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2013.05.04

「レミング~世界の涯まで連れてって~」を見る

寺山修司没後30年/パルコ劇場開場40周年記念公演「レミング~世界の涯まで連れてって~」
作 寺山修司
上演台本 松本雄吉(「維新派」主宰)/天野天街(「少年王者舘」主宰)
演出 松本雄吉
出演 八嶋智人/片桐仁/常盤貴子/松重豊/他
観劇日 2013年5月3日(金曜日)午後2時開演
劇場 パルコ劇場 C列4番
料金 8400円
上演時間 2時間

 ロビーでは、パンフレット(2000円)やTシャツなどが販売されていた。

 気のせいかも知れないけれど、客席には比較的男性の姿が多かったと思う。

 ネタバレありの感想は以下に。

 パルコ劇場の公式Webサイト内、「レミング~世界の涯まで連れてって~」のページはこちら。

 「ネタバレありの」とは言うものの、徹頭徹尾よく判らなかったというのが正直な感想である。
 私が見に来て(しかも、端とはいえこんな前方の席で)見てしまってごめんなさいと懺悔する気持ちになったくらいだ。
 寺山修司の戯曲の芝居は多分ほとんど見たことがない。多分、青ひげ公の城と身毒丸だけだ。
 また、「維新派」や「少年王者館」の芝居も見たことがない。
 これだけないない尽くしだと、2時間が「判らない・・・」で終わってしまっても仕方ない、ということにしたい。

 始まりは、黒いコートに黒っぽい帽子を被った男女20人くらいだろうか、舞台一杯に並んで、ダンスをしているシーンだ。ダンスといっても派手に動くと言うよりは、足の動きとその音を聴かせ、ストップモーションを多用する、どちらかというと不気味な雰囲気を醸し出すことに主眼が置かれているように見える。踊っている人々もみな、無表情だ。
 このシーンを見て、第三舞台のハッシャ・バイを思い出した。この後も、たびたび「第三舞台っぽい」と思うことがあったのだけれど、それは第三舞台が天井桟敷の影響を受けているのか、維新派や少年王者館が第三舞台の影響を受けているのか、単なる私の勘違いなのか、多分3つめが正解だろう。

 そのうち、ストーリーか? といシーンが混ざり始める。
 八嶋智人と片桐仁演じる中華料理屋のコックさん風の2人の掛け合いに始まり、そうこうしているうちに彼らの下宿の壁が消失し、隣の下宿ではモノ狂いのようになった妻が夫を看病している。弟が大家さんに「下宿の壁を直してくれ」と直談判に行くけれど、何故か4人いて碁を打っている大家さんが「そんな下宿などない」と断言する。この下宿の縁の下では、松重豊演じる兄弟の母親が今日も畑を作っている。
 最初のうちは、お題目のように「で、どんな話なの?」と思っていたのだけれど、恐らくは、「話」ではないのだ。

 壁が壊れてしまった彼らの下宿には様々なものや人やシチュエーションが流れ込んでくる。
 それは、誰が病人で誰が医者だか判らない精神病院だったり、常盤貴子演じる映画女優をヒロインに据えた映画の撮影隊だったり、ライフルを抱えて走り回る女性だったり、どこかに閉じ込められた囚人たちだったりする。
 勝手なことを言えば、これはすべて、中国料理屋のコック見習いの兄弟やその床の下で暮らす母親まで含めて「精神病院で行っている療法の一端でした」とまとめてくれればスッキリするのだけれど、当然のことながら、そんなスッキリさは味わわせてもらえない。

 舞台はあくまでも黒く暗く、セットも人々も動きもあくまで抽象的で目に見えて手に掴めるような具体性は全くなく、ひたすら意味の判らない夢のようなシーンが次々と現れては消えて行っているようなイメージだ。
 とりあえず、チャイナドレスを着た常盤貴子は綺麗だ。何故か「凛とした」という雰囲気にならないのが謎だけれど、この芝居では「凛とした」というよりは「退廃的な」美人の方が似合うというものだろう。最初に白の模型のようなものを持ってきた少年が常盤貴子だったとは、私は最後まで気がつかなかった。そちらの方が「凛とした」雰囲気だったと思う。

 後半は、もう「落としてくれ」「お願いだから決着をつけてくれ」とほとんど祈るように見ていたのだけれど、そんな「親切な」芝居ではない。
 最後の30分くらい、私はもう、ひたすらラストシーンが繰り返されているようにすら感じた。「こういうことだったんだ!」と一瞬思うと、こちらから別のシーンや意味合いが出てきた引っ繰り返す、ということの繰り返しだ。

 ラストシーンはどうだったろう。覚えてすらいない自分が悲しい。
 ラストシーンは覚えていないのだけれど、カーテンコールで松重豊がワンピースを着て、足を見せてかがみ、ニカっという音が聞こえそうな笑顔を見せていたことがやけに印象に残っている。

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