衣装も髪型も変えるとなると、そうそう詰めて行く訳にはいかないのかもしれない。
 もっとも、場面転換等々では、映像が効果的に使われ、通風口を上り下りしている様子を映し出し、声をそこに当てていた。舞台セットと役者さんと双方の転換の時間を作り出す作戦だろう。
 ちょっとケラさんっぽいと思ったくらいで、この映像が効いていたと思う。

 1階と3階だけで展開するのかと思ったら、この後、何故か舞台は4階に移る。
 そこはいわゆる「組事務所」である。
 組事務所なんだけれど、登場人物は全員男だけれど、テーマは「ラブ」である。ここで展開されていたのは痴話喧嘩で、しかも、ゾンビになるとその秘めた愛情(?)が言葉なしのテレパシーで伝え合うことができるらしい。
 そして、「ゾンビは好きな相手しか襲わない」がために、次々と襲い合って、その恋愛の和から一人外れていたお兄さんだけが助かることになる。そして、この1人は他のゾンビ4人をピストルで撃ち殺し、あっさり「頭を撃てばいいんだ」と宣う。
 そんなところへ、3階と間違えて田中圭演じる1階のシェフがやってくるのだから、間がいいんだか悪いんだかという話である。

 さて、イタリアンレストランに出版社、組事務所ときて、残る2階に何があるのかと思いきや、意外といえば意外、ありがちといえばありがちな、答えはメイド喫茶であった。
 繰り返すけれど、この舞台は男5人の役者によって演じられている。
 メイド喫茶のメイドたちは、もちろん女性である。
 さらに繰り返すけれど、ここでも何故か池田鉄洋演じるメイドがやけにキレイに見えるのである。
 しかしまぁ、ここのメイドたちがなかなか強かで、ネットに現在の新宿歌舞伎町の様子を中継したり、逆に情報を得たり、昨日から潜んでいた常連客を袋だたきにしたりする。
 何よりお手柄だったのは、「誰にも襲われずに」「封鎖された筈の新宿歌舞伎町を突破して」出勤してきた女子高生がいたことだ。

 そうして、1階から4階までの精鋭たちが集まった1階では、ゾンビになりそうだという臨月の女性のメッセージをメイドがスマホで撮影し、インタビュアーは文系青年が務め、ヤクザのお兄さんが「ゾンビになったらすぐに殺してやる」と引き受け、イタリアンのシェフが何故か率先して出産準備に勤しむ。
 臨月の女性は、出産後、ゾンビになった自分が最愛の子どもをゾンビにしてしまうことを一番心配していたのだ。

 ストーリーを追っていると何だかシリアスな気もするのだけれど、でも、ドタバタ・コメディでもある。
 結局、出産した女性は、自分はゾンビになってしまったものの、赤ちゃんをゾンビにすることはない。そこで、そういえば誰が気がついたのか忘れたけれど、ゾンビは好きな人を襲っているのではなく、好きな人に近づいたときに拒否された悲しさ故に襲っているのだということに気がつく。
 そういえば、ここまで来るどこかで、映像で「このゾンビ騒動の始まり」が文字で流されていたけれど、これも恋愛話だったような気がする。この文字が割と読みにくかったので、もうちょっと判りやすく伝えてくれればいいのになと思う。

 話は戻って、結局のところ、出産した女性は、2階の「出勤してこれちゃった」女子高生に化けて(どちらの役も田口浩正が演じているのだから似ているに決まっている)歌舞伎町を脱出することとなり、ついでに「無駄にイケメン」な奴らが警察に駆け込むという段取りになる。
 そういえば、だったら3階の彼が手紙に書いた「脱出できる方法」が何なのか、通風口からは屋上に出られないなんていうやりとりがそういえばどこかであったから、通風口を伝って屋上に出て救助のヘリを待つという作戦だったのかも知れないが、この辺もやっぱりはっきり示してくれると有り難い。
 何しろ、私は判りやすいものが好きなのだ。頭悪いなと自分でも思うけれど、仕方がない。

 そして、場面は1年後、再開されたレストランには「ゾンビにも人権を」みたいなポスターが貼られている。
 何やら、彼らの報告のおかげで、何かの「方向」が変わったらしい。
 ここでカーテンコールがあり、最後に、店のガラス戸に写された映像で、最初のインタビューの場面に戻った、ような気がするのだけれど自信がない。
 だめだ、どうやって終わったんだったろうか。

 ラストシーンを覚えていないでこんなことを書くのも何だけれど、よく笑った。その日に生まれた赤ちゃんが無事に大きくなっているのだから、行き着く先はよく判っているのだけれど、でもハラハラどきどき楽しかった。
 「無駄にイケメン」な面々の、イケメンでない役の演技も楽しかったし、途中からは誰がどの役を演じているのか気にならなくなったくらいだった。
 やっぱり芝居はエンタメだ! と思う。

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