「朗読劇・お文の影・野槌の墓」を聞く
Team申番外公演III~今、僕らに出来ること~ 「朗読劇・お文の影・野槌の墓」
原作 宮部みゆき
構成・演出 長部聡介
出演 佐々木蔵之介/市川猿之助/佐藤隆太
観劇日 2013年5月8日(水曜日)午後7時開演
劇場 渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール 1階17列22番
上演時間 2時間
料金 4800円
開演15分前から、募集した怪談を出演者3人がそれぞれ選び紹介するというコーナーがあった。
「怪談?」「オチは?」と思わなくもなかったけれど、宮部みゆきの原作本や東北の物産などがプレゼントされていて、ちょっと羨ましかった。
佐々木蔵之介は開演前に「上演時間は1時間45分くらいです」と言っていたけれど、実際は2時間くらいだった。
私がTeam申の朗読公演を聞きに行くのは2回目で、でも今回は朗読された2編とも未読のお話だった。宮部みゆきの「ばんば憑き」から「お文の影」と「野槌の墓」の2編である。
怪談のコーナーでは3人ともラフな格好をしていたけれど、朗読のときには白いシャツに黒いパンツに着替えていた。ベンチのような横長の椅子が置かれ、そこに座布団が置かれ、座布団の間と両端に行灯のような灯りが置かれている。
背後のスクリーンには、様々な画像が映し出される。セットはないけれど、絵本の一場面のように背後に絵が映し出され、効果音が使われる。
「お文の影」には、「おまえさん」などに出てくる政五郎、お紺、三太郎らが出演している。全く馴染みのないお話だと思っていたのでちょっと嬉しい。
3人は、地の文は交代で読み、登場人物の台詞はそれぞれ担当が決まっている。例えば、この3人の場合は、政五郎を佐藤隆太、お紺を市川猿之助、三太郎を佐々木蔵之介が演じている。絶妙の配役と言えると思う。
時々、手振りが出たり、出なかったり、影絵のキツネを作ってみたり、する。
3人の朗読はそれぞれ個性があって、台詞にかぶぜるように地の文を読み始めることが多かったことはちょっと気になったけれど、でも、楽しい朗読だ。原作を全く読んだことのない私でも戸惑うことはなかった。
スクリーンに映し出される絵がかなり助けになっていると思うけれど、それ以上に朗読という世界は豊かなんだなと思う。
「野槌の墓」では、何故か3人とも靴を脱ぎ、2人は胡坐をかいてしまった。一人だけ足を下ろしていた佐藤隆太も靴は脱いでいる。彼が胡坐をかいていなかったのは、7歳の女の子を演じるためだったらしい。
やけに礼儀正しい女の子だと思っていたら、彼女は武士の娘なのだった。もっとも、父親はべんり屋として暮らしているようだ。
こちらの物語では、市川猿之助は主に化け猫が化けた女「おたま」を演じている。これが、声だけでなく風情まで化け猫っぽくなっているところが流石である。
いや、化け猫というのはそもそも「雌猫」だけなんだろうか。
よく判らないけれど、この掌編を選んだ理由の大きなひとつが、演者の中に市川猿之助がいるということだったに違いない。
「野槌」には、その木槌を使って殺されてしまった子供の魂が残っている。おたまは野槌を切ってくれと言うけれど、それは、べんり屋にとっては子供を斬れと言われているのと同じだ。
その逡巡の様子を演じる佐々木蔵之介がやはり上手い。
「お文の影」は、最後、もう亡くなっていたお文の影を笹舟に乗せてあの世のお文の元に送ってやる。
「野槌の墓」は、べんり屋が斬った野槌(になりかけていた木槌)に宿っていた男の子の魂を、数年前に亡くなった便利屋の妻に連れて行ってもらう。妻の姿を見せてくれる、というのが、おたまが言っていた「この件の報酬」だったのだ。
どちらの話も、行き惑っていた子供(の影)があの世に行く、成仏するというお話だ。
これはきっと、東日本大震災で亡くなった方々への鎮魂の意味も込められているのだろうと思ったのだった。
そして、そうやって思いが強かった分、朗読時間が見込みよりも長かったんだろうとも思った。
近いうちに、原作もぜひ読んでみたいと思っている。
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